ホットケーキにトッピング
今日の買い物先であるスーパーで、あるものを見ていいことを思いついた。
いつも行く商店街には、置いていないものだったということもあるだろう。即決で買ってしまった。
「葵様、喜ぶかな……?」
正直、予想がつかない。
なぜなら『それ』は、確かに葵様の好きな『洋菓子』ではあるが、いつも買うようなものとは違うからだ。
「ただいま帰りました」
「双葉、おかえり!」
週に一度の洋菓子の日。葵様の期待度は高い。大きく振られるしっぽが、ぱふぱふ音をたてる。
ハードルが高すぎたかもしれない。別の日にすればよかった。
いや、それはそれで考えものだ。とにかく、当たって砕けろだ。
「双葉? どうかした?」
「あ、葵様! 一緒にホットケーキ、作ってみませんか……っ?」
ぴたっとしっぽが動きを止めた。くたんと耳がたれる。
やっぱり、嫌だったのかな……。
「洋菓子って、作れるの……?」
意外なことに、おそるおそるそう聞かれた。狐耳の先がぴるぴる震えている。
「えっと、この箱に書いてある作り方でできるみたいです」
それを聞いて、ぴこっと耳が起きた。
もう一押し。
「けっこう、簡単みたいですよ」
さらに、しっぽがふわりと揺れ出す。
単に作れるかどうか、不安だったようだ。そう思えば、私の方の不安も吹き飛び、葵様のしっぽのように気分も振れる。じゃなかった。弾む、だ。
「やる! やってみたい!」
道具は一通りそろっている。材料も買ってきていて完璧だ。
「じゃあ、買ってきたものしまってから始めましょうか!」
*
台所のテーブルの上に並ぶ、できたてのホットケーキ。目玉焼きサイズなので普通に作るよりは、数が多くなった。
そのうちの一・二枚は少々黒っぽくなってしまったが、他の四枚はきれいな焼き色がついている。
「おいしそう……」
葵様が楽しかったのなら、私はそれで十分だ。
「トッピング、色々ありますよ。どれにしますか?」
定番のバターとメープル。甘酸っぱいジャムにフルーツ添え。とろけるチョコレートソースに、ホイップクリーム。
どれも少量のものを買ったり、うちに残っていたものだったりだ。
「それぞれ試したいから、半分こしよう?」
問いかけるときに、首を傾げるのは反則だ。ぽてっとなる耳が可愛すぎる。
「もちろんいいですよ……」
流れるような動きで、きゅっと軽く耳を握る。
ああ、いい手触り。ふきゅふきゅと少しの間触った。
「……! おいしい!」
「成功、ですね」
ふぁふん、ふぁふんと大きくしっぽが振られる。
可愛い。最高にいやされる。
さて、ホットケーキも楽しむことにしよう。