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005 : 助言

楽しく読んでもらえたら光栄です

 俺らの儀式。それはまず村長の家で盃を交わし、村の掟を再度叩き込まれる。そして家から出て、村中を歩き回るというものだ。ゴールは俺の家なんだが、この村中を回るとなると1時間くらい歩くことになる。はぁー、なんて面倒くさいんだ。そんな俺と相反してアイナはとても楽しそうだ。


 「なぁアイナ、なんでお前楽しそうなんだ。こんなめんどくせぇことのどこが」

 「うーん、全部かな。だってさ、いろいろな人に私達のことを見てもらえるんだよ」

 「それが嫌なんだよ。そんな恥ずかしいことしてられるかよ」

 「だったら儀式に出なかったらいいじゃん。まぁ、ずっと子供のままだけどね」


 そんなことを言ってケラケラと笑いだす。やってやろうじゃないか、絶対に大人になってやる。


 「おいアイナ。そろそろ村長の家に行くぞ」

 「あ、うん」


     □□□□□     


 「よく来たな。ハクヤ、アイナ。おまえらが大人になるのをどれだけ待ったことか。ワシもこんなに老けてしまった」

 「そんなことないですよ。アオイ村長はまだまだお若いですよ」

 「アオ爺こんなお世辞に喜ぶなよ」


 アオイ村長(アオ爺)は今年で確か100歳になる、元気なジジイだ。100歳だというのにメチャクチャ元気だ。今でも走ったりもできる。なぜそんなに元気かというと、アオ爺は若い頃は王都でも有名な騎士で、数々の武勇伝を作るほど強かった。その強さが今にも残ってこの有様らしい。


 「ハクヤ!なんてこと言ってるの!」

 「だって本当だろ」

 「そんなことないわよ、だってとてもお元気じゃない」

 「まぁまぁ、そこまでにしておきなさい」


 アオ爺が俺らの喧嘩を止めてくれる。いや、実際には強制的に終了させた。俺らはアオ爺を怒らせるとメチャクチャ怖いことを知っている。俺らが小さい頃、入っちゃ駄目って言われてた森に入ったことがあった。そして迷って森から出られなくてメッチャ泣いていた。そこに助けに来てくれたのがアオ爺だ。アオ爺に抱えられて森を出た。その後、メッチャ痛い拳骨を喰らって、2時間ぐらい鬼の様な説教を……、あぁー!思い出しただけで寒気が……


 「そんな喧嘩をしてないで、早く儀式を始めようか」

 「だな、こんなの早く終わらせちまおうぜ」


 アオ爺が手を叩くと、奥から女性が盃を3つと酒を持ってくる。それを俺、アイナ、アオ爺の前に置いて酒を注ぎまた奥に戻っていった。


 「ハクヤ、アイナ、盃を」


 俺らは言われるまま盃を持つ。


 「このふたりにクロルシュ様の加護を」


 俺らは盃の中の酒を飲む。普通の酒と違ってとても不味い。口の中に苦さが残る。くわぁー、気持ちわりー。アオ爺が盃を置いたのでそれを真似て俺らも盃を置く。


 「じゃあ、村の掟を言っていると思うが再度いわしてもらうぞ」

 「あぁ、だけど簡潔に頼む」


 俺はあからさまに面倒くさいと伝える。アオ爺はひとつ咳払いをする。


 「じゃあ、大切な物を言わせてもらう。ひとつは結婚は18歳からだということ。お前らに関しては絶対にないとおは思うのじゃが、絶対に愛した者を悲しませてはならんぞ。そして絶対に仕事をしなければならん。そして最後に、守るべきものは自分で決めろ」

 「えっ?村にそんな掟ありましたっけ?』


 アイナの言うとおり、村の掟には最後のことはない。いや、俺らが知らなかっただけで新しく追加されたのかもしれない。


 「ない、ただふたりには知ってもらいたかったのじゃ。これはワシからの助言じゃよ」


 助言……、守るべきものは自分で決めろか、なんかいいな。俺は心に刻んでおく。


 「ハクヤ達、そろそろ行け。これから沢山の人に祝福されるのじゃ、楽しんでこい」

 「あんま、気乗りはしないがそろそろ行くか」

 「もうハクヤ、そんなこと言わないの。ではいってきます」


 俺らは村長の家を後にする。アオ爺は俺らを微笑みを絶やさずに見送ってくれた。門を出るとそこには家から出て沢山の人が俺らの登場を待っていた。村のしきたりには家の前で成人した者を見送るというものがあるので、俺らの近くにはよってこれない。だけど


 「ハクヤー!今度飲みこいよー」

 「アイナちゃん。綺麗だわ」


など、遠くからでも言ってくるので面倒くさい、だけど嫌ではないな。俺は自然と笑みを作る。


 「なんだー、ハクヤだって案外楽しんでるじゃん」

 「ち、違う!これはしょうがなくやってるだけで」

 「素直になればいいのに」


 そう言いながらアイナは笑う。すると、隣に歩いてたアイナが肩が当たるくらい近づいてくる。


 「なんだよ、離れろよ!」

 「別にいいじゃん。あ、もしかして恥ずかしいの」

 「ち、違うし、全然恥ずかしくないから!」


 俺らがくっついて歩いていると


 「ハクヤー!これ、結婚式じゃねーぞ」


と、言われる。俺らはメッチャ恥ずかしくなって、少し距離をとる。だけどなんでだろう。この心の中にある寂しさは……

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