004 : 大人
少し間が空いてすみません
「二日酔いってこんなにキツイのか」
独り言を俺はつぶやいて体を起こす。俺は二日酔いのせいで昼まで寝込んでいた。クソーまだ頭いてー。俺はベッドにうつ伏せてまた寝る。
そういえば、俺って前世の俺、魔王の能力を得たんだよな、どんな魔法があるんだ。俺は記憶を探る。
【ライトニング】 周りを昼間のように明るくする。
→うーん、用途はあると思うけど……
【イグナイテッド】 火種を作り出す。
→火おこしが楽になるな。
【アクア】 コップ一杯分の水を作り出す。
→なんかわかってきたぞ
【ゼファー】 心地よい風が吹く。
→これってもしかして……
以上。
やっぱりだ。この能力って『家庭用魔法』って感じの非戦闘系魔法だろ。生活には活かせるけど、使ってるところみられたら……めんどくせぇー。だけどよく前世の俺はこんな能力で魔王でいられたんだろう?俺は気になり記憶を覗いてみる。……え、コイツ実践経験ZEROだ。俺は納得した。この能力は封印だ。そして前世の俺は駄目人間だと覚えておこう。
「ハクヤ!降りてきなさい。そろそろ儀式を始めるわよ!」
「わかったー!」
母さんがいったとおり、今日は成人の儀がある。これは名前のまんま、15歳を迎えた村の子供が成人になるために行う儀式だ。この村には俺と同い年の奴がアイナしかいないから、今年の成人の儀は俺らふたりしかしないので、普通、近所の人々だけなのに村全体でやることになっている。この村の人口は500人くらいだ。めっちゃ恥ずかしい。
俺は階段を駆け降りていく。リビングにつくと見たことない、いや見たことはあるけど俺が知っているそいつと全く違った人物がいた。
「ハクヤ……どうかなこの服?」
やっぱりだ、コイツはアイナだ。アイナはキッチリ化粧をして、赤い高そうな振袖を着て大人らしい雰囲気を醸し出している。
「似合ってるよ、だけど……」
「だけどって何よ、いいなさい!』
「なんか、いつものアイナと違い過ぎて気持ちわりー」
アイナが追いかけてくる、と思って俺はいつでも走り出せるように準備をしていたが、それは意味がなかった。
「まぁそうかもね。私こんな服着たことないし」
なんか怖い、いつものアイナじゃないぞ。
「お前、アイナじゃないな。本物のアイナを返せ!」
「何寝ぼけたこと言ってんの?てか、そんなことしてて大丈夫?アンタまだ着替えてないじゃない」
「あ、母さんから呼ばれてるの忘れてた」
「私、先に外出てるから。早くきてよ」
俺はうんと頷き、すぐに母さんがいるところに走っていく。確か声が聞こえたのは……ここだ。俺は襖を勢いよく、ドンッ、と開いた。
「アンタ、今日から大人だっていうのに、母さんしんぱいだわ」
俺ってそんなに子供っぽいの?
□□□□□
俺は白い袴に着替えて外にでる。アイナ絶対に怒ってるな。俺は怒られる心構えをして玄関の扉を開ける。
「アイナ待たしてわりー」
「ハクヤ、どれだけ……」
「どうした?なんか俺可笑しいか?」
アイナは顔を赤くする。そして俺から顔を背ける。え、そんなに遅れたの怒ってるの。
「可笑しくなんかない……」
「ホントかありがとな!」
するとますます顔を赤く染めていく。
「べ、別に可笑しくないってだけで、似合ってるわけじゃないから。変な解釈しないでよ」
「まじ、ちょっと悲しいな。俺的に似合ってると思ったんだけどなぁー」
アイナは後ろを向いて小声で何かいっている。何を言ってるのか気になって耳をすませるが全然聞こえない。どうせ悪口だからきかなくていいや。そこに母さんが来た。
「そろそろ行くわよ、準備はいい?ふたりは今日から大人。大人が示した道をすすむのは今日でおしまい。これからは自分で道を示していきなさい」
俺らは頷く。自分で示していく、それがどういうものなのか不安でたまらない。俺がそんなことを考えているとアイナが勢いよく背中を叩いてくる。痛いがそれを声に出して言わない。するとアイナが手を差し出してくる。
「ハクヤ、いこ!」
「あぁ。だけど手は繋がねーぞ!」
「なんでよ。普通こういうのってふたりで手を繋いで行くもんじゃないの」
「そんなのあってたまるかよ!」
俺は歩き出す。後ろをアイナがついてくる。俺はあるきにくそうなアイナにあわせる。俺は会場に向かいふたりで歩いていく。




