表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
39/42

039 : 不遇

 俺は鬼ごっこの翌日、勝負を挑んだが、軽く返り討ちにあった。

 今は修行を終え、寝っ転がり新しく手にした能力についてたしかめているのだが、この能力がまたややこしい。


 この新能力についてわかっていることをまとめると、


 1、目を瞑って集中すると、見えない映像が見える

 2、時間の制限はない

 3、あの後分かったんだが、白黒で見えることと、暗視力がある


 このことから、正直使えねぇー能力だなと感じた。

 場合によってはとても用途がある。だが、ハチマキが外れた今、暗視とかにしか使えん。

 なんて、不遇能力なんだ。俺は嘆く。


 この力のことは、今度じっくり考えるとしよう。この力にはまだ、秘められた力があるはずだ。何故なら神器が進化したんだ。絶対に何かあるはずだ。


 俺は一つ目の試練のデカイ木の前に移動する。

 最近あまり試していなかったから、どうなのか確かめてみる。数日じゃあ力は育たないだろう。だが、やるだけやってみる。


 俺は拳を強く握りしめ、イメージをして、集中する。


 「はっ!!」


 今回の一撃はかなり強烈だった。この太い木が鈍い音をたてて、横に揺れる。だが、ヒビなどは入りはしない。


 「駄目だったかー」


 憂鬱な気持ちになる。だが、それと同時に好奇心も一緒に湧いてくる。この一撃でも駄目だった。この木は俺がどれほど強くなれば倒せるのか。そこに俺は興味が湧く。


 今日の修行も終わったので、俺はブラウンがいる。寝床に戻る。もう日も落ちてきたので、あいつは腹をすかせているだろう。俺は走って戻る。


 走って1分。そこまで時間はかからなかった。前まではハチマキのせいで走れなかったが、今は違う。やっぱり見えるっていいな。


 「おっ、ハクヤ帰ってきたか」

 「あぁ、お腹空いてんだろ。今創る」

 「ありがとよ」


 俺は早速、今日の献立を考える。今日はガッツリ、という気分じゃないな。和食がいい。そうだ!肉じゃがにしよう。俺はアイナが作ってくれていた肉じゃがを思い出す。

 甘さ、柔らかさ、濃さ、旨味、色合い。

 全てをその通りに創って見る。付け合せに、漬物、味噌汁など、適当に創る。それをお盆に乗せてブラウンに渡す。そして、自分のぶんも創る。


 「おっ!和食じゃねーか。俺好きなんだよな」

 「お前なんでも好きじゃねーかよ」

 「まぁな。あっ、そうだ。1つ言っとかないと行けなかった」


 なんだ?新たな試練とか?それとも飯についてか?俺は思考を繰り広げて、彼の口から出る言葉を予想する。


 「明日、出るぞ。王都に行く」


 これは俺の予想外だ。俺は顔をキョトンとさせ、ブラウンを見る。

 急にこの森を出るとか言われて、そして王都という、とてもデカイ街に行くと言われたらそりゃビビるさ。


 「急だな。何しに行くんだ?美味しいご飯を食わせに行くとかか?」

 「それもあるが、一番はお前の勉強のためだ。図書館にでも行こうと思ってる」


 確か前にもそんなこと言ってたな。だが、この森から王都までどのくらいあるんだ?確か俺がいた村からだと、馬を使っても2週間はかかるって言ってたぞ。


 「なぁ、王都まで何日かかるんだ?」

 「お前の力を使えば楽勝だろ?多分3日もあればつくだろ。いや、頑張れば1日でつくか」

 「やだよ。そんなに神器の力使ったら、後が大変だ」


 俺は初めて神器を使った時に体験していた。あの疲労感は半端ない。3日だったらそこまで負担はかからないとは思うが、1日だとその3倍、いや以上かかるかもしれない。それは絶対嫌だ。


 「それに、ブラウンが俺についてこれないだろ」

 「それだったら、俺をお前がおぶれば良いだけだろ?」

 「多分、俺にしかあの能力は発動しないから。ブラウンは速度に対応できずに、かなりの負担がかかるかも。もしかしたら死ぬかもしれねぇーぞ」

 「それはやだな」


 ブラウンは身震いをさせて、断る。想像してしまったんだろう。


 「ってなると、10日はかかると思うが、自力で行くしかないよな。でも旅するのは楽そうだな」


 そう言い、俺の指輪に目を向ける。


 「俺の神器に頼るなよ。最低限できることは自分でやれ!」

 「嫌だ!!」


 そのきっぱりと断りながらのドヤ顔をやめてほしい。まじで、生理的に受け付けられん。


 「俺、やっぱりお前と旅したくねぇーわ。一人で行っていいか?」

 「駄目だ。俺だって王都には用事があるし、美味しいもんも食わなきゃなんねーし。なにより、お前金持ってないだろ?」

 「持ってはないが、創ればいい」


 俺は左手にはめてある指輪を、これぞとばかしにブラウンに見せつける。すると、ブラウンは一瞬で態度を変える。


 「ごめんなさい。わがまま言いませんから、俺と一緒に王都に行ってください」

 「それともうひとつ。服を汚すな。それが守れたら一緒に行ってやる」

 「わかった。服は大切にする。だからおいて行かないでくれ」

 「わかったよ」


 俺は呆れながらため息をつく。そんなに楽に旅がしたいのか。まぁ、楽なのはいいことだが、楽しさが減ると思うんだがな。それは人によって違うか。


 俺はすっかり冷めてしまったご飯を食べ始める。冷めてしまっても美味しい肉じゃがに寂しさを感じながら食べていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ