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転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
38/42

038 : 結果

 俺は負けた、らしい。

 いや、俺は絶対勝っていた。8分くらいで俺はタッチしていた。どうしてだ?


 俺は布団の中に潜りながらそんなことを考えていた?

 ブラウンがこの試練が終えた途端、眠たいと言うので、寝ることになったのだが、俺は気になり過ぎて寝付けない。


 今回の俺の作戦を振り返ってみる。


 まず、水という意識を、ブラウンの行動を鈍らせるという方にずらさせた。

 何故、俺がこんなことをしたのかというと、この水には2つの使い道があったのだ。

 1つ、逃げ道を絞らせることだ。俺が穴を開けたところから逃げるという可能性は1パーセントも無かったが、あわよくばと思っていた。

 2つ、こっちがとても大切だ。それはあの水の成分だ。あの水には睡眠薬が仕込んであった。だが、それでブラウンが眠るとは思ってなかった。ただ、予想してたんだ。あいつが、この水に違和感を感じ、ふらつくモーションをみせるだろうと。

 俺の子の作戦は成功した。彼は俺の新たな能力を知らなかった故に、俺のトドメの一撃をかわしたことで、安心感を抱いていた。だが、俺にはわかっていたし、見えていた。だから、触ることが出来た。なのに、なのに、なのに俺には、勝利というふた文字は、俺の前にはあらわれなかった。


 「なんでなんだよ!!」


 俺の声は暗い森林に響き渡る。深い深い森に吸い込まれて直ぐに消えていく。

 その声はデカイいびきをして、死んだように眠っているブラウンには届かなかった。多分、かなりの殺気を出さないと絶対起きないだろう。


 「クソ!寝るしかないのかよ!!」


 俺は布を頭までかぶり、眠りにつく。

 明日になれば、俺の疑問が晴れる。だが、同時に負けた理由もわかってしまう。その興奮と悲しみが混ざって、なんとも言えない気持ちになり、なかなか寝付けないまま、太陽を迎えることとなる。


 「眠れなかった」


 俺は、ブラウンを起こさないように、などとは考えずに、いつものように顔を洗う。そして、昨日ブラウンの服が濡れてしまったので、干していたのでそれを寝ているブラウンに投げつける。


 「おい!起きろよ!」


 俺はブラウンを蹴飛ばす。起きないので、何度も何度も蹴飛ばす。すると、流石に寝心地が悪くなかったのか、起き上がる。

 すると、素っ裸だった。そりゃそうだ、だって、服が濡れていたので、ブラウンは脱ぎ捨ててすぐに寝たのだ。


 「おい、俺は男の体なんて見たくないんだよ!」

 「そんなこというなよ。俺の体のライン、メッチャ美しいだろ?」


 俺はある一部を視界に入れず、彼の体を見てみる。確かに理想の体型だ。


 「って、そんなことより、早く着ろ!聞きたいことが山ほどあるんだ」

 「そんなもの、山にでも聞いとけ」

 「山に聞いても答えるはずないだろ?馬鹿かよ?」

 「答えてくれるぞ?おーいやまー!おはよーー!!」


 何やってんだ?そう思っていたとき、山に強い力風が吹く。


 おはよう


 と言ったかのように、風が音を立てる。


 「ホントだったのかよ」

 「だからゆったんじゃん。俺が嘘つくわけなくは無いが、今回のはマジだったんだよ」

 「でも、山に聞いたところで、お前の質問を答えられるはず無いだろ!」


 キレていても仕方がない。俺は深呼吸をし、呼吸を落ち着かせる。


 「で、俺の聞きたいことなんだが」

 「山ほどは言うな、質問は一個までだ」

 「わかった。じゃあ、ひとつだけ。なんで俺はお前に触れたはずなのに負けたんだ?まだ、8分くらいしか立ってなかったぞ?制限時間は確か10分じゃ?」

 「ああ。だから、10分経ったんだよ」


 どういうことだ?この言葉を紐解く。制限時間は10分で、8分しか経っていなかった。そう、制限時間以内だ。だが、俺は負けたらしい。ってことは……


 「俺の意識がなかった時間、この世界は時間を進めていたってことか?その時間をバレないように、上手くやってみせたってことか」

 「そういう事だ。ハクヤが、急に立ち止まるからびっくりしたぞ。だが、その時お前の神器が光を放っていたからこれは、っと思ったんだ」

 「俺の作戦は始めから意味が無かったってことか……」


 悲しさというより、気だるさを覚えた。

 やった、と思った俺の気持ちを返して欲しい。


 「いや、お前の作戦は凄かった。俺からもそのことで一つ聞きたいことがある。なんで、お前は俺の姿が見えたんだ?」

 「あれは新しい能力だ。目を瞑って集中すると勝手に見えない映像が映ってくるんだ」

 「そういうことか。じゃあもう、あんな布いらないな。つけなくていいぞ」


 俺はポケットの中のハチマキを取り出す。こいつとの別れは少し悲しい。

 そうだ!

 俺は白い布を右腕に巻きつける。


 「これでよし」

 「愛着が湧いたか。まぁ、大切にすることはいいことだ」

 「そんな俺を見習ってお前も物を大切にしてほしい」

 「それは無理だ!」


 きっぱりと、ドヤ顔をして言ってくるところがウザイ。キモイ。


 「お前の顔を潰して、創り変えたい衝動に駆られてるんだがしてもいいか?」

 「その言葉は俺への宣戦布告と、捉えていいのかな?」

 「いいぜ!今日こそ勝ってやらー!」

 「その前に」


 ブラウンの腹の虫が盛大な音を鳴らす。


 「わかった。ご飯だな。よーし、早く創って、お前を殺る」

 「そんなこと言うなって、飯がまずくなるだろ?」

 「お前にもそういう常識的な味覚があったんだな」


 俺は笑みを浮かべ、新たな一日が始まる。

そろそろ第二章も終わりです。結構急展開なんで、付いてきてくださいね。

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