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転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
36/42

036 : 自身

 ブラウンの指からコインが弾かれる。

 それは今日三回目の落下であり、最後の地面である。そのコインらはじめや、二回目と同様に、湿った音をさせて落ちる。


 「《ボックス》」


 俺は開始直後に神器を使用する。

 鬼ごっこの範囲の面積に、3メートルの高さの箱を創り、俺とブラウンを閉じ込める。


 「これでどうだ。気に乗ってることもできないだろ」

 「まぁ、そうだな。だが、このくらい壊せるけどな」


 そう、この壁などブラウンの神器にかかれば、豆腐のように柔かく、もろい。だが、俺は壊されないと確信していた。


 「いや、あんたは壊さないさ。だってそっちの方が、面白そうだろ」

 「そうだな。乗ってやろうじゃねーか。このくらいのハンデで丁度いい」


 乗ってくれると思ったぜ。

 だが、それでも俺の目隠し程でもない。もっと奴を追い詰めないと。

 だが、そんなに考えている暇もない。あれをやるしかないな。

 俺は1回目で習得した。考えながら行動を行う。


 右、左、右、右と、風や匂いは感じるんだが、ことごとくかわされていく。

 やっぱり当たらないか。


 今のこの状態を10分間やったところで、勝つことは出来ない。なにか、ブラウンをあっと言わせる術はないのか。

 これまでやっていたのは、ブラウンを自分に合わせるって言うことだ。そうすることによって、自分の不利を減らしていっていた。多分それが一番の、勝利への道のちか道だろう。だが、それじゃ勝てない。


 逆転の発想だ。

 今の自分は目が見えない。なら、見えない自分を見えるように近づけばいい。

 正直、自分でも考えている意味がわからない。だが、それは俺の頭の中で、キラリと輝き、今にも掴めそうなところに来ている。


 「なにか掴んだようだな」

 「まぁな。ってか、なんでわかったんだよ!」

 「お前が気持ち悪い笑みを浮かべてるからだろ」


 えっ!いつの間に!?

 俺も遂に壊れだしたな。この状況が楽しくて仕方ない。笑みが顔からはなれない。

 前までの俺じゃあありえないことだ。自分の力の限界を勝手に感じていたんだ。だが、今の俺は違う。限界を超えることが楽しい、と知ってしまった。それもこれも神器のおかけだ。

 だから神器よ。力を貸してくれ。


 すると、俺の目の前は真っ暗になってしまう。


     □□□□□     


 この感じ久しぶりだな。

 俺は目を開けて、あたりを確かめてみる。だが、目を開けたところで、見えるのは閉じていたときと、変わらない世界だった。

 俺は目隠しでも付いているのかと、目のあたりを触ってはみるが、布製のハチマキは見当たらない。


 「もしかしてここって、暗闇の世界なのか?」


 俺は以前にも、ここに来ていた。それは神器との契約を結んだときだ。

 その時は、神器を所持するに当たっての試練だった。ってことは今回もそういうことなのか?


 俺は暗闇の世界のどこかで、あぐらをかいて座る。

 動いたところで、この世界には何もない。ここは神の魂なのだ。その魂は、必要なものしか、ここには呼ばない。


 「久しぶりだなハクヤ」


 この声に聞き覚えがある。

 幼いが、何かちょっと威圧感がある声。だが、そこには可愛さが溢れている声。


 「ガネルド、お前が俺をここに呼んだのか?」

 「んー。私っていうより、私の魂が勝手に君を呼んだのよ」


 神器と、神は意思疎通が出来ないのか?少し疑問が浮かぶが、今はそんなこと関係ない。


 「だが、理由はわかってんだろ。俺がここに呼ばれた理由を」

 「まぁね。あなたがここにいる理由は、神器がハクヤに適応しようとしているの」

 「神器が俺に?」


 少し意外だった。俺の方に問題がある物だと思ってたからな。


 「そう。ハクヤは強くなりすぎた。身体的な部分もあるけど、特に精神面でだ。それに神器は応えようとしてるの」

 「てことは、これから俺は試練を受けなきゃいけないのか?」

 「そんなことはないと思う。神器が、君を相応しくないと思ったときくらいだけだと思う。ただ、神器が進化する間、君にここにいてほしいってことだろうと、思う」


 なら、心配ないか。今からまた試練だとか言われたら、ちょっと滅入ってしまう。

 だが、試練じゃないのなら、ここには暇を作りに来たってことになる。なら、やることは一つだな。俺はガネルドを見る。


 「なぁ。なんでお前は、神器にプラスαの力があることを黙ってたんだよ」

 「それは、私自身にもその能力の内容を把握できてなかったからだよ。別に悪気が合ってしたわけじゃない。ただ、一つ言って置かなければならないことがある」

 「なんだよ?」

 「神器ていうのは便利な道具、だが、時として、自分自身を傷つける道具になってしまうこともある。この神器の言葉の力にはそんなことはないが、これから習得する、プラスαの能力にはあるかもしれない。それだけは気をつけておいて欲しい」

 「忠告ありがとよ。だが、俺は死なねぇーよ。俺は魔王を倒さないといけないからな」


 その言葉を聞き、ガネルドは優しい微笑みを浮かべる。


 「そろそろ時間だ。君の成長を天から見ているよ」

 「あぁ、見とけ。俺の英雄譚をな」


 俺はそう言うと目を閉じる。


 「暗闇の世界。久々の再開だがもうお別れだ。俺は強くなる。お前に相応しい人になる。だから、お前も俺に力を貸してくれ!」


 俺の大声が、暗闇の世界に響き渡る。すると、目の前に白い靄がかかっていく。そして、俺はもとの世界に引きずられていく。


 「じゃあなガネルド。また会おう」

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