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転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
35/42

035 : 振動

 今回は逃げる立場だ。前回とは全く違う。

 コインが落ちたらスタート。今の俺には見えてないが、予想からして、後1秒。自分を奮い立たせる。


 コン


 地面に湿った音をさせながら、力なさげに倒れる。


 「《飛行フライ》」


 すぐさま、上に飛び上がる。

 ブラウンとの前の決闘から、空を飛んでも捕まってしまう。だが、ブラウンも流石に人間だ。空は飛べない。木を超えさえすれば、前のように捕まったりしないはずだ。

 俺は飛べる限り、高く高く、もっと高く空へと飛び上がる。


 もう何メートルなのか。よくわからない。だが、肌寒さから、かなりの標高にあることは確かだ。200くらいかな?


 「ここなら大丈夫だろう」


 ここで5分飛び続ければ、この戦いは俺の勝利だ。だが、そんな簡単にいっていいのだろうか?ブラウンは天才だ。この俺の作戦をかいくぐってくるのでは?そんな考えが頭を離れない。

 深く考えていると埒が明かない。来たときは来たときだ。すきをつくらないよう、警戒しておく。俺は五感を研ぎ澄ましておく。匂い、音、風、勘をフル活用する。


 2分後。


 「来ないな」


 深く考えすぎていたようだ。流石のブラウンでも、空を飛ぶなんてマネ出来ないよな。

 俺は、研ぎ澄ました五感をいつもの状態に戻し、警戒を和らげる。


 「暇だなー。寝てようかな?」


 俺は空中で寝転がり、睡眠体制に入る。もう後2分30秒。それだけだ。


 「寝るほどでもないな」


 俺はあぐらをかいて、空を眺める。っていっても、何も見えないが、もう暗くなってるんだろう。


 「おいおい、余裕だなぁ~。これって俺に捕まえてほしいってことだろ?」


 えっ!どういうことだよ!?ここは多分、地上から200メートルくらいだぞ!それを!?

 俺の神器も俺に慣れてきたのか、それとも神器に俺が慣れてきたのか、今は前よりも、距離を出せるようになったはずだ。

 だが、その俺の進化を、なかったことにするように、下からブラウンの気配、風を感じる。


 「お、お前!どうやってここに!?」

 「そんなこと聞いてる暇あんのか?」

 「やべ!」


 俺はすぐさま、背後に飛び退く。だが、それを予想していたのか、俺の方へと風か伝わってくる。


 「《高速移動ゴットスピード》」


 俺は地上に一瞬で飛び降りる。気圧の差で、耳鳴りを起こすが……どうにか聞こえる。

 ブラウンでも急降下は出来な……


 ドン!!!!


 空から重機が降ってきたような衝撃で、俺の立っている。地面を揺らす。木々がガサガサと、どよめいている。


 「うわぁ!」


 俺は振動のせいで、身体を蹌踉めかせる。そのすきにブラウンは勝負を決めてくる。


 「はい、おしまい」


 俺の背中を、優しくぽんっと叩く。

 この手は俺に負けを告げてくる。負け。まけ。負。

 これで後チャンスは一回。最後だ。もう、あとは無い。


 「なあ、2つ聞きたいことがあるんだが」

 「どうやって、あんなところまで飛んでいったか。あの衝撃波は何なのか。だろ?」

 「ああ。言いたくなかったら、別にいいけど」

 「いや、教えてやるよ。ちょっと目隠し外してみろ」


 俺ははちまきを取る。そして、ブラウンに視線をやる。


 「まず、どうやって俺があんな所までいったかだが、俺の神器の能力を使ったんだ」

 「神器の能力ってことは、全斬裂か残撃のどっちかだろ?使えそーなのっていうと、残撃か」

 「正解だ。能力で作った残撃を踏み台にしてコツコツと上がってったんだよ」


 すげぇーな。そんな発想は出来なかった。人とは違う感じだな。頭がいいっていう感じの考え方じゃなくて、これだったら行けるんじゃないのか?っていう、とても原始的な発想なんだよな。前の決闘のときも、俺の能力の弱点に気づいて、コツコツとその弱点のすきをついていく。これも、ほんとにあいつらしい考え方だよな。

 で、もう一1つ、あの空から降りてきたときの振動だ。それに関しては一つしか答えがない。


 「もうひとつの方は、俺には見したことない能力だよな」

 「そうだ。あの、衝撃を起こした能力は、『自身の身体を鋼鉄のように堅くする能力』だ。能力名は、鋼鉄化」


 なんか、今回の名前は普通だな。こいつの考えはよくわからん。だが、本当にブラウンの能力はすごいのばかりだ。あんな鋼鉄な身体を振り回せば、破壊力も、防御力もかなりのものだ。俺も早く、新しい能力が欲しい!


 「で、どうする?3回目だが?」

 「そうだな、正直どっちも無理な気がするが、やるとしたら、俺が捕まえたい。そっちの方が達成感がありそうだろ」

 「じゃ、さっさと始めるか。……あっ!そうだ。はんでやるよ。制限時間は5分じゃなくて、10分でいいぜ」

 「わかったよ。だが、俺にとっては目標は5分だ。みとけ、俺の意地を見せてやんよ!」

 「ふっ。その意地がどんなものか査定でもしてやるか!」


 俺ははちまきをキツく結びつける。それによって、闘争心が湧き出す。

 ブラウンは、薄汚れたコインを拾い、今日三度目の仕事をする。

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