034 : 浮剣
俺はブラウンがいた、正面に飛びつく。奇襲だ。だが、俺はこの後、どうなるかわかっている。俺の両手は空を斬る。
「どこだ?」
俺は感覚を澄ませてブラウンのいる場所を探す。相手の場所は何処だ。右に微かな空気の動きを感じる。
右方向に手を伸ばす。だが、それも空を斬る。そんな動きを繰り返す。次は左、右、左、右いや左、前、後ろ、全方向に手を伸ばすが、どうしてもれられない。俺の指は空気を触れるだけだ。
「おいおい、おしいっていうのもないぞ!どんどんかかってこいよ!」
「そんなこと言われても、みえねぇから、いちいち静止して集中して探さないといけなくて、難しいんだよ!」
「そこを鍛えるのが、ここの趣旨とでも思え。お前は何故止まって考えようとする。考えながら行動が難しかったら、その割合を5対5じゃなく、考える方をおおきくしてみろ!それと神器を使うの忘れてるぞ」
考えるのと行動を、5対5じゃなく、考える方を大きくする。考える方ながら、行動をするのは確かに難しい。正直、今の俺じゃあ、こんな至難の技は無理だ。だが、ブラウンのあの言葉をすることが出来れば、両立することができるかもしれない。
5対5ではなく、考える方を大きくするってことは、考える方を7、動くのを3って感じにすればいいのだろう。
だが、動くのを3って、どういうことなのだろうか?
今までの動きはここだ、と考えたところに手をふるっていた。1だとしたら、適当にふるうってことだろう。じゃあ3だとしたら、少しでも感じだなぁー、くらいのかんじのところにふるって、当たらなかったら次だ。って感じでやっていって、時々、ここだってのができるくらいじゃないのか?まぁ、これなら俺にも出来そうだ。
俺は早速、やってみる。
考えてる間に、少し感じたってところに手をやる。
今、右に風があったな、足音がしたな、ブラウンの匂いがしたな、などを感じたところに手を伸ばすが、やっぱり当たらない。だが、
「あぶねー!」
考えてそこだ!っと思ったところに手をやったときは、かなり惜しいときはあった。
「やるじゃねーか。こんなに早く言われたことを習得するとこなんかは、流石だな」
「そんな無駄口たたいている暇あんのかよ!おら!」
俺は喋って出来たスキに拳を叩き込む。だが、それも躱す。そんな余裕は無いはずだが、それを間一髪で躱すのは、流石ブラウンだ。
「まぁ、この無駄口もハンデと思ってくれ」
「そんなこと言ってていいのか?俺も、そろそろ本気出してくぜ」
俺は端っこらしきところに、ブラウンを追い込む。
「今だ!《壁》」
俺はこの鬼ごっこの範囲を半分にする。それによって俺のチャンスが、かなり増える。
俺は早速、攻撃を仕掛ける。さっきの7対3の容量も掴めてきたので、簡単に出来るようになってくる。それによって、攻撃速度がとても早くなった。これでブラウンに攻撃を仕掛ける。だが、これも全部空を斬ってしまう。
「なんでだ!なんでこの距離なのにかすりもしないんだよ!」
「そんな焦ってても、なんの意味もないぜ!」
いや、焦るよ!こんなにも勝てる状況なのに、勝機が一つも見えないんだ。怖くて焦ってしまう。
「お前、どうやって躱してんだよ。結構殴ってるスピード早いはずなのに」
「なぁ、覚えてるか?前、戦ったとき、俺はそれはお前が見ている世界の中では完璧かもしれないが、俺の世界では全然だ、って言ったの?」
たしか、そんなのあったな、っと、その光景を、思い出す。
「それがどうかしたのか?」
「それが今、また起こってるってことだ」
「どういうことだ?」
「じゃあ、俺は今どこにいるか当ててみろ」
俺は神経を研ぎ澄ませてみる。今、ブラウンがいるのは俺の目の前だ。
「俺の目の前じゃないのか?」
「目隠しを取ってみろ」
俺は、はちまきをとり、広がる光景に唖然とする。
俺の視界には、宙に浮く剣が写っていた。
「ど、どういうことだ!?……あっ!これってもしかして、プラスαの能力なのか!?」
「正解」
そう言うと、拍手をして、自分の位置を知らせる。ブラウンは俺の上、木の枝に座っていた。
「俺のプラスαの能力、剣を持たずに動かせる、『浮剣』だ。これで俺のふりさせていた。足音なんかも剣を地面に滑らせたりして、鳴らせてたんだよ」
そういうことか。ってことは、俺はブラウンの剣に踊らされていただけって、ことなのか。なんて、無意味な攻撃だったんだろうか。
この戦いで、注意しなければならなかったことは、物の音や風ではなく、声だったようだ。
負けたことにムカつく。だが、すごく面白い。
「なあ。第二戦、早くやろうぜ」
「いいぜ」
ブラウンは落ちていたコインを拾う。俺も創り出した壁を消す。
「だが、俺から一つ提案がある。次は俺が逃げてもいいか?」
「ふーん、そうきたか。いいぞ、面白い。俺が鬼をしてやろう」
俺には1つ勝利のビジョンが浮かんでいる。そのためにも1つ条件をつけておく。
「制限時間をつけておかないか。時間がアバウトすぎると、なんか感じが悪いからな」
「わかった。時間は5分だ」
俺はコクリと頷く。
今回はとても自身がある。
「今回こそは勝たせてもらうぜ!」
「それはどうかな?」
ブラウンの指からコインが放たれる。
こんな戦いが、後もう2回あります。楽しんで貰えると嬉しいです。
作者は感想を待っています。気軽に書いてもらえたら嬉しいです




