033 : 硬貨
ちょっと投稿遅れました。
鬼ごっこ。それは鬼をきめ、その人が他の逃げる人たちを捕まえるっていう、とても簡単な遊びだ。それを、決闘として使うなんて、どういうことなのだろうか?という興味で頭がいっぱいになる。
「あのさー、細かいルールとか教えてくれないか?」
「そうだな、根本的なルールは、普通の鬼ごっこと一緒だ。だが、範囲は2メートル、2メートルの正方形の中でやるってことだ」
狭いな。それだと、適当に手を素早く振っていたら、まぐれでも当たる気がする。だが、ブラウンはかわせるんだろうな。
「神器の使用はオッケーなのか?」
「いいぞ。だが、今回は俺も使わせてもらう」
「えっ!?それだと、結構俺は不利だな」
「大丈夫だ。俺の能力って、戦闘向きの能力だから、そこまで意味がないんだよ。ハクヤの神器の方が向いてるんじゃないのか」
それならなんとかなるかもな。だが、まだブラウンの他の能力がわかっていない。そこを警戒しておかないと。
「よし、ルールてのもこんなんだろ。じゃあ、早速始めようか」
ブラウンは近くにあった、手頃な木の枝を使い、四角の範囲を描く。
「言っといでなんだか、案外2メートルって狭いな」
「じゃあ、広げるか?」
「いや、いい。どっちにしろ、お前は俺に触れることは出来ないからな」
その言葉は、高ぶっていた俺の闘気は、さらに高ぶり、荒ぶり始める。
「言ってくれるなぁー。ブラウン!今回こそは勝たしてもらう。いや、勝つまでやるから、覚悟しとけ!」
「いや、三回までだ。じゃないと、俺が寝てしまう。もう今も、はぁ〜〜ゎ。もう眠くてしょうがない」
「眠くて、動くのが遅れたとか、そう言い訳で俺に負けたのをカバーするのはやめろよ」
「そんなことはしないさ。まぁ、寝てても、お前の動きなんか、かわせるさ」
こいつ何かと、俺を挑発してくる。苛立ちが、俺の理性を奪おうとするが、根性でそれを抑制する。そんなので、俺の動きが鈍って、負けたりでもしたら、そのことが腹立たしくて、一日中ふてくされてしまう。
ブラウンは、四角形の中に足を踏み入れる。それをみた俺も、足を運ぶ。
「コインを作ってくれないか?はじめのサインを出すときに使いたいんだ」
「わかった。《硬貨》。ほらよ」
メダルを指で弾き、放物線を描いてブラウンに渡る。そのコインは、この世界、共通の硬貨だ。その中でも一番安いのを創った。それをまじまじと見つめ、ニヤニヤと笑い出す。
「なぁ、ハクヤ。今度この硬貨、いっぱい創ってくれよ。これで俺は、何不自由しない暮らしをする」
「馬鹿なこと考えんなよ。俺は作ることは出来るが、それは決して本物では無い。だからいずれバレるぞ。その時、俺までとばっちりを受けるのは、ゴメンだ」
ちっ、と舌打ちをし、なんだー、と言うかのように、何度もコインを上に弾いたりしている。
いや、待てよ。何かを買うときなどは、使えないが、交渉のときなどは使えるかもしれない。この神器で創り出したお金をチラつかせて、獲物を釣れるかもしれない。使い方によってはまだまだ、色んな用途があるかもしれない。
「お前、なにニヤついてんだよ」
「えっ!?」
いつの間にかニヤついていたようだ。つり上がった頬を無理やり下げ、表情を自然体に戻す。こういうのは明日にでも考えよう。
「オイ!なに考えてたんだ?」
「別に大したことじゃないさ。ただ、自分の神器の有効性を再確認してただけさ」
「お前の能力は、用途が広いからな」
ブラウンはそう言うと、少し考え込む。
「なぁ、お前は教育を受けてきたか?」
「いや、農業とかの教育は受けてきたが。習ったことっていっても、読み書きくらいだな」
「なら、この修行が、一区切りついたら、王都にでもいって、少し勉学の修行もしよう」
王都か。俺は、あの村の外に出たことがなかったから、他の街に行ったことがない。だから、とても興味がある。でも、勉強なんてしたことないからな。俺は勉強が好きなのか、そうでないのか、それに少し不安がある。
「それと、お前に何個か、食べてほしい料理があるからな」
「それって、裏を言えば、その料理を創ってほしいってことだろ」
「本心はそうだが、純粋に王都の美味しい料理を食べてほしいって気持ちもある」
「何対何だ?」
「9対1だ。もちろん、創って欲しいがな」
こいつは、食べることが、本当に好きだな、と再確認して、俺は、はちまきを巻く。巻かれた俺の視界は、暗闇に満ちていく。
「よし、話しはここまでにして始めようぜ。《肉体強化》」
「そうだな。あっ!あと言い忘れてたが、俺が勝ったときは、お前が、俺がお腹いっぱいになるまで、料理を創り続けるってことでどうだ?」
「いいぜ。別にそんなの簡単だし。ってか、俺は負けないからな」
「そんなこと言ってて良いのか?俺の胃袋はブラックホール級だぜ」
「もし負けたら、クソ不味いもん食わせてやる」
「それも喜んで食ってやるよ」
あっ!そういえば、こいつなんでも食えるんだった。俺は少し後悔する。だが、そんなのも、直ぐに吹っ飛ぶ。何故なら、この勝負に負けさえしなかったらいいんだから。
「よし。じゃあ、このコインが地面に落ちたらスタートだ。フライングも少しなら許してやろう。じゃあいくぞ!」
ブラウンの指から、真上へ、コインが放たれる。そのコインは、最高到達点まで達し、どんどんと、地面に近づいていく。あと1センチ……
俺の体感速度はその1センチをとても長く感じる。
ついに、コインが地面に落ちる。コインは、地面が土のせいで、音を上げずに、倒れる。
「いくぞ!」
俺はブラウンに襲いかかる。
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