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転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
32/42

032 : 目標

 俺は木の葉の上に寝転がり、空を見上げる。今は、はちまきをとっている。ブラウンはあんまり厳しく見張ってないので、こういう、のんびりしたいときは、はちまきを外して入る。


 自分の指にハマっている銀色に輝くリングを眺める。それはきらびやかに見えて、どこか儚さを感じる。


 「お前には、どんな能力があるんだよ」


 たずねても応えてくるはずもないのに、俺は期待をしてしまった。いや、応えてくれるかもしれない。俺は知っている。こいつには意思がある。こいつの魂はまだ波打っている。それでないと、神器があの暗闇の世界に連れて行く筈がない。


 神器は神の魂。それは神様が残した自分の欠片。それは神様の心。それは神の心臓部。


 だから、神器はこたえてくれると信じている。その可能性は低い。だが、その可能性はゼロでない。やってみるだけやってみるか。


 俺はあぐらに座り直し、どうしたものかと考え込む。あの神の世界に行くにはどうすればいいのか?それを考えても無駄だ。だってあそこに行くには神が導いてくれるしかないんだ。俺には神を説得するすべがない。だが、暗闇の世界には行けるのじゃないのか?


 俺は自分が考える焦点を、神の世界に行くことから、暗闇の世界に行くことに変える。


あの暗闇の世界に行ったのは、俺がこの神器に、ふさわしいかどうかを、試すためだ。だったら神器に俺がふさわしくないことを示せばいい。どうすればそれを示せるのか?人に負ければいいのか?それだったら、もう俺はあの世界に導かれている。ってことはどちらの世界にも行けないのか?

 俺は落胆する。どこにも俺は頼る場所がないことに……だが、


 「だが、こっちの方が、俺も燃えてくるぜ!」


 メラメラと燃え上がる炎が見えるくらいなオーラを、全身に漂わせる。


 目標は『この、一ヶ月の間に、1つみつけだす』と掲げる。この目標を達成するのは、かなり難しい。いや不可能に近い。

 だが、俺はそれをなり遂げてこそ達成感を味わうことができると思う。


 「うわー、俺、なんかちょっとやばい人になってきてね~か?」


 そんな馬鹿げたことをいっている暇も今はない筈なのに、妙に余裕がある。その余裕はどこにあるのか、わからないが、何故か感じてしまう。俺は絶対に、能力に巡り合うことになるって。だが、まだそれは感じてるだけだ。だからそれを実現させないと……


 「まずは日々の鍛錬からだな」


 俺は取っていたはちまきを巻き、身体を鍛える。


 腹筋、背筋、腕立て、スクワット、ダンベル、素振り、木を殴る、蹴る、押す。


 そんなことをしている内に、はちまき越しに感じていた、薄っすらとした光が無くなっていき、辺りは闇が現れてきた。


 「もうこんな時間か、そろそろ帰んねぇーと、ブラウンが腹を空かせて死んじまう」


 俺は急ぎ気味で、ブラウンのいる、ホームに帰る。


 いつもの木の場所に着くと、案の定、腹を空かせたブラウンが、のたれ死んでいた。


 「おい!そこで死ぬなよ。獣がいっぱいいる場所で、死んでくれ。そしたら後処理が楽だからな」

 「いや、死ぬ前提で話進めんな!俺はまだ、死ねねーんだよ!まだお前の料理を全種類食べきっていないからな!」

 「俺は、そんな時間、お前と一緒にいねーよ」

 「いや、俺がついていくから大丈夫!」

 「やめてくれ。犬じゃ無いんだし」


 そんなブラウンの姿を、想像してしまい、少し吐き気に襲われてしまう。異常に筋肉質な奴隷って感じで、クスクスという笑いが収まらない。


 「おい!こんな話してる暇があったらご飯を恵んでください!」

 「嫌だといったら」

 「そのリングを無理やり奪って、俺のもんにする」

 「わかったよ!てか、飢えに耐えられずに、ほんとにそんなことすんなよ。《食料オムライス》」


 俺は黄色い卵が、全面に広がる、家庭料理でトップを争う料理を創る。

 目隠しを外し、そのオムライスを、俺はムシャムシャと口に運び込む。うん、美味いな。でも、そんな料理に口をつけず、首を傾けている奴がいる。


 「このオムライスに足りないもんがある」

 「ん?なんだよ?」

 「それはな……ケチャップだ。彼は食べ物の美味しさを引き立ててくれる、無くてはならない存在だ!」


 いつもはそんなの気にしないくせに、と思いつつもそうだなと思い、ケチャップを創り出して好みの量を卵にかける。

 やっと納得したようで、オムライスを書き込んでいく。


 「あっ!そほだ!」

 「オイ!きたねぇーから、ちゃんと飲み込んで言えよ」


 ブラウンは、ハムスターのように口いっぱいに詰め込んでいたオムライスを、飲み込む。


 「ご飯食い終わったら、稽古つけてやんよ」

 「いきなりだな。別にいいが前と同じルールなのか?」

 「いや。今回は戦うんじゃなくて、鬼ごっこをしようと思う」

 「鬼ごっこ?ってあの追いかけたり、追いかけられたりの?」

 「ああ」


 人生でやったことがない人は、ほとんどいないってくらい、庶民的な遊びを何故やるのだろうか?あいつのことを理解できるのは、あいつと何年付き合ったらだろうか?


 「で、そのルールなんだが、俺が逃げてお前が捕まえるんだ」

 「えっ!そっち!?俺はてっきり逃げる方かと思っていた」

 「それは難しいだろうからな」

 「いや、そっちの方が難しい気がするけどな」


 ブラウンは、どうして?っという表情を浮かべる。あいつの中での鬼ごっこは、どんなものだろうか?少し気になってしまう。だが、今はそれより……


 「まぁ、いい!やってやろうじゃねーか!こんなはちまき、今日でおさらばだ!」

 「そうこなくちゃな!」


 ブラウンは表情を一変させて、笑顔になる。

 俺は闘気をみなぎらせる。今回は勝てせてもらうぜ!

ブラウンとの次の戦いは、なんと鬼ごっこです。知らない人はいないですよね?だからこそ面白さが出ると思います。次回を期待してください。

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