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転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
30/42

030 : 既視

 「なぁ?どうやったらプラスαの能力を取得できるんだ?」


 俺は昼間に悩んだ質問をぶつけてみた。ブラウンもこの壁に悩んだはずだ。こういうのは経験者に尋ねるのが一番楽で手っ取り早い。だが、その期待は裏切られる。


 「うーん?伝えにくいんだが、この能力ってのは探して見つかるもんじゃ、ないんだ。お前だって薄々勘付いてんだろ?」

 「まあな」


 くそー、昼間のあの時間は無駄だったという、事実に少しの哀しさを感じる。


 「まぁ、俺もこの能力以外に3つも持ってるが見つけるまでに10年もかかっているからな」

 「10年で3つ!?ってか、あんた何歳なんだよ!」

 「俺か?俺は18だ」


 18だって!ってことは8歳から神器を持っていたなんて、と驚愕な真実を知り、そして、納得できない。だってこの顔でその年とか、あっ!俺は一種の考えが頭に浮かぶ。


 「お前その髭沿ってみて、《短剣ナイフ》」


 髭を剃るための刃物を渡し、魔法で水を創ってサポートする。


 3分後

 やっぱり俺の想像は当たっていた。


 「やっぱり、髭が邪魔だったんだよ」

 「どういうことだ?」


 ブラウンは髭があった顎を撫でながら、俺を見てくる。ブラウンは髭のせいで、何歳も年老いて見えていたが、髭がなくなると、かなり実年齢に近づいたと思う。


 「少しは見た目にこだわれってことだよ!」

 「あ、ああ」


 ブラウンは意味が分からず、辺りをキョロキョロ見渡す。そんな姿に笑ってしまう。


 「よくわからんが、お前、はちまきどうしたんだ?」

 「ん?はちまきなら」


 俺は木にかかっているはちまきを指差す。


 「汚くなってるから洗ってほしてるんだよ」

 「なら丁度いい。なぁ、ここで大きな音を出してくれないか?」

 「ん?まぁいいけど。《音爆弾サウンドボム》」


 俺はよくわからないが言われたままに大きな音が出せる道具を創り出す。


 「耳を塞いどけよ。《耳栓イアープラグ》。ほら」


 耳栓をブラウンに渡し、俺も耳に装着する。


 「じゃあいくぞ!」


 音爆弾を地面に叩きつける。爆音が大地を、木々を、自分自身を轟かせる。それは森をどよめかせる。


 「なんでこんなことしたんだよ」


 音が鳴り止むと共にブラウンに尋ねる。


 「それはな……ほら」


 俺はブラウンが辺りを見回すので、それを見習って辺りを見回す。

 そこにいたのは大量の敵だった。


 「見とけ、俺の力を見してやるよ」


 そう言い、腰に下げていた剣を鞘から抜き、何度か剣を振るう。そして剣を鞘にしまう。


 「オイ!俺にビビってんのか!それでもお前らは魔物か?お前らの魔は1つも怖くねぇんだよ!まだ誇りがある奴は掛かってこい。稽古をつけてやるよ!」


 ブラウンがまとっているオーラに足を竦ませている。これがブラウンがまとう覇気、俺のものとは根本から違う。敵をそのオーラに触れたものを消してしまうかの様な禍々しさを醸し出している。

 魔物たちは言葉を理解できてはいないが、自分が挑発されているってことはわかっているようだ。竦んだ足を、重そうに一歩ずつ運んで近づいてくる。警戒心をむき出しにして、俺を眼中にしてないように、ブラウンを囲みながら近づいていく。


 「少し離れとけ。血しぶき浴びるぞ!」

 「わかった。《飛行フライ》」


 言われたとおり、地上がはっきりと見える程度に地から距離をとる。


 「よし!かかってこいよ!誇りをかけて、俺を殺しにこい」


 ブラウンは離れている俺にも、びっしりと伝わる殺気を放つ。それに反応して魔物たちも襲いかかっていく。


 「ガルァァー!」


 魔物たちは連携して、次々と攻撃を放つが、最低限の動きで次々とかわしていく。

 だが、まだ何も攻撃ていない。と、思ったとき俺は衝撃的な映像を目の当たりにする。

 魔物たちは、次々とブラウンに攻撃をかわされて勢いでそのまま流れていくと、血を流して倒れていく。


 「ど、どういうことだ……」


 信じられない。剣を一度も当てていないのに、剣で斬られたような傷を追って倒れていく。

 そして途中で襲いかかっていくのをやめる。だが、すぐに一匹の、あの魔物の狼が遠吠えを上げる。そして10匹くらいの狼が一斉に飛びかかっていく。……だが、そんな一斉攻撃も虚しく意味を無くす。


 「キュゥ〜〜」


 色々な魔物か地面へ倒れていく。敵との格の差を感じ、獣たちは森の奥に帰っていく。

 ブラウンは、と見てみると、いつか見たようなあの、赤い姿になっている。

 俺は地上にゆっくりと降り立つ。


 「どうだ?」

 「凄いのは分かったし、能力ってのは尋常じゃない強さってことも分かったんだが……なんでお前は服を汚すんだよ!」

 「むずいんだよ。俺、そんなきれいに戦えないし。別に服を汚したとしても何度でも創れるじゃん」

 「そうだけど、人にもらったもんは大切にしろよ!」

 「はーい。了解でーす。次からは気をつけます」


 こいつ絶対やる気ないな。

 俺は呆れてうつむく。


 「もういい。早く身体を川で洗ってこい」


 何故俺は師匠に、指示しなければならないのだろうか。

第二章後半になっていきます。

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