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003 : 侵入

 俺は今信じられない相手を前にしている。それは……


 「はじめましてだな、俺」


 そう、俺自身だ。何が起きているかわからない。だって目の前に自分がいたとしたらどうなると思う?そうだよね思うことはひとつ。それは


 「なぁ、これ……って夢だよなー。夢って言ってくれ!」


 俺は叫ぶ。もうそれしかできないからだ。だって、はじめましてな俺に会うとか意味不明だ。


 「うーん?君がいるのは夢の中だが、君が話している相手は本当に君自身だよ」


 もうどいうことなんだ。夢の中で本物の自分にあっている?それって、夢の中で会ってるってことは俺の偽物ってことか。だけどあれは俺にそっくり過ぎる。もうどっちが本物の俺なんだよー!


 「なぁ、お前は俺なんだよな。じゃあ俺のことを知ってるはずだろ。なんか言ってみてくれよ」

 「いや、俺は君がどんな人生を送って、15年間を過ごしてきてかは知らない。だけど、僕は君の前世を知っている。って、俺が君の前世の人物なんだけどな」


 えっと、今言われたことを整理をすると、俺は前世の俺と会話しているってことになる。あーー、またややこしくなってきたー!……てか、俺の前世ってなんだったの?


 「なぁ、お前はどんな人間だったんだ?」

 「俺か?俺は人間じゃなくて魔王、だった。どんな魔王だったかっていうと、『村人に生まれ変わりたい』っていう願いを持ってて、勇者がやっと城に来てワクワクしてたら前日に夜更かししずぎて、寝ている間に殺されたドジでアホなダメダメ魔王だよ」


 うわー……、俺の前世ってロクな人生を送ってないじゃん。てか何、魔王が村人になりたいってすごいこと考えるなー。


 「なぁ、なんで夢の中で俺に会いに来たんだ?別に俺にあったところで意味がないだろ」

 「大ありだよ。俺は君にお願いと謝罪をしにきたんだ。」

 「それって、もしかして俺の身体を貸してくれとかじゃ……」

 「少し違うな。別に君の身体を乗っ取りたい訳じゃないんだ。俺のお願いっていうのは、君に僕の記憶を思い出してもらう。その記憶の中に他のお願いなどもあるはずだからそれもわかって欲しいっていうのがお願いだ。そして、謝罪っていうのが、君は多分もうこれまでの様な生活はできないと思うってことだ」


 前世の記憶を思い出す。なんかいきなり言われても実感がわかないな。なんかあんまり気乗りしないな。


 「それってNOっていう返事はありか?」

 「ないな。君にはYESという返事しかないんだ。すまない。これは神が決めたことなんだ。わかってくれ」

 「それってお願いじゃないじゃないか。そういうのは命令っていうんだよ!」


 もうひとりの俺は顎に手を当てて悩む。


 「そうなのか?俺がいた世界ではお願いしたらなんでもやってくれてたから」


 流石魔王様だ。俺ら人間とは違うな。……だけど拒否できないとは……、まぁ夢の中だから乗ってやることにする。


 「しょうがないな。どうしたらいいんだ?」

 「やった!……えっと、目を瞑って、身体の力を抜いて……、じゃあ始めるよ」


 俺は目を瞑ったまま頷く。すると暖かい何かが俺を包み込んでいく。それは赤子を抱くように優しく、俺は眠くなっていく。そして次の瞬間、俺以外の誰かがはいってきた。


 「誰だ。お前は誰だ!出てけ!出てってくれ!」


 俺は叫んだ。気持ちが悪い。今まで生きてきた中でこれが一番だ。するともうひとりの俺が脳に直接語りかけてくる。


 「大丈夫。落ち着いて。今君に俺の記憶を植え付けているんだ。すぐだから、後もう少しがんばって!」


 俺は叫びながらも耐える。こみ上げてくる吐き気も気力でなんとか抑える。するとドンドン吐き気が治まっていく。すると


 「なんだ、これ……。これがお前の、前世の俺の記憶」

 「そうだよ。君は今日からこの記憶と共に生きなくちゃならない。すまない、自分勝手だっていうことはわかってる。だけどわかってくれ」


 すると俺の意識はいきなり吹っ飛んだ。真っ暗な深海にいるように何も考えられなくなる。そのままそこに沈んでいく。底へ、底へ……


     □□□□□     


 「ハクヤ起きなさい!」


 俺は目覚めた瞬間、ビンタをくらった。痛い!もの凄く痛い!だから俺は反抗する。


 「いてーな!何すんだよ!」

 「だってなんでハクヤが一緒に寝てんのよ!」

 「なんでってお前が勝手に俺の腕掴んで寝るから逃げらんなかったんだよ。てかよく見てみろここ俺の部屋」


 アイナは暗い部屋を見回す。ホントだ、という驚きを表情にわかりやすく出す。コイツ、衝動に駆られすぎだろ。


 「ごめん、気づかなくて、ほんとにほんとだからね」

 「別にいいから部屋に帰ってくんねーか、俺まだ寝たいから。フワァ〜、ん」

 「わかった。だけどこれお父さん達には内緒だからね。いいね、絶対だから」


 俺ははいはい、と気のない返事をして立ち去ってもらう。去り際におやすみといって俺の部屋から出てく。

 俺は今さっきの夢を思い出す。あれは本当に夢だったのか?少し試して見るか。俺は植え付けられた記憶から魔王の能力、魔法の使い方を思い出す。えっと、身体の中の気を右手に集中させて魔法名を言う。


 「【ライトニング】」


 すると、あたりは昼間のように明るくなる。流石にずっと明るいと怪しまれるので明かりを消す。……ヤベー、本当だったのか。すると俺は興奮し過ぎて


 「やっほー!」


と叫んでしまった。隣の部屋のアイナから苦情が飛んできて我を取り戻す。……あれ?よくよく考えてみると魔法なんていらなくね?あったって、なんか厄介ごとに巻き込まれるだけだ。


 「なんてこったぁぁぁーー!」


 俺は叫んでしまった。すると、ドンっとドアをアイナが開けてきた。


 「だ~か〜ら〜!うるさいって言ってるでしょ」


 俺はそれから一晩中説教をくらった。二日酔いも来て、寝不足と重なり吐き気に見舞われる。だけどアイナは寝かしてくれない。


 「アイナさん。もう寝かしてくれないでしょうか、それじゃないと俺!う……、うえぇぇぇー!」


 この夜は俺の黒歴史入りを果たした。

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