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転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
28/42

028 : 実感

お久しぶりです。テストも無事?終わったので頑張ります。

 俺はうなされる中、やっとの思いで、目を開ける。自分がどこで何をしていたかをゆっくりとゆっくりと思い返していく。


 「そうだ、俺負けたんだ……」


 『負け』

 この言葉を味わうのは悲しく、虚しく、悔しく、腹立たしい。

 俺は身体を起こそうとする。だが、自分の体はそれを拒否し、俺に激痛を与える。この痛みは横腹からだ。

 俺は木刀で殴られたことを思い出す。


 「こりゃ骨折かなー。ってことは修行できねぇーじゃん!」


 はぁ〜、と深いため息をつく。これだと多分最低2週間は動けないんじゃないのか?

 俺はまた、ため息をつく。


 「お前何言ってんだ?今日は休んでていいが、明日は修行しろよ」


 ブラウンは川の方からやってくる。服が濡れてるから、魚でもとって食べてたんだろう。


 「はっ!?そんなん無理だ!だって骨折してんだぞ、そんなん超人でない限りは動くなんて」

 「何言ってんだよ、お前はその超人じゃないか」


 俺が?そんなのありえない。前にもブラウンに言われたが、俺はそんな器を持っている訳じゃない。ブラウンの様な体格や、戦闘のセンスを持っている訳じゃない。王都の学者の様な知識を持っている訳じゃない。もし、これから俺が伸びていくならわかるが、まだそんな変化を感じた訳じゃない。


 「いや、俺は凡人だ。神器を使っても勝てない力の弱さと、知識のなさ。それなのに俺が超人のわけがないだろ?」

 「別に超人っていうのはお前自身に対して言ったわけじゃないんだ。俺は神器を持ったお前のことをいったんだよ」

 「どういうことだ?」

 「神器が持っているのは決してそんな力だけじゃない。他にもいろんな能力があるんだよ」


 そんなのガネルドは言っていなかった。だからあまり信憑性はないが、神器保持者が言っているんだ。そんな能力が有るかも知れない。


 「それが俺の神器にあるってなんでわかるんだ?」

 「お前が俺の一撃でふっ飛ばされたとき、顔に傷をおってたんだが、その傷が跡形もなくなってんだ。だから多分お前の神器には自然治癒力増加の力もあるんだと思う」


 俺は顔に触れるが傷などない。

 この能力が本当だとしたら、ガネルドはそのことについてなぜ言わなかったのだろうか?知らなかったという可能性は極めて低い。絶対楽しむために言わなかったって可能性は……メッチャあるな!


 「じゃああんたにもそのプラスαの能力があるのか?」

 「まぁな。ちなみに俺は解っている範囲だと3つ持っている。まだあるかもしれないし、ないかも知れない。まぁ、お前も気になるんだったら修行の合間にでも試してみたらどうだ?案外楽しいぞ」

 「そうだな、その力も使いこなせるようになったらかなり戦闘の幅が広がるかもしれないな、やってみるか」


 俺は何からしようか考える。

 自然治癒力についてや、どんなことをしたら他の能力を探すことができるのだろうか?


 「おい!考えてるとこ悪いが、めし創ってくれねぇーか?お前の飯食ってっとなんか焼き魚じゃ物足りなくてな」

 「あぁ、わかったよ。《食料カツドン》《食料ミソシル》それと《チョップスティック》」


 それぞれ俺とブラウン分用意する。

 今回の料理は頑張ってみる。どこまで細かくできるのかをやってみたかったのだ。結果としては……


 「カツ丼じゃん!うめぇ〜、やべ〜、至福!!」


 ブラウンにはとても好評だった。俺も一口食べてみる。


 「う、うめぇ〜!」


 甘さ、硬さ、暖かさ。俺が想像したとおりだった。

 このカツ丼は確かに美味しい。だが、何かか足りなかった。

 俺はカツ丼が大好物で、よくアイナが作ってくれていた。それを忠実に表現しようと、イメージした。味も、硬さも、見た目も、温度も表現した。だが、旨さに何かが足りない。何が……


 俺はすぐに答えにたどり着いた。


 『神器の限界』


 確かにこの神器は何もかも創れてしまう。しかもとても詳細にだ。だが、それは神器が創ったものだ。俺が思い浮かべだアイナのご飯も、アイナのご飯だが、決してアイナが作ったわけじゃない。それはこの神器の超えられない壁なのだろう。


 「お前何が辛気くせぇー顔してんだよ!そんなんじゃ美味しいご飯もまずくなっちまうぞ!」


 俺はいつの間にそんな顔をしてたんだろうか。アイナのことを少し考えたからかもしれないな。


 「あぁそうだな」


 丼をしっかりと持ち、どんどんと丼の中身を軽くしていく。自分の悲しみを埋めるために。

 だが、その悲しみは埋まらず、俺の瞳から零れ落ちていく。それが頬を伝い、一滴一滴カツ丼の上に落ちていく。


 「なんで泣いてんだ?」

 「美味しいから。このカツ丼が美味しいから」


 俺は涙を堪えながらいうが、涙は決して流れには逆らわない。

 ブラウンはそんな俺を無視してムシャムシャとカツ丼をたいらげていく。


 「おかわり」


 ブラウンは俺の方に空になった丼の中身を向けてくる。これは彼なりの優しさなんだろう。なんて不器用なんだよ!

 俺は空になった丼を貰いそれに新たに想像する。


 「《食料カツドン》」


 それをブラウンに渡すと、すぐさまそれに食らいつく。


 「うめーよ!店でもやれば儲かるぜ!」


 そんなお世辞をブラウンの口から聞くとは。なんか、気持ち悪い。だが、彼の優しさで、涙を笑みに移す。


 「ありがと」

新たな神器の力が分かっていきます。ハクヤはまだまだ強くなりますよ!

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