027 : 弱者
俺は見えない目というハンデを抱えながら戦う。相手は目が見えている。この差を埋めるために何をすれば……
考えたい、だが、そんな時間はない。だって、相手は見えてはいないが俺の前にいることは確かだ。
俺は距離を取ろうとするが、そんなすきをつくれない。クソ!また高速移動移動で遠ざかるしかないな。
「《高速移動》」
俺はこの力で遠ざかれるだけ遠ざかる。多分1キロくらいだろうか?この神器にもだんだん慣れてきて、かなり力を使いこなせるようになったせいか、移動範囲や、効果時間も増えてきた。もうこの闘いが始まって5分たつ。多分、肉体強化はまだ後5分は持つだろう。
「《透明化》」
俺は隠れる。まだあいつが言った俺のステルスの弱点が本当にあると決まった訳じゃない。隠れれたらラッキー、見つかったら何故見つかったかがわかる。
あいつは俺が向かった方角はわかっただろうが、俺がどこにいるかわからない。俺が途中で曲がったという可能性もある。さっきは近すぎた、今回はかなり余裕がある。
考えろ、俺!
1、『デカイ落とし穴を創って、そこにはめ、上から剣(木刀)を落としまくる』
→まあまあ良い案だが、もし引っかからなかったらと、考えると確率は半々だ。
2、『地雷を自分の目の前に仕掛ける』
→これもそこを踏ま無かったらって考えたら確率は半々だ。
俺はこの2つを考えていたときにふと、妙案を浮かびつく。その案は、普通に考えたら他と比べて確率は低い。だが、一番楽しそうな案だ。あんな小賢しい案なんて使わない。ちゃんと闘って、剣と剣をぶつかり合わせて勝ってみせる。
そんなことを考えていると目の前にまた、何かが舞っている。その何かが俺の体に当たる。
「みーっけた!」
ブラウンの楽しそうな声が聞こえる。
「手間かけさせやがって!まぁ、お前の位置は割れたしそろそろ殺らせてもらうぜ」
俺はやっとこの透明化の弱点に気づいた。弱点とは、自分の身体に触れているものを消してしまうが故に起こるすきだったんだ。
俺の身体に触れているものも一緒に消す、この能力だから、俺に触れた何かも消してしまうのだ。だからその何かを見続けて、変化が起こったところに俺がいる。コレがあいつの見つけた俺の、透明化の弱点だ。
あいつは馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、こういう戦闘にとってはやっぱり天才だ。
俺は透明化を解いて姿をあらわにする。
「いや、殺るのは俺だ!《煙》」
煙が空気中に広がり、瞬く間にあたり一面を白く濁らせた。
「これで条件は一緒だ!」
「そんなことしていいのかこれだと俺の方が風の動きを捉えやすいぞ!」
「そんなの想定済みだよ!【ゼファー】!」
俺は微風を色々なところに創り出す。これで煙の流れなんか関係ない。
「ハハハ!面白い!やっぱり想像していた以上だ。お前は本当に面白い。だからこそまだ、お前にはそれを取らせない!」
「こんなのつけてると、ムズムズすんだよ!だから意地でも取らせてもらうよ!《飛行》!」
俺は煙の中から出る。すると、下から風がする。
「お前!言葉に出して言うからわかりやすいんだよ!」
「バーカ!今回に限ってはこれを含めた俺の作戦なんだよ!【ライトニング】!」
「うっ!」
声や、風の動きでもう位置は断定している。そして、あいつは俺を目でおっていた。この光ですきができたはず!だから剣を振るった。素早く振るう。相手に反応されないように。
殺った!
俺は確信していた。相手の行動をよみ、相手の行動を誘い、相手の行動を阻害した。この状態での、できることの最善を、尽くした。これでやれるはず、だった。
俺の木刀は空を斬った。
「なんで!?」
「こっちだよ!」
俺は声がした俺の背後を振り向く。その直後、腹に激痛が走る。
「ぐはぁっ!」
俺は衝撃によって吹き飛ばされる。そして地面に落ちた。
俺は蹲る。激痛を和らげるために。手加減はしてくれていると思うが、多分折れてるよこれ!
「おしかったなぁー、後もうちょっとだったのにな」
ブラウンは俺の近くにきて、話しかけてくる。
「どうして!?俺は完璧だったはずじゃ」
俺は途切れかける意識の中で聞く。
「完璧だったよ。だが、それはお前が見ていた世界の中での話だ。俺の中の世界じゃ、まだ、全然だ」
俺はその言葉を耳にしながら、意識を失っていく。負けた悔しさと、激痛が消えていく。
ブラウンとハクヤの第一戦終了です。これから何回も戦うんで、ハクヤの成長を見てください




