023 : 阿呆
俺とブラウンは、今日の晩飯の確保のために近くにある川に来ていた。
水はとてもキレイで、周りには大小様々な石がごろついている。そんな河原のひとつの大きな石の上に赤く染まった、何かが、おいてあった。もしかしてあれは……
「おい、ブラウン。あれ、もしかしてアンタの服だよな」
「そうだが?何かいけないのか?」
「だめに決まってんだろ!阿呆かー!あんな不潔なもんちゃんと処理しとけ!」
ダメだ。こいつと一緒にいればいるほど馬鹿さが明らかになっていく。こいつ、どうやってこいつ、これまで生きて来れたんだろう。
「処理って……埋めればいいのか、流せばいいのか」
「どっちもダメだ!ああーもう!」
俺はこいつにやらせたら時間の無駄だ、と考え、自分でこれをどうにかしようとする。
まぁ、するなら洗って持っていくか……そうだ!焼けばいいじゃないか!
俺は念のために水場に近づき火をつけるための準備をする。
「【イグナイテッド】」
俺は小さな火種を創り出し、その種子を血に染まった赤い服に当てる。
ボワ
服に火がつき、するとそれは服にみるみると広がっていく。俺の手元まで広がってきて、俺は手を話して、石が並んでいる地面に落とす。
火をつけた場所から、灰と化していき、みるみると炎に染まっていき、黒くなっていくのが続いている。そして燃えるものが無くなり火は行き先を、無くしどんどんと小さくなっていく。
「よし、これで血に染まった服が無くなったな」
「でもこれだったらまだ灰が残ってるじゃねーか」
そう、これではまだ、灰という要らない物がある。だが、ここは森、そして俺が農家の息子っていうところの見せ場だ。
「知ってるか、灰を土に混ぜるとその土が良くなるって」
「知らねーなー」
「灰には植物に必要なミネラル類がとても多く含まれてるんだ。だから」
俺はその灰を優しく包み込むように持ち上げ俺は土があるところに落とさないようにゆっくりゆっくりと、歩く。土の場所に着くと、足で軽く穴を掘りそこに灰をおいて埋める。
「これでよし!」
「お前、物知りだなー」
「いや、俺の家、農家だからこういうのは当然っていうか」
俺は照れを隠せず、少し顔を赤らめて答える。
ぐうううー
だが、そんな照れを消すように俺じゃない腹の音が聞こえる。
「あー、お腹空き過ぎて死ぬ。早く魚取るぞ」
お前のせいだろ!っと言いたいが今はぐっと堪える。だって俺もお腹空き過ぎて同じだからだ。
ブラウンは魚を取るために靴を脱いで水に浸かっていく。素手で掴むようだ。あの人くらいになれば魚の動きなんて遅いのか。俺は尊敬する。だが、彼は思いもよらぬ行動を取る。
ブラウンは腰にかけていた剣を抜き、水につける。そして目を瞑り集中する。
「はっ!」
掛け声とともに、水につけていた剣を振り上げる。そして腰にかけていた鞘になおす。
すると川に流れていた水は石や土の方に飛び散り、川の地面が見えるようになっていた。その地面に魚がいた。ピチピチと儚げに跳ねている。そんな魚を無造作に何匹か捕まえて俺の方に投げてくる。その魚は俺の足元でまた、ピチピチと跳ねている。
「どうしてこんなことが!」
俺が唖然としている中、川に水が戻ってきてそれに足をつけながら、地上へと上がって来る。
「これが俺の神器の脳力、『全てを斬り裂く能力」だ」
「全てを斬り裂く。……」
「俺がその物体や何かが、切り裂かれる映像をイメージして斬ればそれは斬り裂かれる」
この能力は強すぎる。特に一対一だと、本当に強すぎる。武器をも一撃で斬り裂くことができたら武器を無くしてしまう。これがもし俺みたいに何本でも創れる人じゃなければ、2撃で終わってしまう。こんな武器あっていいのだろうか。まぁ、俺の神器もレベルが違うけどな。
「そうだハクヤ。薪集めてくるから、さっきみたいに火をつけてくれ」
「あぁ」
ブラウンか薪を集めに行き三分。焚き火ができるくらいの薪を集めてき、それを火がつきやすいように積み、俺に出番を回す。
「イグナイテッド」
俺は薪の下に落ち葉を引いていたのでそれにつけて火を起こす。みるみると、それは枝に燃え移り炎が起こる。
その火の中に適当に魚を突っ込む。
そして焼くこと4、5分。普通に焼くんだったらこのくらいが適当だが、これだと……
ブラウンは木の枝を使って炎の中から、真っ黒焦げの魚の形をした物体を取り出す。その周りには灰がびっしりと着いている。
その魚の灰をフーッと息をかけ灰を飛ばし、魚の色を失った魚に頬張りつく。そして美味しそうに食べる。
俺もそれを見習って少しだけかぶりつく。
パク
だが、俺は一瞬で吐き出し、川の方に走っていきべろをつける。
「まっず!よくこんなんが食えるな!」
「そうか、食えないことはないと思うが」
「こんなん食うんだったらまだ俺の創り出した食料の方が」
「え、お前そんなんできるのか!」
あ、そういえば言っていなかったが、ブラウンは俺に能力に頼ってほしくなかったんじゃないのか。だが、顔がマジで驚いている。
「なんで言ってこないんだよー、時間の無駄じゃん」
「はっ!お前が俺にあんな試練を出して来るから、勘違いして、神器に頼るなって捉えちまったんだよ!」
「あの試練、そんなふうに捉えちゃったので?あんなの面倒くさかったから適当に言っただけなのに」
「お前、調子のんなよー!」
俺はもう一度確信した。こいつ阿呆だ!!
すみません、テスト週間来そうなんで、投稿遅れます。