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転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
22/42

022 : 何回

ちょっと連載遅れました、すいません

 不安で不安で仕方なかった俺だが、あのデタラメ師匠に言われたとおり、訓練に励む。ブラウンの一撃で俺が訓練していた木はなくなってしまったので、その近くにあった、あの木と同じくらいの木の前に立つ。


 俺は暑苦しいマントを脱ぎ、消す。たしかわこんなふうだったよな、と考えながら、俺はブラウンの真似をする。イメージが大切だ。俺は彼の木を倒したフォームを思い出す。

 腰を落として、目を瞑り集中して、力を抜く。そして、右の拳を握りそれを後ろに引く。そして一気に拳を木に叩きつける。


 「はっ!!」


 俺の渾身の一撃を叩き込んだはずだったのに、


 ペシ


 木はびくともしなかった。そして俺の右手の拳から血が垂れていく。この一撃が今までと違うことを証明してくれる。


 俺は痛みを感じながら、こうなった原因を考えた。


 1、『筋力が圧倒的に足りない』

       →だな


 2、『身体や筋肉が上手く使えていない』

       →だな


 どっちも当てはまる。ってか、この2つ以外に原因はない。この2つをどうにかしないといけない。だが、これに関してはすぐには出来ない。


 どうしてブラウンはこの様な試練を俺に課したのだろうか?アイツのことだから、何となくということもあるかもしれない。だが、俺はこう捉えた。能力や戦術を鍛える前に基礎となる身体がなくてはいみがないと。

 だから、俺は文句をいわず、この試練に挑む。


 まず、俺は負傷した手の治療を始める。


 「アクア」


 俺はコップ一杯分の水を宙に生み出し、怪我をした右手にかける。そして


 「《包帯バンデジ》」


 俺はそれを苦戦しながら右手に巻く。今まで怪我をした時、アイナが治療してくれてたから、あんまり、こういうのに慣れていなかった。だが、形は悪いがなんとか巻いた。これで治療終了だ。


 この右手が使えないとすると、殴るのは無理だな。だが、そんなに痛くはないから、殴ること以外は大丈夫だな。


 俺はこれから何をするかを考える。朝起き、10キロ走り、腕立てふせなどの筋トレをして、それから……


俺は気づいてしまった。俺はなにをしようが、所詮俺なんだということに……


 俺はこの神器を得たところで、村人Aのハクヤだ。それと違って、アオ爺は武勇伝をも作る名誉騎士。ブラウンは謎多き剣士。彼らは天才だ。神器なんか持たなくとも俺が神器を所持して、戦っても、渡り合える。いや、かつかも知れない。そんな俺は凡人だ。凡人がいくら頑張ろうが天才にはなれない。天才は元から天才なのだ。

 凡人が天才に近づこうともの凄い努力をしたところで、天才は少しの努力で凡人の遥か先に行けてしまう。これが凡人との差だ。


 俺は俯く。自分の力の無さに嘆き、周囲の力を妬み、そんな自分を哀しむ。自分は強い、自分が魔王を倒す。全て否だ。それを言うなら、人語は強い、この神器が魔王を、倒すんだ、ってことになる。だから、俺は神器を妬む。力を持つ世界の天才を妬む。妬む、妬む、妬む……


 俺はかなりの時間俯いていた。日が昇っていた空も、少ししかもう、顔を出していない。


 そんな時、俺の近くの木にもたれ掛かって寝ていた、ブラウンは目を覚ました。彼は立ち上がって背伸びをする。その顔はまだ眠気を残していた。


 グウゥゥゥ〜〜〜


 彼はお腹を抑える。

 俺は思わず笑ってしまった。彼は本当に気ままだ。自分の寝たいときに寝、お腹が空いたら起きる。


 「笑うな!お前だってお腹空いてるだろ?」

 「まぁ、そうだな。朝から何も食ってねぇーし」


 俺は気づいた。彼は取っても人間らしくは無い。だが、生き物らしい。

 人々は歴史の中で仕事という役割を作った。その役割を持たないものは人間ではないと差別し、人々は嫌った。だが、それは人間界での話だ。それを生き物という、大きな塊として考えてみる。色々な生き物で共通しているもの、それは栄養を取り、休息を取ることだ。それをしていさえすれば、死ぬことはない。

 彼は人間としてはクズだが、生き物としては当然なことをしている。

 だからといって彼みたいになろうっていう訳じゃない。ただ、彼は自分と同じだとは思っちゃいけない。ブラウンはブラウン。俺は俺ってことだ。凡人は凡人らしくしてれば良いってことだ。

 彼は俺が悩んでることなんて無視して自分のやりたいようにする。


 「よし、じゃあ狩りにでも行くか!」

 「そうだな、暗くなりすぎない内に狩ろうぜ」


 俺の神器を、使えば楽勝に食料にありつけるはずだ。だな、彼は能力に頼ろうとしない。それが彼の教だからだ。

 ブラウンは薄暗い森の中に歩いていく。俺も慌てて後ろをついてく。

 彼は俺の師匠だが、決して全てを真似をしようなんて思わないことにする。彼は天才で俺は凡人だから。

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