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転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました  作者: 咲白 正則
第二章 師匠と弟子
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021 : 師弟

第二章突入です。

 俺は今、ずっと木を殴り続けている。それも肉体強化や装備無しで、めちゃくちゃ太い木をもう2時間もだ。なぜこうなったのか、それは俺の新しい師匠のせいである。


     □□□□□     


 俺はあの大穴、狼の住処からかなり離れた景色の変わらない森の中にいる。少し違うとすれば、ちょっと暑いことだけだ。

 そして今俺は腰を降ろしてあぐらをかいて座っている。これまではずっと1人旅だった。だが、今、俺をここに連れてきたのは1人のおっさんだった。おっさんは血で汚れた身体を清めに近くの川に向かった。

 俺はここに来る道中、おっさんとは一言も会話をしなかった。俺もおっさんもまだ、お互いのことをよく知らない。だが、俺は1つ、わかっていることがある。それはおっさんが神器所持者だということだ。そうでないと、あんな敵、倒せるはずがない。


 おっさんは川から帰ってきたみたいで、カサカサと、足音がする。俺は音がする方を見ると、おっさんは生まれたままの姿でいた。


 「なんで裸なんだよ!!」

 「いや、仕方ないだろ。あんなに血を浴びたから取れなくなって着る服が、なくなったんだよ」

 「じゃあ、もっと隠すとこ隠して!恥じらいを持てよ!」


 俺は呆れる。このおっさん、本当にあの敵を倒したのか?

 俺はこの姿でいられてても困るので、服を創造する。おっさんの体格、雰囲気に合うもの。血で染まっていて今まで、分からなかったが、かなり男前だ。肌は黒く。眉毛が太く。髪も短く、焦げ茶で、かなり筋肉質だ。そんなおっさんに合う服を。


 「《クローズ》」


 俺はここの少し温かい気候に合わせて、白の布のシャツに、ズボンも黒の布にする。それが俺の前に浮かび上がり地面に落ちる。


 「ほらこれ着ろよ」

 「え、パンツがないと履けないけど?」

 「パンツくらい血で汚れてないだろ!拾ってこい!」


 俺に言われたおっさんは俺が創造した服を持って、さっきいた川へ走っていく。


 数分後

 おっさんは服を着替え終えて帰ってくる。まぁ、似合ってるんじゃないか。俺は勝手に評価する。


 おじさんは軽くその場でジャンプしたり走ったりして着心地を確かめる。なんか不服そうな顔をする。


 「なんかおかしいところがあったのか?」

 「おかしいところはないが、なんかこの新品って感じがどうにも着づらさを出してくるんだよ」

 「じゃあ汚せば?」


 俺は適当に言葉を返す。こいつおかしいやつだ。なんか普通の人と頭の出来が違うようだ。これが天才って奴なのか。

 おっさんは俺の言葉を真に受けたようで地面に寝っ転がって、ゴロゴロする。別にいくらでも創り出すことは簡単だが、せっかくあげた服をこうもされたらイラッとくる。だが、何も言わない。言ったら面倒くさそうだからな。


 おっさんはピタリと服を汚すのを辞め、俺の方に顔を向けて座る。


 「そういえばお前の名前なんて言うんだ?」

 「俺はハクヤだ。あんたは?」

 「俺はブラウンだ」


 アオ爺から聞いた有名な人の中にこんな人はいなかった。てことは騎士とかではないんだろう。だが、騎士とかじゃないと、こんな強くなれるのだろうか?

 俺は疑問に思っている中、ブラウン話を勧めていく。


 「自己紹介も終わったことだし稽古を始めようか」


 稽古。俺はこの新しい師匠から何を教わるのか。不安と楽しみの2つの感情がある。だが、今は楽しみのほうがでかい。だって、この男はあの強敵の群れを一瞬で殺った男だ。どんなキツイ稽古なんだろうか?


 「まず、始めの稽古は……」


 ブラウンは辺りを見回す。そしてひとつの木を見つけ、そちらの方へ歩いていく。その木は太くでかい。そんな木の前に立つ。


 「この木を素手で倒してみろ」

 「素手?能力は使っていいのか?」

 「ダメ」

 「そんなの無理だよ、こんな太い木」


 こんなメッチャ太い木、能力なしの素手じゃ無理だ。武器も能力を使っちゃいけないなんて。


 「じゃ、頑張れよ」


 そう言い残して、ブラウンは近くの木にもたれかかって目を瞑る。クソ!なんて呑気な奴なんだ。こんな奴師匠だなんて嫌だ。だが、こいつの強さだけは本物だ。もしかしたら、これが終われば本物の稽古にありつけるかもしれない。

 俺は木に拳を叩きつける。何回も何回も……


 二時間後、今に至る。


 俺は計何回殴っただろうか、そんな拳を振るおうとしたがもう痛すぎて力が入らない。

 そんなとき、いつの間にか起きた、ブラウンが、木の前に立つ。そして、腰を落とし、目を瞑り集中している。そして


 「はっ!!」


 拳を放つ。


 バキバキバキ!!


 拳は木をへし折った。どんな力を持ってんだよ!いや、どう考えてもこいつ人間の限界を超えている。昔のアオ爺と同じくらい強いんじゃないのか?いや、それ以上だ。しかも、神器も持ってるとなるとその力は計り知れない。


 「こんなふうにやってみろ。そしたらこんな木、簡単に折れるから」

 「いや、無理だから!」


 俺のその言葉を背中で聞き流し、また、さっきまでいた場所に戻り、座って、目を瞑る。

 こんな師匠の元についてて強くなれるのだろうか?俺は不安でたまらない。

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