016 : 尊敬
投稿が遅れてスミマセン
チリーン
アオ爺の指からコインが空中に放たれる。コインは空を舞い、頂点に達し、放物線を描いて地面を目指している。これが落ちたらスタート。俺は準備を始めておく。油断をしてしまったら負ける。相手は神器所持者ではないがそれに匹敵する強さの持ち主だ。
チリーン チリチリチリーーン
コインは地面に落ちる。
「《肉体強化》」
俺は一気にアオ爺との間合いを詰め寄る。その勢いで一撃叩き込む。それを掠ったか掠ってないくらいギリギリで躱す。流石アオ爺だ。俺の強化された肉体の攻撃が見えている。
アオ爺は俺との間合いを取り直す。
「それがお前の神器の力か。どんな能力なんじゃ?」
「この神器の能力は『言葉』だ。イメージしたものを表すことができる」
「言葉を司る神器……聞いたことないのー」
アオ爺は神器のことを詳しく知ってるようだ。なら隠すこともない。俺は左手を前につき出す。
「この神器の名は『プラチナリング』。13番目の神器だ。そしてこの神器を生み出したのが神ガネルドだ。それを俺は受け取った」
「13……新しい神器じゃと!」
この反応。アオ爺はこの世界に存在する神器の数を把握していたようだ。それでないとこれが新たな神器だとはわからない。ホントこの人は物知りだ。なら、
「もしかしてアオ爺、他の神器の能力とか知ってるのか?」
この質問に答えてくれたらかなり楽に旅ができる。この旅は魔王を倒すということが目的だ。魔王は神器所持者。この情報を得ることができたら、作戦を練ることができる。それに、この旅は決して魔王だけ倒せばいいだけじゃない。この世界には俺と魔王を退けても11人もの神器所持者がいる。そしてその中の誰かと戦うことになるかもしれない。だからこの情報はとても重要だ。
だが……
「それは知らない」
俺の一番欲しかった答えは帰ってこなかった。別にあまり期待もしていなかった。神器というものは所持者を選ぶ。だから能力が判明していない奴もいるだろう。
「もうこの話はやめにして、早く戦いを続けよう」
俺は返事の代わりに戦闘態勢を取る。アオ爺は構えという構えは取らずどこからでもかかってこいとリラックスした構えでいる。なら……
俺はアオ爺の背後に目線をやる。
「《高速移動》」
俺は一瞬でアオ爺の背後に回り込む。そして俺は模擬剣を振り下ろす。だが、この攻撃が来ることがわかっていたかのようにアオ爺はこちらを振り返らずに前に飛んで攻撃範囲から外れた。
「なんでだ!?どうして!?」
俺は戸惑いを隠せない。人間ならこのスピードで動くものを認識できない。アオ爺でも流石に目視するのは無理だろう。だが、アオ爺は躱している。
「お前の能力、というよりかは、お前に弱点がある」
「俺に弱点……それって何なんだ?」
「それは目線だ。多分今の技を思い浮かべるとき俺の背後を見ただろ?そこが弱点じゃ」
俺の目線、確かにアオ爺の背後に目線を向けていた。そうしないと自分がその場所にいるっていうイメージができないからだ。それが俺の弱点ということは、もしかして……
「もしかして、アオ爺は俺の目線の先を呼んでこの攻撃を読んだってことか?」
「まぁ、そういうことになるな。だけど、お前の弱点はそれだけじゃない。例えば今さっきの剣の振り方だ」
俺ってそんなにも弱点合っちゃうの!?めっちゃ悲しいです。
「ハクヤは確か剣を振り下ろして、一撃で仕留めようとしたじゃろ?」
「あぁ、絶対にその一撃で仕留めれたと思ったからな」
「そこが間違えなんじゃ。一撃で仕留められるなんて考えるな。今さっきの攻撃だって、連続して攻撃をしていたらワシは剣に触れていたかもしれないじゃろ」
本当だ。俺はこの能力でチャンスを作り、そこを一撃で仕留めていた。だが、そんなものは通用しない。俺は能力に頼りすぎていた。これが俺の弱点だ。
「そして最後に弱点と言えるのかわからんが、お前は今、なんの為に戦ってるんじゃ?」
「神からの指名を果たすために……」
「そう!そこを忘れちゃいかん。自分はなんの為に戦い、なんの為にそこにいるのか忘れちゃいかん。これが、最後の教えじゃ」
アオ爺の教えはいつも的確だった。俺の動作、言葉、態度なと、しっかり見極めて、俺の欠点を見つけてくれる。流石、俺の師匠だ。だがら俺は今この人に勝っておきたい。
「アオ爺、始めようぜ。俺に最後の稽古をつけてくれ!」
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