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015 : 手紙

 俺は母さんにバレないように家に帰って旅の準備を始める。大抵のものは作り出されるからな、準備するものっていってもないな。

 俺はひとまず部屋に戻る。


 旅をするならそれなりの格好が必要だよな。俺は自分なりに旅の服装のイメージをする。この村から出たことはないが、この村を訪れた旅人はいる。その服を参考にしてイメージをふくらませる。黒のズボンに黒のブーツ、青のインナー、そして白のコートを思い浮かべる。


 「《服装変化トランスフォーム》」


 俺の体の周りに光の粒子が集まり、俺の服を変えていく。そして……


 「まぁ、こんな感じか」


 俺はひとまず格好を整えることができた。

 この神器の用途は凄いな。俺は改めて感心する。この能力があれば旅には困らなそうだな。後は……

 俺は紙とペンを用意する。そう手紙を書くのだ。

 俺は黒のインクで紙に文字を綴る。

 内容はこうだ。


 父さん母さんへ

 父さん母さん、俺を15年間大事に育ててくれてありがとう。そしてごめんなさい。俺はこの家から出ていきます。いつ戻って来るかわからないけど、全部終わらせるから、それまで俺を探さないでください。俺は絶対に生きて故郷に帰ってきます。父さん母さん大好きです。

 ハクヤより


 俺は机の上に手紙を置いて部屋を見回す。この部屋、この家とはお別れだ。いつ戻ってきてももう、俺の部屋は変わってしまう。だからこれが最後の見納めだ。俺は最後にゆっくりと部屋を見回す。

 じゃ、行きますか。


 「《飛行フライ》」


 俺は窓から飛び立つ。そして


 「《透明化ステルス》」


 俺は透明になってバレないように空を飛ぶ。バレたら大騒ぎだ。普通に道で透明になってもいいが、通行人と肩が当たったら怪しまれてしまう。だから空を通っていく。

 俺はこの村で最後に行く場所を決めていた。俺の思い出、俺と師匠の場所。

 俺はその場所へ……


 俺は馴染みの場所につく。今まで稽古をつけてもらった場所だ。そこは村長の、アオ爺の家の前にある稽古場だ。

俺はアオ爺に合うためにこの場所に来た。

 俺はいつも通り模擬剣を手に持ち稽古場の真ん中に立って目を瞑る。俺は15年間を思い返す。生まれてからずっとアイナと一緒でずっとずっと一緒で、何をするのも一緒だった。この稽古場に来るときもアイナはついてきてたな。俺はここで稽古を受けるときは大抵、ボロボロになって、毎日アイナが俺を家まで送ってくれていた。そのときは言えなかったが、今、とても言いたい、ありがとう、と……

 俺はこの場所に初めて来たのは10歳の頃だ。その時から、毎日通っていた。通い始めた頃アオ爺にきいたことがある。


 『ねぇ、アオ爺。どうやったらアオ爺みたいに強くなれるの?』

 『それは、毎日毎日稽古をすることじゃ。力は自然とついてくる。そして、一番してはいけないのは、自分の力を過信しすぎないことじゃ。自分のもとからある力も大事じゃ。だが、その力を失ったら、その後からは自分の培ってきた力だけが本当の力だ。それを忘れるなよ』


 俺はこの言葉を今も信じ続けている。俺はまだ未熟者だが、これから強くなってみせる。アオ爺のように……


 「ハクヤ!」


 俺は声がした方へ振り向く。そこには俺の師であるアオ爺がいた。アオ爺は俺の身体の一部分一部分をゆっくりと見回す。そしてその眼差しは俺の左手の小指に集中する。多分俺の神器に気づいたのだろう。だが、別にいい。アオ爺ならわかってくれる。


 「ハクヤ、それは神器なんだろう?」

 「あぁ、これはプラチナリング。俺の神器だ」


 俺はこれを言ったらアオ爺は流石に驚くと思っていた。だが、彼は何一つ変わらない表情でさっきと変わらず平然として話してくる。


 「ハクヤ。お前に久しぶりにワシの昔話をしてやろう」


 俺はコクリと頷く。これまで沢山のアオ爺の昔話を聞いてきた。だが、今回の話はとても大事な話のようだ。気を引き締めて聞こう。


 「これは50年前、ワシはある上位種のドラゴンを倒しに行ったことがあった。ワシは何十人かの軍隊を連れてその上位種のドラゴンがいるという噂があった、ハイード火山に向かった。火山の途中の山道に中位種や上位種でも下位の方の魔物が沢山いたが、ワシの軍は精鋭を揃えていたのでなんとか倒すことができた。このままドラゴンもという勢いでワシらは山頂に向かった。だが、ドラゴンは強すぎた。ワシの軍の兵は、恐れをなして逃げ帰っていった。このままワシも一緒に逃げたら皆死んでしまう。だからワシは戦った。そして死闘の末、勝つことができた。ここまでが、皆が知っている武勇伝じゃ。だが、この話には続きがある」

 「えっ!?続きがあったのか!?」

 「まぁな、ここからさきは誰にも語ったことがない」


 凄く俺は興奮している。この武勇伝の話を初めてしてもらったときこんな興奮にかられた。だが、今はその倍くらい興奮している。俺は表情が隠せてないのを自分でもわかるくらい出して物語をきく。その顔を見てアオ爺は少し表情を和らげる。


 「ワシはドラゴンを倒した後下山しようと、ワシは来た道を戻ろうとしていた。だが、それを阻むかのように俺の背後からさっきを感じた。ワシは後ろを振り返ると、火山口から人形のスケルトンが現れた。ワシは沢山のスケルトンと戦ったことがあったが、あのスケルトンは別格だった。上位種どころじゃない。あれは魔族種レベルだ。そのスケルトンは容赦なくワシに襲いかかって来た。ワシはスケルトンの振るってきた剣を自分の剣で防ごうとした。だが、剣を防ぐことはできず、ワシの剣は折れてしまった。とても軽い一撃だったのにワシの剣は受け止めきれなかった。ワシは死を覚悟した。もともとドラゴンとの戦いで体力は底に尽きていた。だから地面に仰向けで倒れた。そして目を瞑り、死を受け入れる。疲れで意識が朦朧としている今なら楽に死ねる。……だが、いつになっても痛みが来ることはなかった。重い瞼を頑張って開き、スケルトンがいたところを見ると、そこには一人の青年がいた。多分、そいつがワシを助けてくれたのだろう。そしてワシは意識を失った。意識を取り戻したときにはもう王城にいて何があったか確かめることはできなかった」

 「なんでそんなことを俺に語ったんだ?」

 「ワシはそいつがお前と同じ神器所持者だと考えたのじゃ。お前も同じ神器所持者じゃ。その武器はどれほど強力なのかは知らないが、それも神器じゃ。力が強大なのは確かだ。それを知っておけ」


 魔族種。この世界には大きく4つの種族がある。人類種、獣人種、魚人種、魔族種だ。その中でも1番戦闘能力があるのが魔族種で、魔法を使うことができる唯一の種族だ(俺を含まない)。それに匹敵するくらいの力を持った敵を倒すなんてホント神器使いくらいだけだ。魔族種でもカスの方ならアオ爺でもギリ勝てるレベルだと思う。アオ爺でも勝てなかったほどだから普通くらいの階級の奴くらいの強さだろう。それを倒せる奴はかなりの実力者で、いい神器を持ってる奴くらいだ。俺の神器はかなりいい武器だ。だが、俺はそれに見合う実力がない。だから……


 「アオ爺、俺に最後の稽古をつけてくれ!」

 「いいだろう。だが、稽古じゃなく模擬戦をしよう。ルールは模擬剣を使うことだけ。神器を使ってきても構わない」

 「わかった」


 俺は戦闘態勢に入る。アオ爺に俺はいつでも始められるぜってことを伝えるために。それに応え、アオ爺と模擬剣を取りに行き、俺と5メートル離れたところに立つ。

 アオ爺はポケットからコインを取り出す。


 「このコインが落ちたらスタートじゃ」


 アオ爺は俺にコインを見せる。そのコインは黄金色で、この世界での共通通貨だ。それを指に乗せる。

 いままで、アオ爺と模擬戦をして勝ったことがない。ってか、剣を当てたこともない。俺ははじめから本気で行く。そうしないと負ける。俺は自分を奮い立たせる。アオ爺に勝つために。

まだテスト週間なので更新が遅れるとおもいます。すみません。

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