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014 : 捜索

 俺は朝の気持ちいい朝日で目覚める。

 俺はいつもの自分の部屋のベッドで、いつもの様に目を覚ます。俺は階段を降り、リビングへと向かう。……だがそこにはいつもいるアイナがいなかった。

 俺の両親は農家のため朝がとても早い。俺も手伝うがそれは日中だ。そこで俺の朝食を作ってくれるのがいないということで、毎朝アイナが朝食を作ってくれていた。だが、そこにはアイナはいない。

 俺は思い出す。アイナを死なせてしまったことを……


 俺の当たり前の日常は壊れてしまった。パズルのピースが一欠片なくなってしまった。俺はその隙間を何で埋めればいいのか。

 俺は椅子に座り、窓の外の遠くを眺める。その時


 「ハクヤ!!」


 母さんが俺の姿を見て驚く。何も言わず泣いてしまう。


 「母さん、ごめんなさい……」


 母さんは俺の方へ駆け寄ってくる。そして俺を抱きしめる。俺はその優しさで涙が堪えられなくなる。


 「母さん、ゴメン!ア、アイナを助けられなかった!お、俺は……俺はアイナを……」

 「大丈夫。大丈夫。あれは事故だから。ハクヤは悪くないよ」


 なんて優しいんだ。ありがとう母さん。あれは事故だ。だけど俺にも否が無い訳じゃない。俺はアイナを助けれず、一人でノコノコと帰ってきた。どう考えてもおかしいと周りの人々は思うだろう。ましてやアオ爺の様に力もなく、帝都の学者のような頭もない。どうやっても生き残れるはずがない。皆そう思うだろう。俺の神器のことを言ってみろ、皆から危険な奴と蔑まされるだけだろう。俺の居場所はこの村のどこにもない。俺はこの街には居ちゃ駄目なんだ……


 「母さん。おばさんはどうしてる?やっぱり落ち込んでるの?」

 「アイナちゃんが死んじゃってからおかしくなっちゃって、今は家にずっと引きこもってる」


 流石に落ち込むよな。多分おばさんもアイナが死んだのは俺のせいだと思っているだろう。てか、ずっとって、俺が寝込んでから何日経ったんだ?


 「母さん。俺、何日間目を覚まさなかったの?」

 「えっと、3日くらい」


 3日も!俺のこの神器ってそんなに体力を使うのか。まぁ、使うのが初めてだったからっていうのもあるし、アイナが死んで辛さや、衝撃的な事実を知らされたりしたからかなり疲れがあったのだろう。

 アイナの母さんが気になる。3日も引きこもっていたら多分おかしくなってしまう。アイナが死んだ悲しみ、俺への恨みが殺意へと変わってしまっているかもしれない。だが……


 「俺、おばさんのとこに行く。謝ってくる。真実を伝えにいく」

 「ハクヤ、気をつけて。おばさんは多分あなたに敵意を、持ってるから油断しちゃいけないからね」


 母さんは心配はするものの止はしない。流石俺の自慢の母だ。


 「ありがとう母さん」


 俺は母さんに感謝の気持ちを伝え、玄関を出る。アイナの家は俺の真向かいだ。幸い、お互いの家の間の道には誰もいなかったので、母さん以外の誰にも俺が目覚めたことは気づかれてない。俺は早足でアイナの家に向かう。


 俺は玄関の戸を開く。


 「お邪魔します」


 俺が家に入ろうとすると、奥の扉が開こうとしている。俺は警戒していつでも神器が使えるようにしておく。だが、そんな警戒はいらなかった。


 「ハクヤ君。目が覚めたんだね。良かった……」


 奥から出てきたのはアイナの父さんだった。彼は嬉しそうな顔をしているが悲しさが体から滲み出ている。


 「すみません。アイナを守ることができなくて……」

 「いや、それはもういいんだ。君だけでも帰ってきてくれただけでも嬉しいよ」

 「おじさんはおかしいと思わないんですか?あの獣の群れの中から俺が生き延びたこと」

 「思うさ。だけどそんなこと考えたって過ぎてしまった時間、死んでしまったアイナはもう戻らないんだ」


 おじさんはこんな辛い現実をこんなにも早く受け入れられるなんて。ただ一人の娘が死んでしまったのに、なんて心の強い人なんだ。俺は尊敬する。俺もこんなお父さんになりたいと憧れる。


 「母さんなら階段を登って右の部屋にいるよ」


 そう言いおじさんはさっきまでいた奥の部屋に戻ろうとする。


 「待ってください。おじさんも一緒に聞いてくれませんか。真実を聞いてほしいんです」


 おじさんはコクンと頷いて俺を2階へと誘導してくれる。

 階段を登って右の部屋。その部屋の前に俺は立っている。隣にはおじさんもいる。部屋の中からはなんの音もしない。本当にこの中にいるのか?

 俺は恐る恐る扉を開ける。中は普通の部屋だがその部屋の中の人だけは普通じゃなかった。アイナの母さんか?と疑ってしまうほど別人になっていた。優しそうな顔は目にクマができ、やせ細って怖い表情になっていて、上を向いて目を瞑って拝んでいて、祈りを捧げているように見える。


 「久しぶりですねおばさん」


 彼女は俺の言葉に気づき、声が聞こえた方に振り向く。そして俺の顔を見て俺の目を見てくる。


 「あら、久しぶりねぇ〜。……あれ、ハクヤ君アイナはどこ?」


 おばさんは悲しさのあまりアイナがいなくなってしまったことを忘れようとしていたようだ。このままそっとしていて適当な嘘を付けば収まる気もするが、決してそんなことをするつもりは無い。そんな嘘をついてしまったら、アイナの母さんは真実を知らないまま死んでしまうかもしれない。そんなの絶対にダメだ。

 俺は逆に怒りを買う行動に出る。


 「おばさん。アイナは死んだんだ」

 「嘘つかないでよ。もうハクヤ君、そんな縁起でもないこと言っちゃいけません」

 「本当なんだ」


 彼女は慌てたようにソワソワとし始める。


 「あなた、本当なの?」

 「あぁ、アイナは死んだ」


 彼女は狂ったように叫ぶ、泣く、喚く、悲しむ、絶望する。そして固まる。

 俺はなんてことをしてしまったんだ。一人の女の子の命を助けれず、挙句は人の人生を狂わせた。自分はなんてクソなんだ。俺は自分を罵倒したい。だが、今、俺がすることはそんなことじゃない。俺がすることは真実を伝えることだけだ。


 「今からあの時何があったか話します。おばさんは聞こえてるかわからないけど、おじさんが聞いて、後で伝えておいてください」

 「あぁ、わかったよ」


 俺はおばさんが反応しないことから聞こえてないと察する。まぁ、途中で割ってこられないからこっちの方が楽で俺的には嬉しい。


 「俺はアイナと結婚の約束をしました」

 「え!?そうなのか?」


 まぁ、俺らのこのことは誰にも言えずに終わってしまったので知らないのも当然だが、俺の想像を超えるくらい驚いている。


 「はい。で、俺達はそのことを伝えるために家に帰って、そこからは知っての通り襲撃に会いました。俺らは必死に逃げました。だか、そこでアイナはコケてしまったのです。俺はアイナのもとへ駆け寄りました。俺はアイナを抱えて一緒に逃げようとしました。だけど獣はもうすぐそこでした。俺は獣たちが俺らを食おうとする中、抵抗しました。だが、そんな中、アイナは悲鳴ひとつ挙げずにいなくなりました。俺も死ぬのか、と思ったとき俺はある能力を授かりました」

 「能力?」


 まあ、驚くのが普通か。この能力について言っていいのか迷ったが、包み隠さず言うことにした。


 「はい。その能力で敵を全部倒して俺は今ここにいるのです」


 信じてもらえるのか?いや、別に信じて貰えなくたっていい。このことを聞いて貰えただけで十二分だ。


 「では、俺は伝えることは伝えたのでこれで失礼します」


 俺はアイナの両親がいるこの部屋から出ようとする。この部屋にはいる意味がない。


 「ハクヤ君!どこに行くんだい?」

 「この村から出ていきます。俺はこの村にいちゃいけないので……あっ、後このことは母さんには内緒でお願いします」


 おじさんは「わかった」と言って俺を軽く抱きしめてくれた。おじさんはいつも優しくしてくれた。俺はこの村での思い出が蘇ってきて泣きそうになる。だが、堪える。そして部屋を出ようと後ろを向く。


 「今までありがとうございました。お元気で……」

 「君にクロルシュ様の加護があらんことを」


 そんな言葉を背中で聞きながら、俺はこの部屋を出た。

すみません。テスト週間に入ったので更新が不定期になりそうです。

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