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012 : 思考

 俺は獣と目を離さない。これが真剣勝負だからだ。これは殺し合い。手を抜くのは相手に失礼だ。風が吹く。壊れた家の木屑、木の葉、砂。そんなものたちが俺の目に入る。だが、俺は決して目を離さない。


 獣は俺のほうが強いことを悟っている。いや、違う見せられたのだ。俺も自分の能力ちからが強いことはわかっている。だが俺にこの能力がなかったら、俺は絶対に殺される。一瞬だろう。だが、俺にはこの神器がある。俺は絶対に負けない。


 獣はピクリとも動かない。俺のほうが軽く体を揺らすと警戒して体を強張らせる。

 相手が行かないなら、俺が……


 「《ソード》」


 俺が剣を創る中、獣は大きく後退し、俺との距離を取った。獣は俺との戦いの中で学んでいた。俺の相手との距離を一瞬で縮める高速移動には欠点がある。それはその移動距離だ。高速移動がどのくらい出来るかまだ俺にもわからない。だが、その距離は長くないとは思っている。イメージを何度も繰り返してわかったことなんだが、半径50メートルくらいしか想像できないのだ。それが今の俺の限界か、この神器の限界かはわからないが、今の俺には50メートルが限界だ。


 獣は俺の移動範囲から逃げ切ることはできたがそれ以降遠ざかろうとはしない。それは俺がこの高速移動を繰り返したらすぐに追いつかれるからだ。だが、繰り返すことは出来るが、連発はできないことは気づいた。この言葉の能力には創作型と強化型がある。創作型と創作型の連発や、創作型と強化型の連発は可能だが、強化型と強化型はできないことに気づいた。イメージができなかったのだ。でも連発はできないといっても4,5秒もしたら使える。まぁ、こんな僅かな時間だったら連発と言ってもいいだろうが、殺し合いにはこの僅かな時間が命取りになる。


 それを踏まえて作戦を考える。俺は今、獣との距離は結構離れているし、相手も俺を警戒して自分からは攻撃してこないようなので集中して考えられる。


 ············


 静寂の中、ひとつの考えが俺の脳裏に浮かぶ。

 俺は一歩ずつゆっくりとゆっくりと歩みを進めて近づいていく。


 「お前に最後に言わせてもらう。まぁ、お前には何を言っているかわからないと思うが、言わせてもらう」


 俺は剣を持っている逆の手、左手を、体の後ろにやり、歩みを進めていく。だが獣は俺に合わせて距離を取るから縮まらない。……だがそれでいい。


 「この世には《毒針ポイズンニードル》がある。それは強力なものであればあるほど強さを増していく。その針は人に刺さることでどんなに強い人であろうが殺すことができる。この毒針っていうのが自分の能力だ。俺で言うとこの神器だ。そしてお前で言うその学習能力だ。獣としてはかなり知性もあり頭もキレる。だが、その針は俺にはまだ効かない。それがお前の弱さだ。まだお前は甘いんだ!そして俺の針はお前に効く。これが差だ!」


 俺は長々と獣には分かりはしないことを言い続けた。俺の言いたいことを言えたし、作戦も第一段階をクリアすることができた。後は……


 「《高速移動ゴッドスピード》」


 俺は獣との距離を一気に縮める。

 この時を待ってた、というように目をギロリとさせて睨み襲いかかって来る。獣は俺の目の前でジャンプして襲いかかってくる。俺はそこを狙い剣を振るう。だが、それを獣は歯で噛み付いて受け止める。流石だ、やっぱり学習能力はただ者じゃねぇ。だが……。獣は後ろ足で、俺を蹴ろうとするため、足を振りかぶる。このスキだ!俺は左手に持っていたものを獣に投げつける。すると獣は歯の力を弱め、グダっとし、泡を吹いて動かなくなった。死んだのだ。


 俺は何を投げつけたのか。それは毒針だ。普通に創ったら多分バレていた。小さな声で言ったところで、相手は獣だ。何か言ってるな、と察することができたと思う。だから俺はあんな長い文の中に毒針という言葉を入れたのだ。獣にとっては知らない言語で、長々と話されても退屈なだけだ。それにあんな長い言葉が、自分に向けられていたとは思わないし、あんな長い言葉で何か企んでいるようにはみえないということから多分、警戒が緩むだろうと考えた。それは見事的中した。


 俺は倒し終えたことの満足感に浸る。俺は地面に突っ伏す。もう立てない、5匹も獣を、倒し終えたのだ。疲れていて当然だろう。……いや、待てよ。確か敵は6匹だったような気がする。もし6匹だったら村人たちが危ない。……だが、もう俺には無理だ。もう立てない。多分、疲れもあるが、神器の後遺症だと推測する。なぜなら、もの凄いボーっとするのだ。多分イメージのしすぎが原因だろう。頭が空っぽになっていく。やべー、もう無理だ……

 そろそろ一章後半に差し掛かります

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