011 : 戦闘
第7話の敵の数を6に変えさせてもらいました。流石に敵が多すぎて……すみません。
はっ!俺は意識を取り戻す。すると目の前に見えたものは恐怖の光景だった。俺を食う気満々で襲いかかって来る野獣がいる。こいつらがアイナを……許さねぇー!
「《飛行》」
俺はそう唱える。そして思いっきりジャンプする。すると空を飛ぶ。逃げ出すことはできたが……どうやって止まんのーー!!そういえばイメージってガネルドが言ってたな。俺は空中で静止する俺の姿を想像する。するとなんとか止まることができた。
イメージこの能力は『言葉』って言ってたけど、そんなことより一番大切なのイメージじゃん。言葉より想像にした方がいいんじゃないのか?俺は空中にいながら一人で納得する。
空からみる景色は壮大だった。今俺がいるのは高度100メートル前後ってところだろう。少し高いな。俺は降りていくイメージをする。そして地上へと近づいていく。そんなとき地上では獣の俺への殺意は違う物へと移っていた。
それは村人達だ。
「もう殺させねぇー!誰も死なせない。《槍》、《肉体強化》」
俺は現れた槍を手に持ち強化された、体で思いっきり槍を投げる。
「オラァァーー!!」
それは獣一体に見事命中し、背中を貫く。流石にあの威力だ。即死だろう。
獣たちは槍が飛んできたほうを振り向く。鋭い眼差しを向けて来る。来いっ、てことか。俺は地上へと降りる。
地上へ降りても魔物はいきなり襲ってきはしなかった。流石に仲間を一人簡単に殺されたんだ。簡単には殺れないってことを勘付いたんだろう。
「グルルルー、ガルルルーー!」
獣たちは俺を威嚇してくる。前までの俺だったら腰が引けていた。だが、今は違う。大切な人が奪われて、俺の愛も奪われたんだ。あんな威嚇なんかに屈しない。逆に俺が屈服させてやる。
「《剣》」
俺は現れた剣を右手で持ちゆっくりと獣に近寄っていく。獣は俺との間合いを縮めないようにと一定の距離を保つために後ずさる。それならと早く走って追いかけるが後ろへ飛び退くようにして間合いを取ってくる
流石に数が多いな、2、3匹ならいけると思うが5匹はキツイ。さっきみたいに空から狙ってもいいか流石にバレている。それだったら……
「《高速移動》」
獣との間合いを一気に詰める獣は何があったか理解が出来ず、戸惑っている。今なら殺れる。俺は獣一体を剣で斬りつける。
「ガァァァーー!!」
俺の強化された肉体はどこまでの力を持つかは知らないが、感覚からしてやったと理解する。血しぶきを上げながら獣は倒れる。返り血が俺の体に降りかかる。白い袴が獣の血で赤く染まっていく。剣についた血を払うために空で剣を振るう。
「お前らは俺の大事な人を殺った。次はお前らが俺に殺られる番だぁ!」
俺の殺意に応え、獣たちも目を本気にし襲いかかって来る。流石に数が多い。
「《飛行》」
2階建ての家の屋根くらいの高さまで浮かぶ。
「《槍それにもう一本槍》」
俺は両手を限界まで振りかぶり、真下の獣に向かって振り下ろす。
バス!
俺の槍を獣はひらりとかわす。流石に一度した攻撃は通じないか。俺は空中にいることにあぐらをかいていてしまっていた。獣は家を這い登り屋根の上から俺に突進してくる。っ!クソ!やべー。俺は防御体制を取り攻撃に対応する。
ドン!
ドガン!ガラガラ!
俺は突進の勢いで軽く飛ばされて、家の中に突っ込む。肉体強化をかけているので激痛ってほどでもなかったが、かなり痛い。
そんな俺に残りの4匹が襲いかかって来る。まず一体が飛びかかってきたが、それは身をよじらせてかわし、そのまま立ち上がる。そして次に2匹一気に噛みつきに来る。やっぱ数が多い減らさないと……
「【ライトニング】」
獣たちの視界が一瞬奪われる。そのスキに俺はジャンプして獣の上に周り込む。そして1匹の獣の頭に剣をぶっ刺す。頭から血を吹き出しそのまま倒れる。
よし、これで3匹。後もう1匹殺っておきたい。
「《剣》、それと《高速移動》」
俺は剣を抜くのは時間がかかると考え、新たに剣を創る。そして今さっき2匹で襲いかかって来たもう一方のやつの背後に周り込む。危険を察知して後ろ蹴りを噛ましてくるが、それをしゃがんで避け、股間を斬りつけ、トドメに腹に剣を思いっきりぶっ刺す。
グチャ
不快な音を立て俺の剣は獣に刺さる。獣は倒れるが意識は微かにある。だがそれも時間の問題だ。
残り2匹になった獣は一旦間合いを取り。俺を伺う。獣たちも悟っているだろう。俺には勝てないことを……獣たちには今、恐怖がある。だが、そろばんそれをも超える憎しみが俺にある。仲間を殺した、この俺に……
どうしてこいつらは馬鹿なんだ。獣とはこういうものなのだろうか。自分のことばかりしか考えられないクソたちなのか。どうして獣たちは気づかない。君たちが持っている感情を今、俺が持っていることに……
俺はゴミを見るような目で奴らを眺める。いや、見下した。俺と同じ気持ちを持っている奴らが腹立たしい。
「《剣》。まずは1匹ずつだ。《壁》」
俺は獣と獣の間に高い壁ができるのをイメージする。するとイメージ通りの壁ができる。高さ10メートル、横にも300メートルと長く、簡単には反対側には来れないようにしてある。この壁は薄いが、かなり硬い。簡単には壊されないだろう。だから、ゆっくり確実に殺らせてもらう。
「《飛行》」
この飛行はただ飛ぶためにあるわけではない。俺は超低空飛行をイメージする。地面との距離わずか 10センチメートル。そして、
「《高速移動》」
俺は獣の後ろに周り込む。獣ももう俺の攻撃のパターンに対応して後ろ蹴りをかましてくる。だが、これはさっきと一緒だ。これで俺がしゃがんで獣に切りかかれば勝ち。……だが、そんなことはしない。これは罠だ。誘っておいて何かを仕掛けてくるはずだ。だから俺はイメージする。
空に飛び上がることを。
俺が空に飛び上がると獣は後ろ足で空を蹴った。そうこの飛行は回避や戦闘の際の移動にも向いている。獣は何故か一回転して蹴ったところ付近に噛みかかっている。これがアイツの作戦か。あのままだと危なかったかもな。
俺は獣の攻撃を上で見終えたあと、急降下をする。地上からは3メートル。この急降下の威力で攻撃力が少し増す。これで一撃だ。
「キャウーー」
剣は獣の背中に突き刺さる。血しぶきが俺の顔面にかかる。こんな臭くて、不味くて苦い血。不快だ。こんな奴らにアイナが、……悔しい。もっと早くこの神器を手に入れられていたら、……悔しい。そして自分に腹が立つ。俺はたった一人の少女を守ることが出来なかった。沢山の村人を救うことはできるのに、何故だ。それが俺の弱さ……なのか……
俺は血にまみれた中で俯く。
自分の情けなさに……
自分の弱さに……
ドカン!ガラガラ、ゴロゴロ
壁は壊された。その時俺は心に誓った。大切な人は死なせしない。俺は強くなる。
俺は現れた獣に鋭い眼差しを送る。俺を強くしてくれる糧となってくれる感謝と、アイナを殺した憎しみを向けて……
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