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001 : 馬鹿

 『転生しきれなかった魔王はこの世界で勇者になっちゃいました』に興味を持って頂き、ありがとうございます。ひとつ連載中ですが、こちらの方も頑張るので、よろしくお願いします。

 俺は魔王だ。

 俺はこの世で一番強くいたい。世界を滅亡させたい。人々の苦しむ顔がみたいという願望を持つのが普通の魔王だ。だけど俺は違う。

 俺は『魔王なんて辞めて、のどかな村で村人Aとして暮らしたい』というのが、願望だ。

 そんな俺の世界にやっと勇者が現れた。よっしゃァァ!

あともう少しで、もう少しで魔王を辞めることができる。もし相手(勇者)が弱かろうがわざと負けてやる。


 俺はもうこの世界に生まれて500年になる。普通この世界の魔王は1500年程度は生きるらしい。俺は300歳くらいに結婚し、子供もできた。この世に後悔することは孫が見れなかったことくらいだ。だが大丈夫だ。どうせ死んだら忘れるんだから。


 勇者がこの世界に現れて3年。俺の歳からいくとあっという間のはずなのに、この3年間はとても長かった。これがあれか、待っている時間はとても長く感じるという奴か。

 そしてやっと勇者は魔王城に辿り着いた。俺はこの日のために城のトラップを簡単にしていた。なぜなら、早く着いて欲しいからに決まっているじゃないか。


 俺は勇者が魔王城を攻略する間にカッコイイセリフを考えておく。だって、考えて置かないと、魔王らしい死亡フラグ宣言が出来ないからな。


 『よく来た勇者よ。私は魔王、お前がここに来るのを楽しみにしてたよ』

 →なんかありきたり過ぎる。


 『ありがとう勇者。よく来てくれた。待ちわびていたぞ』

 →なんか家に遊びに来たって感じがしないか。


 『なんで来てんだよ。待ちわびてなんかないんだぞ』

 →ツンデレじゃん。


 俺は頭をフル回転させてひとつの結論を出す。それは『何ごとにも普通が一番』だということだ。よしセリフは決まったぞ、あとは勇者が来るのを待つだけだ。……だが一向に来ない。なぜだ?魔法を使い、城の中を覗いてみると、勇者は……


 「グーー、グーーzzz」


 寝ていた。クソーなんで寝てんだよ。ふと、外を見てみると、真っ暗になっていた。いつも暗い魔王の大陸だが、夜になると真っ暗だった。もう夜だったのか、ならしょうがない。俺も寝るか。俺はでっかいベットにでっかい体を委ねる。そうだ、人々の間では枕の下に願い事を書いておいておくと願いが叶うってきいたな。俺はそれを試して、紙に願い事を書いて寝る。願い事はもちろん『村人に生まれ変わりたい』だ。


     □□□□□     


 「起きなさい魔王よ」


 俺はその綺麗な声によって起きる。そして立ち上がって辺りを見回す。


 「ここは……、どこなんだ」

 「ここかい?ここは、生と死の交点(トーデストリープ)。そして私はこの世界の神。君は私によって選ばれたんだ」


 ここには誰もいなかった。白い地面。周りを見ても白く、空も白かった。


 「生と死って、俺はまだ勇者と戦ってないんだが、どうして俺は死んでいるんだ」

 「それはね、君が バカ だからだよ。だって君、寝ている間に殺されるなんて笑いものだよ」


 綺麗な声の人が、綺麗な声で俺をけなしてくる。クソッ、なんて奴だ。流石に言い過ぎじゃないか。

 それでも、寝ている間に殺されたって、綺麗な声の人が言うとおり俺はバカだ。どうして俺は勇者の殺気に気付かなかったんだ?……そうだ!俺、昨日は勇者が来るというのに興奮して寝ていなかったんだった。どうせ勇者はコイツバカじゃねーの、って思いながら俺を殺したんだろうなー。……俺って超ダサいじゃん。俺は恥ずかしさで死にそうになる。だけど大丈夫だ。もう俺はあの世界の魔王ではないんだから。


 「なぁ、早く俺を生まれ変わらせてくれよ。できれば小さな村の農民とかがいいな。……あっ!木こりとかもいいなー」


 綺麗な声の人は俺の願望をきいて、呆れた様な声で俺をまたけなしてくる。


 「本当に君はバカだね。大バカ者だね。なんで私が君の言う事をきかなくちゃいけないんだ。そんなの君には得でも、私には得がないじゃないか」


 バカバカ言われてムカつくが、堪える。コイツ本当に神なんだよな?俺は段々と不安になってくる。だが、俺は信じることにする。そっちの方が楽しい未来があるからな。


 「どうしたら、俺の村人や、木こりになりたいという願いを叶えてくれるんだ?」

 「そうだねー。……こんなのはどうかな?君は魔王という職業に不満を持っているんだよね」

 「そうだけど、それがどうかしたのか?』


 神は少し悪そうな笑い方をする。コイツ、俺よりも魔王らしいじゃないか。


 「君には小さな村の村人として生まれ変わらせてあげよう。だが、それには3つ条件がある」

 「条件?それってどんなことなんだ?」

 「1、君には15歳の誕生日を迎えた瞬間、魔王だった記憶を思い出させる。2、その時一緒に君が持っていた能力も使えるようにする。3、君が生まれ変わった世界で死んだら、また魔王の人生を送ってもらう。君はこの条件下でも村人に生まれ変わりたいか?」


 そうだなー。1は別に記憶が戻ったとしても魔王を辞めれるのだったら別に良い。2も、能力が使えたとしても別に使わなければいい。だが3はそうにはいかない。なぜなら……


 「寿命で死んでも魔王の人生に戻されるのか?」

 「そういうことだね。別にこの条件が嫌だったら、すぐにでも魔王に」

 「わかった、わかったから、それだけはやめてくれ」


 神はとても嬉しそうな笑い方をする。なんて悪劣非道な奴なんだ。魔王でもこんなに悪いことはしなかったぞ。まぁ、そんなことしたくなかったからな。でも流石に寿命で死んでも魔王に戻されるなんて、人間の寿命って確か100年もなかった様な。なんて人間は貧弱なんだ。でも、また魔王になるよりかは、人間になって魔王になった方がマシだ。


 「なぁ、早く生まれ変わらせてくれないか」

 「いいよ。生まれ変わらすことなんて、いつでもできるから、今からが良ければ……」

 「今すぐ、今すぐで頼む」

 「わかった、じゃあ目を瞑って、心の中を空っぽにして静かにするんだ」


 俺は言われたとおりにする。心の中を空っぽに、無心に、無心に、無心……


 「…………」


 すると、目を瞑っているのに、目の前が明るくなっていく。徐々に徐々に自分の記憶が消えていく。そして意識が遠のいていく。


 「じゃあ、良い旅を」


 この声誰の声だっけ?もう俺は何もかもを忘れていた。

 そして俺の目の前の光が消えていく。そして消えた瞬間、俺は……


 

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