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1話 葉桜 骨牌

この作品は行き当たりばったりでは無くキチンと書こうと思って始めました。


投稿ペースは遅いと思いますが、一応完結までのビジョンは有るので途中で終わることは無いと思います。


週一投稿くらい頑張ります。

されど彼は『青春』を否定する。




人に心を開こうとしないのはなぜ?

手を離されるのが怖いから。


先に手を離したのは自分なのだと…。


自分を偽り人並を演じ続けるのはなぜ?

自分の中身を見られるのが怖いから。


自分自身から目をそらすために…。


こうやって仮面を被り壁を作るのはなぜ?

同じ過ちを犯さないように。


自分はその他大勢なのだと思いたいのだ…。



『なぜ?』


《心が揺れるのがどうしょうもなく怖くて仕方ないから》



☆★☆★


科学が進歩しネットサーバーが世界中…いや、生活の一部として街中はもちろん部屋の中も学校も道路も何もかも全てに共通ネットが存在するこの時代。


およそ半世紀以上前に開発されたハードウェア、コンタクトレンズとアクセサリーに纏められた完全個人型の電子機器により、看板や標識などのものは無くなり、全て半透明のウィンドウが空中に浮かび、至る所に擬似人格をもったAIが存在している。


そしてその進歩に伴い、学校と言うものや義務教育はシステムとして存在するものの、昔とは大きく変わり黒板というものも無く、このネット社会に適応した形に様変わりしている。


また、何よりの進歩といえばやはりvirtual空間にもう一人の自分(アバター)を用いて直接入り込む技術であろう。


この技術により共通ネットのサーバーにインすることでネットショッピングなども実際に見て買うことができ、施設データやファイルをインストールすることにより、自分だけのサーバーや家族サーバーなどで気軽にレジャーを楽しんだり、現実世界ともう一つのネット世界の部屋を飾りつけたりすることが可能になっている。


そしてこの技術による何よりの進歩といえばゲームだろう。

そう、岩いるVRMMORPG ヴァーチャルリアリティ・マッシビリィ・マルチプライヤー・オンライン・ロールプレイングゲームという奴である。

もちろん未だに2D画面のゲームアプリケーションも存在するのだが、自分のアバターを駆使して実際に体を動かし遊ぶゲームは瞬く間に人々の心を奪っていった。


☆★☆★


ピピピピピピピ…。


起床時間を知らせるアラームむに急かされ目を開ける。

視界の中では暴力的なまでのモフモフした尻尾。

愛くるしい目。

プリティなほっぺた。


極限まで彼好みにデフォルメされたリスのアバターがセコセコと動いて開かれっぱなしのウィンドウを閉じたりごちゃごちゃしたデスクトップを整理している。


「あ"ぁ〜疲れた。眠い。」


起き抜けの一声目でコレかよw

と思う人もいるかもしれないが仕方のないことだろう。


彼は学生だがサーバー省の特務員であり、昨日は夜遅くまで、と言うか今日のついさっきまで学校からの依頼でサーバーの不具合の調整と違法アクセスの撃退に追われていたのだから。


昨日は、作業が終わった途端デスクトップの整理等もせずに寝落ちしてしまったため、さっきの現状である。


サーバー省の特務員というのは、ネット犯罪を取り締まる警察等ではないものの、能力を認められ、サーバーにおいて警察と同じような権限を持ち、学校などの団体から依頼を受ける代わりにそのサーバー等の国家機密など以外にアクセスする権利を持つもののことである。

つまり働いてさえいれば合法的にハッキングしたりできるのである。


ざっくり一言で言うなら、国公認の探偵みたいなものだ。



眠いと思っていてもソロソロ学校の時間だ、怠い体を起こしアバターに命令して部屋の窓とカーテンを開けて光を取り込む。


窓から見える光景には学校の校門をくぐる学生の姿がかなりの数見える。


「動きたくないな、今日はアバターで良いか。」


ぼそりと誰に言うでもなく呟くと彼はまた自分のベットに体を鎮める。


別にまた寝たわけではない。


「コネクト」


一瞬落ちた意識が戻ると目の前にはベットにねむる自分の姿。

なんということはない、彼はリスのアバターを使って現実ネット(複数のカメラなどの映像を元に現実世界とオンラインで同期している共通ネットのサーバー)にダイブしただけだ。


「ちょっと早いけど行くか」


ネット技術の劇的な発展に伴い改変された法律では、義務教育において最低週1回以上生身の体で登校すれば、それ以外はアバターで登校しても良いことになっている。


この週1回というのは、偶には体を動かせとかの意味もあるが、どちらかと言うと管理責任がある国の安否確認の意味合いが強いだろう。


「学校サーバーにアクセス開始、バックドアからメールボックスに侵入、擬似個人領域の作成……、ブツブツブツブツ…。」


彼は権限を無駄遣いして、学校サーバーにハッキングをかけると自分のアバターをメールデータとして学校に送信した。


数百メートルの距離を電脳世界の中を歩いて行くのと頭を使いハッキングして自分を送信するのは、どっちが手間かなど彼の前にはささいなことである。



学校の昇降口付近に設置してある電子ポストから飛び出ると軽い騒めきが起こる。


それはそうだろう、ポストから飛び出したと言うだけではなく、彼は色々な意味で学校では有名人なのだ。



アバター名【VAINヴェイン


アバター名とは文字どうりアバターとしての名前もう一つの名前の事である。

共通ネットにおけるアバター名は一度決めると変えることが出来ず本当の意味でもう一つの名前の役割であり、基本的に本名をそのまま使う人や決めかねて空白のままの人が多くを占める。

実際に学校に来ているアバターで本名が7割空白が3割、ほぼ0に近い数が心疼く名前である。

アバター名を本命にする理由としての多くが、一時の気の迷いで付けた厨二ネームが恥ずかしすぎで悶える大人が続出した事が大きな原因だろう。


閑話休題(それはともかく)


空虚(ヴェイン)というアバター名の彼は名前が珍しいのも有るが、何よりの有名なのはそのアバターである。


アバターは割と自由度が高く、購入したパーツ、作ったパーツをカスタムして色々な姿を取ることができる。


現に彼の周りにも耳や尻尾が生えたり体の一部が機械のような『人』が沢山いるのだが、何が有名のか。


そう彼のアバターは『動物』なのだ。


アバターを作りカスタムすることは別に違法ではなくむしろ推奨されているし、世界的に見て人以外のアバターも少なくはないのだが、そもそもの規格がもう一人の自分、現実に合わせた形であり、あくまでモデルは自分のコピーである。


つまり動物型のアバターは、自分のコピーモデルを使用できず、自分のアバターであるからもちろん他人の動物アバターのデータのコピーは使えない、核になる部分は自分に適応したデータが必要になる。

よって外装などのパーツだけでなく中身のシステムやプログラムの構築、そして大まかなサイズや形が違うために、人形用に企画されているネットサーバーのアバターデータに接続する技術が必要になる。


つまりざっくり説明すると、

自身の工房でゼロから電子機械、ハードウェアを作る(アバターの外殻を作る)。


このままでは使えない、外側だけで画面に何も映らず文字どうりただの鉄の塊だから中身が必要。そして自作の機械であるから、適応するソフトも無いので。起動して動くように中身、ソフトウェアを作る(アバターの中身システムプログラムを作る)。


コレだけだと動くだけでネットに接続したりできないので、飛んでいる電波やネットサーバに適応できるように規格を合わせて調整する(ネットサーバのアバターデータに接続する)。


ということだ。



このことを踏まえて見ると、プリティなリスのアバターの彼はそれを実行する技術を持っている事になる。


極限までま情報化されたこの時代は昔と比べると個人レベルで扱える情報処理技術者は高くなっているものの、ゼロから全てを作り上げるような技術力は少なくとも一般人、学生レベルで使える技術では無い。


だがコレも有名な理由の一つでありすごいことであるのだが何よりの理由は他にある。

そもそもこの学園は小中高一環の名門私立であり、人外のアバターを持っている人はこの学校に3人も居るので、それだけでそこまで目立つことはあまり無いだろう。



じゃあなぜ、彼が現れただけでざわめき視線が集まるのか。


それは……。


「キャ〜‼︎もふ様‼︎」

「きゃわいい。今日も今日とてもふもふもこもこだよぉ!」

「わっ…私の肩に乗ってくださいまし!教室までお連れしますわよ!」

「ちょっ…抜け駆けずるいですよぉ〜‼︎」

「後輩たち!ここは先輩の私がお連れしますわ‼︎」

「先輩だからとか関係無いですぅ。コレは何が何でも譲れません〜」

「ぷりちーちゃまぁ〜。頭の上にどうぞぉ〜」

「私の頭の方が…」

「私の方も乗り心地が良いですわよ!」

「私が…」

「私が…」


可愛さに飢えた女性陣からのコレである。

そして人気は女性陣にとどまらず…。


「おーい!もっさん。こんど練習試合手伝ってくれよ、キーパー怪我しちゃってさ」

「ヴェイン先輩‼︎こんど指導宜しくお願いします‼︎」

「虹色ぉ〜。この前言ってたことどうなった?」

「達人!俺んとこのコーチが頼みがあるって…」

「やっぱり良い腕だな。本当にクラブに入らね?」


幾多の助っ人の依頼や部活の勧誘である。


彼の人気はアバターの可愛さだけでなく、すべて"人並"にできる事から部活の助っ人や手伝いをする事も相まってみんなに慕われる、みんなのリスちゃんてきポジションに収まっているのである。


「うわぁ。来るのちょっと早かったかなぁ。」


久しぶりのアバター姿の登校で気が抜けていた自分をぶん殴りたくなる気持ちが湧いてきたとしても、もう遅い。


飢えた獣のような目の女子達とちょっとむさ苦しいスポーツマンの目を見てちょっとゾワッとする。


「チッ…いくか。」


軽く舌打ちをすると、もともと小さい体を前かがみに重心を落とすと一気に集団に突っ込む。

学校共通のデバイスに触れればこっちの勝ち。

捕まれば負けである。


「キャァ〜」


黄色い声援と共に飛びかかってくる女子達を飛び、くぐり、壁を蹴り、時にはフェイクのアバターを出し、立体的に動き回り避けていく。


「キャァ、もふ様がぁ♡」


最後の一人の女子生徒の伸ばされた手を足場にして駆け上がり、肩を蹴って今度は男子の山に突入する。


踏み台にしだ女の子はなんか…うん。幸せそうだ。


「あぁ〜もう。めんどくさい。自分で行けるからダイジョーブでーす。そして部活とかの依頼はメールでしか受け付けないって‼︎」


あとは一息にポンポンと男子の頭を蹴って進みながらみんなに叫ぶ。


ならば何故助っ人などをするのか、アバターを変えれば良いじゃ無いかと思うだろう。

尤もだ。

だが違うのだ、そうしてはいけない。

何故ならそれが彼が被った『仮面』であり演じると決めた自分を偽った姿なのだから。



一瞬手に捕まるがなんとか抜け出すと靴箱を抜けた先、階段の前にある電子掲示板に触れて学校共通デバイスにアクセスする。


学校内のデバイスからデバイスへ。

電脳世界をくぐり抜け自分の教室のメインモニターから教室に飛び出すとクラスメイトの姿が…。


「おはよー。」

「おはよー、今日はリスなんだな。」

「うん。動きたくなかったからね。」


たわいない会話で笑いあう友達。

友達のようなもの。

友達という設定で接している他人。


人と深く関わるのが怖くて、でも一人になりきれずに…。

キャストとして使っている他人。


「おいおい、この学園の『裏』さんがそんなんで大丈夫かよw」

「裏って…。だいたい誰だよそんなこと言い出したの。」


この学校にいる二人の生徒。

表・裏。


表と言われる生徒会長「華絵連(かえむら)優輝(ゆうき)

容姿端麗。眉目秀麗。成績優秀。スポーツ万能。

社交的で人当たりも良い美人生徒会長。

学内に残るすべての記録において常に上位を独占する学園の花。



そして裏と言われる生徒。

彼は全てにおいて人並。

全ての事を人並にできる。

決して表に出ることは無く。

学内に残るすべての記録において全て平均値。

平均値を取ることが出来る。

過去の試験において彼の成績は全て平均点と誤差3点以内。

その意味が持つもの。


異才。鬼才。


これまでの全員の成績、パーソナルデータ、行動パターンから予測される勉強の有無、問題の内容、これらを元に整理され出される恐ろしいほどの情報量。

それを処理し計算、多数の結果やデータを元に一つの結論を予測演算する頭脳。


そうやって導き出した平均点の予想。


そしてその点数ジャストを取る能力。



本当の天才は彼だと言うもの。

まぐれだと言うもの。

本当に平凡だと言うもの。



本当のことはわからない。

彼の表側記録に残るデータは全て平均値。


天才なのか?平凡なのか?




彼の裏側を知るものは居ない。

記録は平均値。

学園として表舞台に上がることは無い。

されど学園内に知らぬものはいないほど。


故に『裏』


もふ様。

便利屋。

尻尾。

七色。

エトセトラ…エトセトラ。


様々な呼び名、二つ名を持つ彼を表す明確な呼び名。


学園の『裏』と言えば誰もが一人の名前を思い浮かべるだろう。




「ん?」


席に座ると自分の端末に1通のメールが届く。


便利屋などと言われている学校の学籍アカウントでは無く、自分個人のメールに。


文章は一言。



------------

葉桜(はざくら) 骨牌(かるた)様へ》



その下に貼り付けられたアプリケーションのURL。



『another life online』

------------


「へぇ。ゲームか、面白そうじゃん。」



そこから彼は『青春』を肯定し始める。

おかしなところや、質問などあれば教えてくれるとありがたいです。


単純な感想も待っています(チラッ

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