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十六話:良一、ぱんつの事でニニナを叱る

 ニニナの普段着が決まった。

 どんな衣服なのか僕の語彙力ではスマートに説明しにくいが、小さな子供に大人用のTシャツを着せた感じにプラス、腰の辺りにゆるく帯を巻くようなスタイルだ。

 服はクリーム色で、帯は茶色。すその所には赤い色の模様が入っている。

 下着は二種類与えた。どちらを穿くかは指定しなかった。ニニナが自分の判断でどちらかを選んだだろう。

 どちらかと言えば今のところはきわどくない方の下着をはいていて欲しい気分だった。

 いや、それはどうでもいい。


 ニニナに貸していた学生服のブレザーを返してもらった時、僕はそのポケットになにか入っていることに気づいた。

 小さな紙包みだ。紙の質や印刷を見るに、日本のものだ。

 何だっただろうと思って開いてみて思い出した。

 僕が憧れの女子に失恋したあの日の前日、と言うか僕がこの世界に来る前日という事だが、兄に頼まれて学校の近くの店で買った物だった。

(兄さん、渡すの忘れていてごめん。)

 少しだけ日本を懐かしむ気持ちが強まった。


 だから、と言うわけではないが、僕とニニナは旅の準備を始めた。

 この村の居心地は悪くないけど、ここに留まっていても何も進展しない。

 僕は、ニニナを連れて、もと居た世界に、日本に帰る方法を探す。

 その旅に出るのだ。

 まずは、ここから北にあるという村を目指す。

 徒歩で十時間以上かかるらしいが、中間地点に無人の小屋があり、そこで休憩が取れるとの事だった。


 村人たちに見送られて、昼前に村を出た。

 夕方ぐらいには中間地点の小屋につくだろうから、そこで一泊する予定だ。

 一泊、か。

 密林と言ってもいいぐらいの森。

 その木々の間を縫う狭い道を歩きながら、ニニナと二人で夜を過ごすと考えると、またピンク色の妄想が広がりだした。

 昨日の夜もエッチなことになりそうな展開だったしなあ。

 その昨日は、『今日は疲れている』と言う理由で遠慮したんだった。

 という事は、今日こそはそういう展開が避けられない?

 基本的にうれしい事のはずだが、微妙に怖い気がするのはなんだろう。僕がヘタレだからだろうか。


 で、五時間以上歩いた。

 十分疲れた。

 気温も高いのに、風があまり吹かないからかなり汗もかいた。

 これなら今日も『疲れてるからエッチな事はまた今度』と言う手を使えるなと思った。

 日が陰り始めて、あたりが暗かったので、あやうく濃い色の丸太で作られている丸太小屋を見落とすところだった。


「いやー疲れた!」

 僕は小屋の一室のベッドに倒れこんだ。

 何かの植物の茎で編まれたと思しきベッドは少し硬かった。

 だが疲れを取るには十分だ。

「お疲れ様です、ご主人様。」

 ベッドと同じ素材でできている座布団のようなものに正座しているニニナがそう言った。

 ニニナのほうは運ぶ荷物が僕より軽かったとはいえ、ほとんど疲れている様子がなかった。大したものだ。


 小屋の外はすっかり夜だ。

 キキキキ、キキキキ、と、何かの虫が鳴いている。

「ご主人様、あの……。」

「ん? なに?」

 ニニナの言葉に返事を返しながら、これはエッチな展開が来たかな、と僕は胸を高鳴らせた。

 少しだけ怖いような気持ちがあるのは変わらないが、胸が高鳴っていることは否定できない。

「わたし、胸が痛いです。」

「えっ、どうしたの?」

 体の調子が悪いのか?

 無理をして歩かせすぎたか?

 心配になった。

「ご主人様に、恩を返したいのに、それが出来なくて、辛くて。」

「え? あ、そっち?」

 そっち、と言うのも変な言い方だが。

「わがまま言ってすいません。でも、もしよかったら、ご主人様がわたしの体で気持ち良くなってくれたら、すこし苦しくなくなります。」

 ニニナは至って真剣な目だ。

 この子、意外と策士だな。

「胸が痛い」で一瞬心配させておいてからのこの攻勢。

 もう、くらくらするぐらい俺はやられた。

 ニニナに飛びついて押し倒さなかった俺は褒められるべきだと思う。

「じゃ、じゃあさ。」

 僕の声はみっともなくも震えていた。

「服の上から、体触っていい?」

「何でもしてください。なんでも命じてください。」

 ニニナが僕の方ににじり寄ってくる。

 ニニナの汗のにおいがするけど、ちっとも不快ではなかった。

 僕はニニナの肩に手を置き、その手を少しずつ背中の方に滑らせていった。

 服の布越しにニニナの細い体がしっかり感じられる。

 彼女の吐息がなまめかしい。

 背中の上をなぞっていた手を、彼女のお尻の方に滑らせる。

 ニニナは全然嫌そうな顔をしないので僕は安心した。

 ああ。

 幸せってこういう事なんだと感じた。

 手で、お尻の丸みを感じながら、僕は彼女がどちらの下着を穿いているのか服の上から探ろうとした。

 紐みたいなきわどい方か、それともシンプルな方か?

 ところが。

 ぱんつのものらしい微妙な凹凸が感じられない。

 まさか。

 僕は不安になった。

 まさかこの子。

「服の下に手を入れてもいいかな?」

 僕はぎこちない声で言った。

「何でも、してください。」

 ニニナは甘い声で言ったが、僕の興奮は半ば冷めてしまっている。

 そして、服の裾から手を入れて、彼女の腰の真横あたりに僕の手を滑らせたとき、僕は不安が的中していたことを知った。

 僕はニニナから少し離れた。

「ご主人様?」

 ニニナは少し不安そうな表情になったが、ここはしっかり言っておかねばならない事がある。

「そこに座りなさい。」

 僕は座布団のようなものを指差した。

 ニニナは不安そうな表情のまま、そこにちょこんと正座した。

「君、ぱんつ穿いてないね?」

 自分の声の苛立ちを隠すことには失敗した。

「は、はい。今日は、エッチをすることになると思ったので……。」

「逆だ!」

 つい、声が大きくなった。

「エッチな事をする時こそ、あらかじめぱんつを穿いておかないと駄目だろう!?買ったぱんつはどうしたの?」

「に、荷物の中に、ご、ごめんなさい、今から穿きます!」

「いや、それじゃだめなんだ……。」

 なんとなくだけどそうじゃないんだ……。

 エッチをしようと言う段階になってからぱんつをはくのでは、何かが台無しなんだ。

「ご、ごめんなさい、お、お許しください……。」

 ニニナが涙目になって震え始めた。

 ああ、もう許してあげないと駄目かな。

「ニニナ……。」

「ば、罰を! 厳しい罰を与えてください、鞭で打って下さい、もっとひどい事をしてください、そうすればわたしの悪い魂も……。」

 ああ、なんだか面倒くさい事を言い出したな。

「もういい、許すよ。だけど、これからはできるだけぱんつを……。」

 いつも着用するように、と言おうとしたところだった。

 どさっ、と言う人が倒れるような人が、外から聞こえた。

「何だろう。」

 僕は立ち上がった。音はこの小屋の入口あたりから聞こえた。

「気を付けてください。」

 ニニナが言った。

 僕はとにかく入口まで行き、ドアを開いた。

 地面に人が倒れていた。

 鮮やかな赤い髪。褐色の肌。布きれを巻きつけただけの簡素な衣装。

 少女のようだった。

「君、大丈夫?」

「ああ……どうか……食べ物を……恵んで下さい……なんでも……します……。」

 髪は全然整っていなかったが、顔だちの綺麗な美少女だった。

 その少女が、焦点の合ってないような目でこちらを見上げていた。

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