一話:良一、失恋する。気晴らしにゲームショップに行くことを決める。
この小説は、会話文の最後の句点(。)を省略しないルールで書かれています。
ご了承ください。
「……ごめんなさい。」
僕の目の前のクール系の美少女は、そのシンプルな言葉で僕を拒絶した。
「えっ……。」
絶句して二の句がつげなくなった。
今そういう流れだった? 違うだろ、絶対うまく行きそうな感じだったのに……。
「僕じゃ……駄目ってことですか……。」
僕の口からみっともない言葉が漏れた。
「うん、上月君って、私のタイプと違うの。」
明確な、誤解の余地のない拒絶が僕を迎え撃った。
目の前が真っ暗になった。
「ハナー? どこー?」
誰か女子の声が僕の前の美少女を呼ぶ。
美少女は僕に小さく会釈して、僕の前から去っていった。
こうして僕、上月良一は恋に破れたのだった。
今日の告白まですこしずつ好感を稼いできたつもりだったんだ、順調だと思ってたのに、どうしてこうなった……。
暗い気分を表情には出すまいと思って廊下から教室に戻る。
何事もないふうを装えているだろうと思っていたのだけど、3つほど横の席に座ってる僕の幼馴染の目には、そうではなかったらしい。
教室に入った僕を一目見るなり、小走りでやってきて、
「良ちゃん、だいじょうぶ? つらそうだよ? なにかあったの? わたし、心配だよ。」
小声でそう聞いてきた。
無垢なイメージのパッチリとした目、整った顔立ち。
僕は無言で会釈して、無駄に美少女な幼馴染に背を向け、自分の席に向かった。
彼女は生まれた時から家が隣の、兄弟みたいに育った純度の高い幼馴染だ。
天と地がひっくり返っても恋心など芽生えようはずもない。
そんな彼女の心配は今は煩わしいだけだった。
今日は学校が終わったらゲームショップに行って、気晴らしに前から欲しかったボードゲームを買おう。
そう決めた。
今、この文章を書いていてふと思う。
この日ゲームショップに行かなければ、僕は今いる異世界に来なくてすんだのだろうか、と。