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歴史エッセイ ~本当の意味シリーズ~

競技かるた 序歌の本当の意味

作者: clarify

「なにわづに さくやこのはな ふゆごもり いまははるべと さくやこのはな」 王仁わに


今では競技かるたの始めの歌、序歌じょかとして詠まれている歌です。


王仁わには、朝鮮半島の百済くだらより日本に渡来した賢者です。

古事記こじきでは和邇吉師わにきしと書かれています。


吉師というのは渡来人に与えられたかばねの称号なんだそうです。


あるとき、倭国わこくの王(応神天皇おうじんてんのう )は、百済に賢人がいるという話を聞かされ、その人材を探し求めることとした。


その中に、和邇という人物がいた、彼と共に漢文の貴重な書物も同時に持ち帰られて献上されたという。


この歌「難波津なにわづの歌」はその賢者、王仁が作ったとされている歌です。


漢字混じりで書くと、


難波津なにわづに咲くやの花冬こもり 今は春辺はるべと咲くや木の花」

※競技かるたでは「今を春べと」


となり、歌の意味はまぁだいたいそのままですが……


「難波津に花が咲いたか冬は去り 今は春だと花が知らせる」


現代文的にすればこんな感じではないでしょうか。


「この花」の意味は諸説あるようですが、梅の花を指していると言われています。


競技かるたの序歌に選定したのは佐佐木信綱ささきのぶつな文学博士です。


日本かるた協会の依頼によって選び、それには博士の「日本が花の咲き誇るような盛んな文化国家になるように」というような思いが込められていたようです。


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さて、この歌が詠まれた時代、倭国は後継者争いで揉めていました。


大山守皇子おおやまもりのみこ

菟道稚郎子うじのわきいらつこ

大雀命おおさざきのみこと


この三名の中で後継者に指名されたのはなんと最年少の「菟道稚郎子」。

王仁わにはその太子、菟道稚郎子の師であったと言います。


兄の大山守皇子はそのことに不満を抱き、軍を率いてクーデターを画策します。

この謀反は大雀命によって鎮圧されますが、兄を差し置いての太子推薦は大問題となったことでしょう。


そして菟道稚郎子はその立場を悩みに悩んで、ついには自殺してしまったと言います。


その後、即位したのが大雀命(仁徳天皇にんとくてんのう)です。


この歌は、その即位の祝いとして贈られた賛歌であると伝えられています。


「いろいろありましたが後継者問題、解決しましたね、この国にも明るい春が来たようです。」

と言うような気持ちでしょうか?


神話に詳しい人なら気が付いたかもしれませんが、この歌にはある神話の神様の名前がそのまま掛けられています。


それはコノハナサクヤ姫という女神なのですが、伝説ではニニギノミコトが美しいコノハナサクヤ姫と醜いイワナガ姫に求婚され、イワナガ姫を拒否したために永遠の繁栄を得られなくなってしまった、というお話なのです。


なんだか祝いの歌にしてはふさわしくないような気もしませんか?


自分ならコノハナサクヤ?それはどういう意味なのだ??と勘繰ってしまうかもです。


この歌は、短歌の持つ根源的要素(幽玄ゆうげん)を持っていて、古来より歌を習う人はまずこの歌から学んだと言います。


思うのですが、これは即位の祝いの賛歌などではなく、実はただ春の花の華やかさとその短さを歌ったシンプルな意味の歌なのかもしれませんね。

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[良い点] 大変興味深いですね、即位当時のいざこざを冬とかけてあった考察いいですね! [気になる点] それで思ったのですが、仁徳天皇の皇后である『磐之媛』は嫉妬深く、それが元で宮中を出たと聞きます。そ…
[良い点] なし。 [気になる点] 大雀命は仁徳ではない。 [一言] 兎道稚郎子が仁徳ではないか。 
[良い点] わかりやすい
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