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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
94/145

93:

桐生の家にお泊りをして、聖と遊んで、あっという間に冬休みは終わりを迎えてしまって。

とうとう3学期が始まってしまった。

お泊りをして以来、桐生とは会ってないし、連絡も取りあってない。


これが日常。

これが普通。

これが、当たり前なこと。


それなのに。


この前から頭から離れない。

あの日の桐生が。

あの表情が。

あの声色が。

忘れられない。


「ぼけーっとしてないで、なにがあったのか言いなさいよ、バカ陽向」

「相談乗ってくれるわりに言葉が刺さるんだけど」

「いつまでもうじうじため息ばっかりついてるからよ。カビがはえたらどうしてくれんの」

「今冬場だから大丈夫だよ」


カビが繁殖するような季節じゃないよって返したら、思いっきり頭を小突かれた。

それが結構痛くて、頭をさすっていると、聖にそれはそれは大きなため息が聞こえた。


「正月明けに遊んだ時も思ってたけど、あんた最近上の空ってわかってる?」

「考え事してるだけだってば」

「自分の家を通り過ぎるくらいは考えてるわけね」

「え!?なんでそれ知ってんの!?」


誰も見てないと思ってたのに!


「私の家どこにあると思ってんのよ」

「うっわ、恥ずかしい」

「恥ずかしがってないでとっとと吐きなさいよ」


ふんぞりかえるように足と腕を組んで座った聖はにっこりと笑みを浮かべる。

本当に女王様って言葉がしっくりくるよね、この子。


「どうせ桐生のことなんでしょ?」

「ばっか、声でかい!」

「ああ、そっか。あんたたち別れたんだもんね。でも間違ってないんでしょ?今も噂凄いよ。より戻した説が飛び交ってる」

「‥笑い事じゃないし。そのせいでさっきからすっごい睨まれてるんだから」


陰口が陰口になってないくらい聞こえてくるんだけど。

痛いくらいの視線だって感じるし。

桐生効果半端ないな、ほんと。


「で?王子様がどうしたって?」

「‥別にどうも。たださ、」

「うん?」

「…私って、無防備、かなぁ?」

「はい?」

「だから。私ってそんなに無防備?」


言い直して言うと、聖は組んでいた腕をほどいて、机に頬杖をついた。

ぐっと近くなった聖の顔は、茶化すでもなく真剣な顔だった。


「‥陽向、あいつになんかされた?」

「え、なんでそうなるの?」

「無防備って言われるようなことされたんじゃないの?」

「ないない!だってあいつだよ?ありえないって」

「‥‥ならいいけど。で、陽向が無防備かって?無防備に決まってるじゃない」


けろっと言ってしまった聖の言葉に、少なからずショックを受けたりして。

もう少し悩んでほしかったなぁ。


「あんたは近付くまでが大変なのよ。とくに中学までは害虫駆除してくれる人がいたから余計。まぁガードが堅いっていうかさ」


聖の言葉をうんうんと頷きながら聞く。


「でもさ、近くなっちゃったら…ねぇ?旭君と同じーってしちゃうからすっごく近いんだよね、色んな意味で、距離が」

「‥近いの?」

「はっきり言って近い。それする!?っていうこと、あんた普通にしちゃうから」


聖は思い出したのか苦笑しながら言った。


「で?それ言われたの?」

「…言われた」

「言われたんだ?ふぅん…それって、」

「それって?」

「…いや、なんでもない。あいつも苦労してんのね」

「意味わかんないんだけど」

「これがわかったら、あんた今そんなに悩んでないから」


聖はひとりでうんうんと納得して、「鈍感」とだけ言って席から立ってしまった。

聖の後姿を見送った私は机に突っ伏してため息をこぼした。


「神崎いるかー?」

「神崎はいませーん」

「いやいるじゃん!今返事したよな!?」

「かっちうるさい。今忙しいの」


もやもや考えるのに。

邪魔しないでよ。


「いやいやいや、ただ机に突っ伏してただけだからな」

「かっち相手にするほど暇じゃないの」


ていうか、今かっちの相手できるほど元気ない。

空元気ですらちょっと無理。


「なに?」

「客」

「客‥?」


誰だ、人が必死に悩んでる時に。

かっちがあれ、と指をさした方向には瑛太が立っていた。


「なに」

「なんか不機嫌ですね」

「わかってるなら用件言って」


私が不機嫌なのを知ったくせに、瑛太は楽しそうに笑った。

というか、こいつ本当に何しに来たんだ。

帰りのHRが始まるまでのこの時間に伝えにくるって、本当何の用だ。

今日は火曜日で部活だってない。


「これ、お願いしてもいいですか?」


いいですか?というお願い口調なわりに、副音声で「できますよね?」っていう強めの確認が聞こえてきたのは私だけかな。

瑛太のキラキラスマイルがそう思わせてんのかな。


「なにこれ」


瑛太の手にあるのは、数枚のプリント類。

いったいこれはなんだ。


「配布物です」

「いやそれは見たらわかる」


これ、朝に私ももらったよ、先生から。

進路希望の紙も、さっきの授業で先生から受け取ったよ。

で、それをなんで瑛太からも渡されなきゃならない。

つーかこれ誰のだ。


「届けてほしいんです」

「…これを?」

「はい」

「なんで?」

「クラスで話し合った結果、陽向さんが適任だとなりましたから」

「いやごめん、まったく意味わかんないんだけど」


なんでクラスで話し合いをしたら、このプリント類を持っていく係が私になるんだ。

どうかんがえてもおかしいだろ、6組。


「品行方正、紳士で優しい王子様がいるじゃん」


あいつに届けさせろよ。

6組って理系クラスだし、それ届ける先もどうせ男でしょ。


「その彼がいないから頼んでるんですよ」

「‥‥はい?」

「ですから、桐生君、今日お休みなんです」

「‥へー、そう。お大事に」

「陽向さん」


関係ない、関係ない。

私も帰りの支度しなきゃ。


「これ、桐生君の家に届けてもらえます?6組の担任と生徒からのお願いです」

「重たいな!」


ていうか担任も一枚噛んでたのか!

もう信じられない!










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