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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
89/145

88:

MIO side



「いいにおいするなぁ。もうすぐ飯だな」


キッチンを一緒に追い出された一条さんと俺、そして出禁を食らっている姉貴は、暇だということもありリビングでゲームをしていた。

ゲーム中にくんくんと鼻をひくつかせた一条さんはそう言うと、勝手にゲームを止めてキッチンの方を見た。


「勝手にとめないでよ」

「いいじゃん、今はゲームよりあっちのほうが気になる」


そう言って、一条さんはキッチンにいる2人、というよりは神崎をじっと見ていた。


「確かに。あんな美人な子どこで捕まえてきたのよ」

「同じ高校だそうだ」

「そうなの?家庭的な子だし、本当にあんたにはもったいないわ」

「いい子っぽそうだしな。逃げられんなよ」

「こんな弟のどこがいいんだか」

「それお前が言うか?お前らんときも同じ言葉、飛鳥毎日言われてたぞ」

「あら、失礼しちゃう」


2人の会話を聞きながら、とりあえず言いたいことを言っておこうと「あのさ」と声を出す。

これだけは言わせてもらわないと、後々大変なことになる。


「なんか勘違いしてない?俺と神崎、別に付き合ってないよ」


っていう会話、一条さんとはこれで3回目くらいだよね?

そろそろいい加減わかってほしいんだけど。


「嘘ばっかり。あんたが女の子と仲が良いって前代未聞よ。それも家の中に入れてるし」


姉貴が半ば強制的に連れて来たんだけど。

俺が連れて来たみたいに言わないでほしい。


「今までのあんたなら、何が何でも家に入れなかったでしょうね」

「あー、確かに。入れたとしても、多分澪はここにいないな」


ハハハ、フフフと笑っている2人をなんだか無性に殴りたくなった。

殴ったらあとが怖いからそれだけはしないけど。


「でも神崎はそんなんじゃないよ」


そうなるって伊織には昨日宣言したけど。

俺は2人からキッチンで料理する神崎へと視線を移す。

神崎と飛鳥さんは初対面だというのに、仲睦まじそうに一緒にキッチンに立っていた。

料理できるのがあの2人しかいないから仕方ないんだけど、なんだかモヤモヤする。

あの笑顔を向けないでほしいと、自分でも驚くような感情が芽生えてしまう。


「…近い」

「へ?」


姉貴今なんかぼそって言ったけど、なんて言った?

姉貴に聞き直そうとしたら、姉貴は立ち上がって冷蔵庫を開けにいった。

そして冷蔵庫の中身を確認した姉貴は自分の財布を持つとコートを羽織りだした。


「どっか行くの?」

「お酒買い忘れたから買ってくるね」

「…わかった」


一条さんとの短い会話をして、姉貴はパタパタと買い物に行ってしまった。

そんな姉貴の姿を目で追っていると、隣に座っていた一条さんが小さくため息をついた。


「どうかしました?」

「‥いや…飛鳥ってつくづく罪作りな男だなーって。でもって西遠もいつまでたっても子どもだなーって」


乾いた笑い声を出して言った一条さんは、飛鳥さんと神崎を見る。

相変わらず近い2人の距離が気に入らなくて、イラッとしてしまう。


「澪、眉間にしわ寄ってる」


そう言われて、俺はとっさに一条さんから目をそむけた。

一条さんからはカラカラという笑い声が聞こえてきた。


「男の嫉妬は醜いぞ」

「‥一条さんにだけは言われたくない」


飛鳥さんにずっと嫉妬してたくせに。


「嫉妬してたことは認めんのな」

「…今更隠したって仕方ないでしょ」

「ずいぶん潔いな。やっぱり好きなんだ?」

「言っときますけど顔じゃないですからね」


なんか顔に惚れたとか言い出しそうだから先に言わせてもらう。

俺の言葉に一条さんは苦笑して「わかってるよ」と言って、神崎をちらっと見やった。


「陽向ちゃんって、お前のことちゃんと見てくれてそうじゃん」

「…そうでしょうね。初めて会ったときって、俺空き地で男のしてた時だったし」


あの時の神崎の表情って今思い出しても笑える。

遠目でしか見えてなかったけど、なんていうか「なんつーもの見せてくれたんだ」って顔が言ってた。

恐怖とかそんなんじゃなくて、ふざけんなっていう感情のが強かった気がする。


「こってりしぼった後だからもう言わねぇけど。お前ら出会い最悪だったんだな」

「まぁね。口止めしようとしたら、言わなかったら気のせいとか人違いとかで消化しようとしてたのにって逆切れされた」

「陽向ちゃんらしいと言えば陽向ちゃんらしいな」


自分で言っておいて、なんだか懐かしくなる。

懐かしいと思えるほど前のことでもないのに。


「陽向ちゃんってモテるでしょ」

「本人全く気付いてないけどな」

「…そうなの?」

「自分の顔は平々凡々らしい」

「は?え、マジで?性格もあんななのに?彼氏ずっといるとか?」

「いや、あいつの双子の兄貴がずっと牽制してたんじゃないの?」


つーかそれしか思い当たるところがない。

しかもカップルかってつっこみをいれたくなるほど仲良いし。

あれは周りが勘違いしても仕方ないと思う。


「おまけにイケメンは嫌いらしい」

「……イケメン嫌いな女子っているんだ」

「あれ」


マジ絶滅危惧種。

そもそもあいつの周りイケメン多すぎるんだよ。


「うーん…前途多難だな、澪」

「まぁ仕方ないんだけどな」


好きになっちゃったんだし。







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