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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
84/145

83:

「向こうは西遠が聞いてくれるとして。お前新年早々、なにしてるわけ?」


こじんまりとした小さな部屋に連れられた私と桐生は隣合って座ると、一条さんはそう切り出した。

ため息まじりに言った一条さんは首をコキコキと鳴らした。


「何って‥別になんもしてねぇって。伊織と初詣行こうって話になって行ったら連れ込まれた」

「あ・の・な、普通に初詣行ったらこうなんねぇんだよ」

「知るかよ、だいたいあれ誰かもわかんねぇのに」


桐生はため息をつくと、椅子のもたれかかった。

その様子を横目で見ていると、前からもため息が聞こえてきた。

ちらっと一条さんの方を見ると、目が合ってしまった。


「えっと、」

「悪かったな、無理に連れてきて。誰かと一緒だったんだろ」

「あー‥別に旭なんで問題ないです」


あれが友達とかだったら大問題だったけど。


「彼氏じゃないのか?」

「旭が?まさか。あれ、私の兄です」

「そうか。まぁ悪かった。ああ、名前だけ教えてもらえる?」

「神崎です。神崎陽向」


私が言った名前を、一条さんは白い紙に書きとめていく。

字の説明をして、ちらっと桐生の方を確認すると、桐生は興味を無くしたのか目を閉じていた。

‥昨日寝てないのかな。


「澪とは知り合いか?」

「桐生ですか?学校が同じなんです」

「へぇ、学校が。こいつって学校でどんな感じなの?」

「一条さんそれ今関係ないでしょ」


聞かれたことにこたえようとしたら、それより早くに桐生が言ってしまった。

そんな桐生を見た一条さんは口元に弧を描いて笑った。


「だったらちゃんと言え。俺だってこんなことに時間取られたくないんだよ」


一条さんの言葉に桐生は大きな舌打ちをして、もたれていた背を起こして今度は頬杖をついた。


「ほんと、伊織と初詣に行っただけだって。伊織がおみくじ引いてくるって言うから待ってたら絡まれた」


それで連れ込まれてるってどんだけ。

物騒すぎて街の中歩けないでしょうが、という言葉は呑み込んで、桐生と一条さんの会話を傍聴する。


「で?手出したわけね?」

「言っとくけど、先に手出したのは向こうだよ?」


どうやら桐生はあくまで正当防衛だと言う気らしい。

…あれって過剰防衛なんじゃないかなぁ、とか思ったり。

だってお兄さん数人のしちゃってたじゃん。

胸倉しっかりつかんでたし。


「…確かにお前はやられたらやり返すタイプだってのは知ってる。でもだ。やりすぎって言葉知ってるか?ほどほどって言葉知ってるか?」

「頭の中の辞書には載ってるよ」

「載ってるだけじゃ意味ないんだけどな」

「1対6にもなったらそんな言葉って無意味だと思わない?」

「意味の有無を言ってんじゃねぇよ。やりすぎだって言ってんだよ」


一条さんは大きなため息をついて自分の腕についている時計をちらりと見た。

煖房はついているものの、少し冷えているこの部屋に長時間いるのは正直つらい。

そろそろ帰してもらいたい。


「あんだけ殴ってたら、学校に言われても文句言えないぞ」

「そこは一条さんの権限でぐにって事実捻じ曲げといてよ」

「…できるか」

「できるでしょ、一条さんなら。神崎を助けに入ったって書いといてよ。どーせ姉貴もそんな感じで調書取ってくるだろうし」

「‥‥あの人ならマジでやりかねない、」


一条さんはまたため息をついてどこか遠くの方を見やった。

その様子を見ている桐生はどことなくだけど楽しそうだ。


「‥‥‥って、あれお姉さんなの?」

「あれ、この前写真見せなかった?」

「なんていうか…どこかで見た顔だなーとは思ってたけど」

「まぁあれ成人式の写真だから4、5年くらい前だし、化粧して盛ってるから顔全然違うもんなー。あれ、この前言ってた俺の姉貴」


桐生に言われて、さっき見た綺麗な女の人を思い返す。

第一印象は儚げな美人だったはずなのに、思い出せるのはここに来る前に見た眩しいほどの綺麗な笑顔。

思い出すだけでブルって震えるってなんでだろう。


「顔だけは一級品だったろ?」

「守ってあげたくなるような人だったね」

「見た目はな。あれはとんでもねぇぞ。あれに騙された男の方が可哀想だ」


桐生の言葉に、一条さんはなぜか首を縦に振って頷いていた。

それもなにかを思い出したのか、眉間にはしわまで寄っている。


「俺の同僚が何人騙されたか」

「同僚だけじゃないでしょ。確か上にも下にもいたって聞いた。おまけに姉貴見たさに万引きとか軽犯罪するバカが出たとか」

「そうなんだよ。今は西遠は結婚してるからおさまったけどな」

「にしても物好きだよなー、姉貴に告白するとか」


ケラケラと笑いながら言った桐生の言葉に、一条さんは複雑な顔をしてから煙草をくわえた。


「いいか?」


そう問われたので、私は一度桐生の方を見てから首を縦に振った。

それを見た一条さんは立ち上がると窓際に立って煙草に火をつけると、フーッと白い息を吐いた。


「配属当時は女神とまで呼ばれたのにな。今じゃあ魔王だからな」

「…性別変わってない?」

「細かいことは気にすんな。魔女なんて可愛いもんじゃないんだよ、あの女は」


‥‥どんな人なんだ、桐生の姉貴って。

なんか、下手に興味持っちゃったなぁ。








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