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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
78/145

77:

「…桐生、もう少しゆっくり歩いて」

「あ、悪い」


煌めくイルミネーション。

鳴り響くクリスマスソング。

賑わう夜の街。

行き交う人々は、みんなして腕を組んだり手をつないでいる。


そんな街に、私と桐生はいた。

それも、スーパーの大きすぎる袋を携えて。

それもこれも、数十分前にさかのぼる。




―――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――





「どこかに行こうか」


そう言いだした桐生は淹れたばかりのコーヒーを飲み干した。


「…えっと‥桐生?」

「どこ行こうか」

「いやどこって」


そもそも私は行くことに頷いてないんだけど。


「あーでも今からどこか店なんかいったらどこも混んでるか」


桐生はうーんと唸りながら、どこにご飯を食べに行こうか考えている。

その様子を見て、諦めにも近いため息がこぼれてしまった。


「神崎、何食べたい?」

「クリスマスだし、ちょっといいもの?」


‥って、なにサラッと答えてんの、私。

帰るんじゃなかったのか。

と、桐生が考えている様子を見ていた私のポケットに入っていた携帯が震えた。

携帯を見ると、ラインがきていて、送り主は今のこの状況に私を追いやった愚兄。


『俺やっぱ帰らねぇわ』


…知ってる。

と、心の中で答えてホーム画面に戻すと、またラインが鳴った。


『それ、俺からのクリスマスプレゼント

いつまでもそこで地団駄踏んでると

ほんとに欲しいもの手に入らねぇぞ』


…余計なお世話だっての。

そのラインにも返事はせずに、既読もつけないで携帯をポケットにしまって、私の前にいる桐生を見た。

なんとも言えないクリスマスプレゼントだわ。


「兄貴?」

「うん。今日は家に帰らないって」

「…ふぅん」


私の言葉に、桐生は一瞬だけ顔を顰めた。

それに首をひねっていると「何でもない」と言われてしまった。


「で?晩飯どうする?」

「どうするって言われても…ご飯行くにも私制服だから」


行ける店ってけっこう限られたりしてるんだけど。


「でも制服って正装じゃん」

「いやそうだけど。こっちの気持ちの問題」

「まぁわからなくもないけど。でもどっちにしろ予約もしてないから難しいかもな」

「…どんな店行くつもりよ」


正装じゃなきゃ行けないような店ってどんだけ高い店よ。


「時間も時間だしなー……なぁ神崎」

「なに?」

「お前料理できたよな?」

「…は?まぁ‥…趣味とか特技に書けるくらいには」


その基準ってどうなの?ってよく言われるけど。

でも趣味にできるくらい料理できるんだから褒めてほしいよね。


「えーっと…その笑顔はなにかな、桐生君」


王子様みたいなキラキラした綺麗な笑顔なんだけどね?

静止画でも全然見れる、いい笑顔なんだけどね?

さっきから嫌な予感と冷や汗しか出てこないのはどうしてだろうね?


「作って」


にっこりと。

それはもううっとりするくらいの。

どこぞの彫刻だと言っても過言じゃないくらい。

怖いよ、ほんと。


「…やだよ」

「いいじゃん、今から行っても店開いてないだろうし。さ、買い物行こう」




―――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――




今思い返しても強引だと思う。

買い物行こうって言われて、そのまま腕を引かれて出てきた。

で、そのまま買い物して今に至る。


「帰ったら8時前くらいになるかな」


桐生は腕時計を見て言った。

そこからご飯作ったら晩ご飯の時間9時とかになっちゃうんじゃないの?

でもって私がご飯作るのはもう決定事項なんだね。


「桐生も手伝ってよね」

「俺料理できないよ」

「は?あんた独り暮らしでしょ?ご飯くらい作るでしょ」

「や、作らない。ほとんど外食。作っても朝飯とかなんか炒めて作るくらい」

「…どうせならそこも完璧であってほしかったなー」


まぁこれで女子よりご飯作れるとかだったら、劣等感半端なかったけどね。

そんなことを考えていると、桐生の家について、持っていた荷物を机の上に置いた。

袋から買ったものを取り出して机の上に並べる。


「さて、じゃあお願いしようかな」

「‥はいはい」

「あ、神崎悪いんだけど、ちょっとの時間だけ1人にしてもいい?」


私が台所に入った途端に、桐生は遠慮気味にそう言った。

首を傾げながらも「いいけど、」と言うと、桐生は「ごめんな」と笑ってからパタパタと出ていってしまった。

家主がいなくなった家に私だけってなんか変な感じだなぁと思いながら、ローストチキンをつくる下ごしらえをする。

コンロではトマトスープを作る。


今日のメニューは、

ローストチキン

トマトスープ

サーモンのカルパッチョ

ポテトサラダ

ローストビーフ(既製品)


「…あ、ケーキ」


すっかり忘れてた。

まぁいいか。

別にケーキがないからといってクリスマスじゃないってわけじゃないもんね。


「なんかプレゼントあればよかったんだけど‥」


仕方ない。

だってこんなことになると思ってなかった。


あんなに遠ざけてたのに。

あんなに忘れようとしてたのに。

結局、私と彼の距離は、あの頃と変わってない。


「地団駄踏んでるわけじゃないんだけどね」


どうして、私今、ここにいるんだろうね。








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