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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
77/145

76:

こんなはずじゃなかった。

もう1回言う、こんなはずじゃなかった。


本当なら今頃私は1人家にいてベッドにダイブして安眠してたはずなんだ。

なのに。

なんで私は今、桐生の家にいるのだろうか。


誰のせい、と問えば、間違いなく桐生と私の愚兄のせい。

比率で言うなら、4:6くらいだろうか。


「神崎の兄貴って似てないと思ったけどそうでもなかったな」


ジャージから私服に着替えてきた桐生は部屋に入るなりぽつりと呟いた。


「そう?今日散々似てないって言われてきたけど」

「顔はな」


何その厭味ったらしい言い方は。

まるで顔以外が似てるとでも言いたげじゃないか。


「あの突拍子もないとこは似てる」

「いやいや、私がいつ突拍子もないことした?」


いつでもどこでも想定の範囲内で行動するのが私なんですけど。

と、胸を張って言うと、桐生はそんな私を無視して時計に視線を移した。

サラッと無視するのって一番傷付くんですけど。


「で?お前どうすんの?」

「え?どうするって、」


どうしよう。

携帯で時間を確認したら、もうすぐ7時になる時間だった。

駅に近い桐生の家の窓からは、明るい夜の街が見える。

いやでも今日がクリスマスなんだと思い知らされる。


「桐生は?」

「俺?特に予定ないから。このまま晩飯買って食って風呂入って寝るだけじゃね?」

「クリスマスのクの字もないね」


その予定に。

呆れたようにして言うと、桐生に「お前もだろ」と返されてしまった。


「私はもともと部活が入ってからね。家も誰もいないから今年はクリスマスはいいかなってなってたの」

「お前が男に声かければついてくるだろ」

「あんたと一緒にしないでよ」

「お前追っかけてた先輩とかいたじゃん」


桐生は真向かいのソファに腰を下ろして悪戯っぽく笑いながら言った。

その言葉に、この前のイベントを思い出した私は顔を顰めた。


「眉間にしわ寄ってる」

「誰のせいだと、」

「先輩?」

「思い出させたのはあんたでしょうが」


人が必死に忘れようとしてることをわざわざ思い出させるなんて。

あの後も大変だったんだから。

イベントが終わった次の日に先輩が教室に来て、大々的に愛の告白してくるし。

あれはドン引きした。


「たわしの次は黒板消しか。あの先輩のメンタルもすげぇな」

「…なんで知ってんのよ」

「宝条に聞いた」

「かっちのばか」


愛の告白をしてきた先輩に、我慢しきれなくなって後ろの黒板のところに置いてあった黒板消しを投げつけてやった。

先輩の黒色のブレザーに黒板消しのあとがついたけど自業自得だと思う。


「そういえば、帰りはかっちたちと一緒じゃなかったんだね」

「あ?…まぁな」

「え、なにその顔。なんで今の質問の答えで眉間にしわ寄せんの」


そんなにかっちたちと一緒に帰りたかったのか。

それならそうと言ってくれればよかったのに。


「言っとくけど、お前が今思ってるようなことじゃないから」

「へ?じゃあなんで?」

「…あいつらこれから合コンなんだよ」

「へぇ…行きたかったの?」


合コン。

そう問えば、桐生は綺麗な顔をさらに顰めた。


「誰が好き好んであんなとこ行くかよ」

「えー?可愛い女の子見れるしいいじゃない。一晩の思い出だよー」

「一晩で終わんないから問題なんだよ」

「はいはい、あんたはモテますもんね」


なんとも羨ましい文句だこと。

そう言うと、桐生はため息をついた。


「誘われたんじゃないの?」

「まぁ、」

「行かないの?ていうか迎えに来るか」


かっちそこまでしそうだし。

桐生がさっきからしきりに時間を気にしてるのはそのせいか。


「行ってこれば?」

「は?行ったって楽しくねぇ」

「でもかっち来るんじゃないの?」

「来るかもな。そんなこと言ってたし。人数が1人足りないってさっき泣きついてきた」


思い出したのか、桐生はため息をこぼした。

そしておもむろに立ち上がるとキッチンの方へ行きコーヒーを淹れだした。

数分してから戻ってきた桐生の手にはマグカップが2つ。

1つを私の前に置いた桐生は、長い足を組んでコーヒーに口をつけた。


「あんなとこ行くくらいなら、その辺の女1人引っかけてるほうがマシ」

「言うねぇ」


どんだけ声かけても引っかからない男もいるってのにね。

これだから顔の良い奴は。


「…もしかして、そのための私?」

「まぁ‥一理ある」

「その辺の女と同じか、」


やだ、自分で言っててなんかショック。


「神崎連れて歩いてるとこ見たら、あいつらも諦めるかと思って」

「うまいこと利用されたなぁ」

「兄貴に気を遣わせたくないっていう利害の一致だろ」

「勝手に旭に話しつけたくせに」


なにが利害の一致だ。

私1度も首を縦になんて振ってないぞ。


「んなことよりこれからどうするかだろ」


そう言うと桐生は時計を見上げる。

同じようにして見上げた時計は7時を15分ほど過ぎていた。

外はイルミネーションが綺麗に思えるくらい、暗くなっている。


「どうするって?」

「神崎、予定入ってないんだろ?」

「暇で悪かったわね」


生憎、明日も部活も何も入ってないから暇ですよ。

そう言うと、神崎は少し考え込んでから口を開いた。


「じゃあこれからどっか行こうか」

「………へ?」




なんで、そうなった?






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