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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
75/145

74:

「桐生?」

「さっきのことだけど」


さっきのってどれだ。

さっきという言葉で当てはまることが多すぎて見当がつかない。

首をひねっていると、桐生は大きなため息をついた。


「ここであったこと」

「あー‥あれね、うん、」


ちょっと消化不良起こしてるんだけど、どう処理したらいい?


「噂が出回ってるらしいな」

「うわさ?」

「よりを戻したってやつ」


聞いてないか?と言う桐生に対して、あるよ!と大きな声で答えてしまったのは不可抗力だと思う。

私の答えに、桐生は苦笑を返した。


「朝倉にからかわれて弓道場出てきたのか?」

「そんなことするわけないじゃん」


そんなことで怒って出ていくほど私も子供じゃないし。

じゃあなんでここにいるんだって聞かれたら、なにも言えないけど。


「あれはどうしたもんかな」

「あれ、うちの生徒だしね」

「1年も2年もいるみたいだぞ、マネージャー」

「マジ?じゃあ広まるのも時間の問題?」

「冬休みで良かったなって感じだな」

「‥冬休み明け、学校行きたくないなぁ」


そのころにはほとぼりとか冷めてるとありがたいんだけど。


「しかもさっきのあれ、キスしてるっていうふうに回ってるみたいだけど?」

「は?なんだそれ。だからさっきから周りの奴らが俺のこと見てたのか」


桐生は大きく舌打ちをすると、乱暴に頭をかいた。

その仕草が王子様らしくなくて、思わず笑ってしまう。

私の笑い声に桐生は首をひねって「なに」と少しいじけたような言葉を口にした。


「いや、なんていうか、久しぶりに見たなぁと思って。ブラック王子」

「…‥そう、だな」


桐生はフッと笑うと、くしゃくしゃになった髪を直した。


「じゃあ私そろそろ戻るね」

「ああ、そうだな。俺ももう少ししたら試合だ」


そう言って、桐生は笑いかけた後に体育館に戻るために私に背中を見せる。


「あ、桐生」

「なに?」

「これ、返さないと」


さっき返しそびれた桐生のマフラーを首から外そうとすると、桐生から「つけといて」という言葉がきた。

‥いや、つけといてって。

サラッと何言ってんすか。


「え、でも、」

「どうせその上着も返しに来るんだろ?」


そう言って、桐生は私が来ている旭の上着を指さした。


「返しに行くけど‥旭はもしかしたら一緒に帰るかもだし」


その時に返すかもしれないでしょ、と言いかける前に、桐生は「じゃあ頼んだ」と勝手に話を終わらせて行ってしまった。


「なに任せたって」


桐生がいなくなった私はただ呆然と桐生の後姿を見送るしかなかった。

しばらくたち呆けた後に、はっと我に返った私は、弓道場に戻る。

携帯で時間を確認すると、瑛太と約束した1時間は軽く過ぎていた。

これは怒られるかもしれないと思いながら弓道場の扉を開けると、一番に飛び込んできたのは双子だった。


「え、なに、」

「「陽向先輩、あれ何とかしてください!」」


双子があれと指さした方を見ると、そこには瑛太とニナが睨みあっていた。

心なしか、あの2人の周りだけ黒い気がする。

だれもあの2人に話しかけたくないのか、引き気味に見守る形で傍観者に徹している。


「‥なにがあったの」

「順立をしようってことになったんですけど、」


千里がそこまで言って、なんとなく言いたいことがわかってしまった。

思わず、感嘆に近いため息が出てきてしまった。


「的中制にするか、得点制にするかで揉めてるんです」

「…あほらし」


本音がポロリとこぼれてしまった。

正直どっちだっていいじゃないか。

そんなことで練習の雰囲気を壊さないでほしい。

周りの1年生なんか怯えて震えちゃってるじゃないか。

私はため息をつくと、そばにあった武帳を丸めると2人のそばまで寄っていく。


「得点制に決まってるだろ?的を得た数ってそれじゃあ面白みがない」

「弓道の採点方法はほどんど的中制でしょう。得点制にする意味がないでしょう」

「意味?意味あるだろ」

「ないって言ってるんです」


……相変わらずくだらないことで揉めてる。

ため息をついた私は、すぅっと息を吸った。


「くだらないことで煩わせないでよ、バカ!」


ぽかぽかと、2つの頭を叩いて言えば、2人は私の方を見て目を丸くして私の名前を呼んだ。

どうやら帰ってきたことにも気が付かなかったようだ。


「そんなの自主練の時にやってくれない?あんたたちのくだらない意地の張り合いに付き合わせないで」


そう言い切って、私は武帳をもとあった場所に置いて2人を睨みつけるようにして見る。

まだいがみ合っているみたいだけど、今が部活中だということを言い聞かせると大人しくなった。


「そういや陽向さん」

「なに」

「帰ってきたということはまともに弓が引けるんでしょうね?」

「それとこれとは別でしょ」

「僕言いませんでした?弓が引けるまで帰ってくるなって」

「うるさいな。今は弓道がしたいの。させてくれないなら今から帰る」


そう言えば、瑛太は珍しく困ったような顔をした。

いや実際に困ってるんだとは思うけど。


「相変わらずわがまま姫だな」

「なに?」

「いいや?どんなわがままでも通っちゃうから問題なんだよな、ほんと」


はぁとニナはため息をついた。

その反対側にいる瑛太からもため息が聞こえてきたような気がした。







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