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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
73/145

72:

「スガ、試合」

「君面白いね」


その言葉が重なった。

被った目の前の彼とは違う方向から聞こえてきた声は、聞きなれた声だった。


「旭」

「‥陽向?お前こんなとこで何してんの?練習中だろ、今」

「あー‥まぁいろいろあってね、今休憩中」


えへ、と笑えば、旭は私のそばまでやってきて、隣に立つ彼を見た。


「スガ、試合」

「うん、わかってるよ。それより旭の彼女?」


スガと呼ばれた彼は笑いながら私を見た。

運動部で少し汗をかいているせいか、首にタオルを巻いているせいか、彼はとても爽やかに見える。


「これ見てもそう思う?」


そう言った旭は私の上着の袖に書かれている苗字を彼に見せた。

彼はそれを見ると首をかしげる。


「‥妹さん?」

「まぁ間違ってないな」


旭は笑いながら言うと、私の頭を撫でた。


「旭の双子の妹の神崎陽向です」

「双子!?嘘!?旭より全然いい子じゃん!」

「スガ…お前は俺に殴られたいのか?」

「いやだって考えても見ろよ!無愛想、無関心、毒舌で口の悪いお前の妹がこんな愛想がよくて笑顔が可愛くてコミュニケーション能力が高いなんて!」

「…スガ、お前歯くいしばれ」

「え、ちょ、待った!」


問答無用というように、旭は彼に殴りかかる。


「旭、事実なんだからやめなよ」

「陽向てめぇ」

「無愛想だし口が悪いのは事実でしょ。それより旭、私試合見ていっていい?」

「ったく。いいんじゃねぇの?まぁ陽向の時間が許すようならだけど」

「あ、それは大丈夫」


1時間もらったから、自由時間。


「けど次って陽向んとことだぞ。お前どっち応援すんの?」

「へ?」

「へ?じゃなくて。お前自分の通う学校応援しないで他校の生徒応援すんのかよ」

「あー‥考えてなかった」


そうか、そういう問題があったのか。

しかも私、今この格好だ。

絶対霧学の生徒だってばれる。


「そうでなくても旭の応援ってだけで大変だぞ」

「そうなの?」

「旭ってファンクラブあるからな。すっげぇ睨まれるぞ」

「旭にファンクラブ!?いやいや、ないない」


だって旭だよ?

無愛想で無関心で口が悪いんだよ?

いいとこひとつもないじゃん。


「言うなぁ‥さすが双子ちゃん。とりあえず上の観覧席で見れば?俺たちももう行かないと」

「そうだな。そこの階段から観覧席に行ける」

「ありがと」

「あ、ちょい待て」


そう言うと、旭は体育館の中に入っていき、すぐに戻ってきた。

旭の手にはウインドブレーカーの上があった。


「さむいだろ、それじゃ」

「ありがと、助かる」


マフラーだけじゃ、寒くて困ってたんだよね。

まぁこのマフラーも私のマフラーじゃないんだけどね。

旭に言われた階段を上がって観覧席に行くと、ただの練習試合なのに女の子たちがすっごいいた。

…え、女の子?

ここ、男子校だよね?

なんで女子?


「「「キャー!神崎くーん!」」」


きゃあ?

旭に向かって、きゃあ?

女子から少し離れたところに座って、女子とプレーヤーを交互に見た。

ブザーが鳴って、試合が始まると、女子の黄色い声はさらにヒートアップする。

旭がシュートを決めると、その黄色い声はいっそう大きくなる。


「‥モテモテだね、愚兄は」


つまんない、とか思っちゃったり。

そんなことを思っていると、コートに立つメンバーが入れ替わった。

…桐生だ。

桐生が出てくると、今まで旭を応援していた女の子たちがひそひそと何かを話し出した。


「ねぇあの人かっこよくない?」

「だよね!しかもバスケうまいし!」

「笑顔やばいんだけど!」


‥旭のファンクラブなんじゃないのか、この人達。

その身の軽さに呆れていると、一際大きな黄色い声が耳に入った。

何だと思ってコートの中を見てみると、桐生の守備に旭がついていた。


「…嫌な組み合わせ」


って、きっと旭も桐生も思ってるんだろうね。

旭、表面上はそうでもだけど、嫌そうな顔してる。

さっきも言ってたけど、本当に嫌なんだね、旭ったら。


「にしても桐生って本当にバスケうまかったんだ」


旭に引けを取らない動きに思わず目を見張った。

目を奪われるほど綺麗なプレースタイルだと思った。

旭にぴったりつかれながらも、なんとかして点を取った桐生はふいに観覧席の方を見上げた。


「……?」


何かを探しているようだった。

キョロキョロと周りを見渡した桐生はざぁっと観覧席を見て、そして、ある一点で首を振るのをやめた。

まさか、と思った。

だって今、間違いなく目が合っているのは、私。

目が合った桐生は数秒私を見ると、ふわりと、とても綺麗な笑顔を見せた。

その笑顔に、顔から火が出そうなほど熱くなるのを感じる。


「‥‥反則じゃないの」


得点決めてこっち見るって。

それもあんな笑顔見せるなんて。

誰だって惚れるっつーの。


ひとりで赤くなっていると、また黄色い声が聞こえてきて、旭がシュートを決めたみたいだった。

旭は私を見ると、さっきの桐生みたいに笑顔を見せた。

‥‥いや、キュンとはしないけど。

でも、桐生とは違うから旭には笑顔を返す。

それに満足したのか、旭はプレーにまた集中しだした。

ほんと、何考えてるかわかんない。

と、ぼーっと試合を見ている時だった。

私に影が出来て、そちらを見上げると、さっきまで離れたところにいた女の子たち数人が睨むようにして私を見ていた。





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