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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
49/145

48:

MIO side




学校から帰って家でぼーっとしていると、携帯が鳴り響いた。

電話に出ると、それは伊織からで、駅前で一緒に晩飯を食べないかという誘いだった。


「お、きたきた」


私服に着替えた俺を手をあげて迎えた伊織は、予想はしていたけど制服姿だった。

部活帰りらしく、駅のホームには数人の吹奏楽部の女子生徒が見えた。


「珍しいことすんなよ」

「いいじゃん、たまには」


伊織に悪態をつきながら、俺と伊織は近くのファミレスに入った。

店員に窓際の席に案内されて、メニューを簡単に選んで頼んだ。


「で?」

「ん?」

「ん?じゃなくて。なんか話があって俺を呼んだんだろ」


そうじゃなきゃわざわざこんなことしないだろうが。

雨でも降らす気か、こいつは。


「まぁあることにはあるけど、別にご飯食べてからでもいいじゃん」


ね?と笑いかけた伊織にイラつきを感じながら、俺は携帯に目を落とす。

とくになにかをするわけじゃないけど、伊織と話す気にもなれず携帯をいじる。


「まぁそんなに急かすなら話しようか」

「は?」

「といっても、俺が言いたいことなんて目に見えてると思うけどね」


伊織の言葉に何も言い返せない俺は、とりあえず目の前のチャラ男を睨みつけておく。

それに笑顔ひとつで対応するこの男は、やはり大物だと思う。


「陽向ちゃんのことどうするの?」

「…お前なんでそんなに神崎のこと気にかけんの」


普段ならそんなのどうでもいいって感じで気にもかけないのに。

神崎がお気に入りか?


「んー、なんでだろうね?俺にもよくわかんない」

「‥お前、可愛い女の子好きだもんな」

「女の子はみんな可愛いよ?」

「はいはい、そのチャラいのもう少し直せばお前もモテるのにね」


なんて残念な男なんだろうね、お前は。


「で、どうすんの?」

「どうもこうも‥」

「澪はさ、陽向ちゃんのこと好きじゃん」

「なんでそうなんだよ」

「えー?お前あれで好きじゃないとか言っちゃうの?」


ありえない、と言った伊織は店員が持ってきたハンバーグにソースをかける。

香ばしい匂いと一緒に、ジューッという音が聞こえた。


「好きなんでしょ?」

「…そうだな」

「素直じゃないなー。五十嵐くらい素直でもいいと思うんだけど」

「あれと一緒にすんな」


厭味を含めて言った俺は、届いた海鮮パスタをくるくると巻いて食べた。

正直、今は五十嵐という言葉を聞くだけでイライラする。

あの日から、たまたまなのかわかんないけど、五十嵐と神崎が一緒にいるのをよく見るようになった。

俺の気にしすぎかもしれないが、五十嵐の方は間違いなく神崎に会いに来てる。


「このままじゃ五十嵐に取られそうって?」

「別に、」

「どうせならいっそのこととられてしまった方がいいって、思ってる?」


伊織の言葉に、パスタを巻く手が止まった。


「図星か」


伊織は深いため息をついて呆れた顔を俺に向けた。


「俺が思うにさ、陽向ちゃんは五十嵐とは付き合わないと思うよ」

「は?そんなのわかんねぇじゃん」


少なくとも。

少なくとも、あいつなら俺よりも幸せにできると、そう思う。

五十嵐と一緒にいた方が、神崎にはいいと思う。


「そう思うなら早く別れなよ」

「…そうだな、」

「はぁー‥澪さ、本当にそれでいいの?」


びしっと箸を突き付けられた俺は、何も言い返せずに外を見る。

俺の反応に、また前からはため息が聞こえてきた。


「好きなんだろ、陽向ちゃんのこと。好きなら一緒にいればいいじゃん。何にそんなこだわってんの?」

「…約束だからな」

「約束、約束って言うけどさ、好きになっちゃったんなら関係ないだろ」

「好きになっちゃったから関係あるんだよ」


そうだ、好きになっちゃったから、こんなにも地団駄踏んでんだよ。

どうせなら好きにならなきゃよかった。

どうせなら嫌いになればよかった。

そうすれば、今こんなにも悩んでなかったのに。


「好きになるなんて思ってなかった」


俺の最大の誤算。


「まぁ……今までのお前なら想像出来ないわな」

「好きにならない前提だからな」


好きなられたら困ると言ったのは、この俺だ。

そしてその言葉にありえないと言い返したのは、間違いなく神崎本人だ。


「本当に最初は、ばらさない奴かどうか見るだけだったからな」


大丈夫だと思った時点で見切りをつけるべきだった。

まさか自分がここまでのめり込むなんて思ってもみなかった。

ほんと、本末転倒だな。


「どうすんだよ、澪。このまま別れちゃったら接点なくなるんじゃないのか?」

「まぁそうだな‥そうなるんじゃないか」

「いいのかよ、それで。陽向ちゃんの話も聞いてみてもいいんじゃないか?」

「神崎は俺を好きにはならないよ」


ありえないって言われたし、第一、俺はあいつのタイプじゃない。

まぁそれを言い出したら、五十嵐もタイプじゃないんだけど。


「だからってみすみす五十嵐に陽向ちゃんあげちゃうんだ?」

「………俺じゃない方が、いいと思うだけだよ」


幸せに出来るのが。

笑顔にさせてあげられるのが。


五十嵐のほうがいいと思うだけだよ、俺は。









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