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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
48/145

47:

瑛太と別れて駅で待つこと5分。

電車がホームに入ってきて、わらわらと人が改札口を出ていく。

けっこうな人が降りてきたのに、その中でも一際目立つ、背の高い男子生徒を見つけた。


「お帰り」

「なんで学校の帰りまで陽向のお守りしなきゃなんねぇんだよ」

「いいじゃん、一緒に帰るくらい」


ていうか、どこかまで迎えにこいとか言ってるわけじゃないんだから、別にいいじゃん。

私がわざわざ駅まで来たわけだし。

え、問題ある?


「旭、彼女?」

「うっわ、めちゃくちゃ美人じゃん!」


旭の後ろからそんな声が聞こえてきて、そちらを見ると、旭くらいの身長の男子生徒が数人いた。

旭と同じ制服をきて、同じエナメルバッグを持っているから、おそらくバスケ部なんだろう。


「は?んなんじゃねぇよ」


不機嫌を隠さずに言った旭は、数人の男子を睨みつける。

ほんと、すごむ顔は一人前なんだから。


「うっそだー。お前が女と一緒にいること自体珍しいんだぜ?それも待ち合わせとか。彼女じゃなきゃなんだってんだよ」

「そうそう。他校の女子をばっさり切って女っ気が全くないと思ったら。こういうことだったわけね」


にたにたと笑いながら話している男子生徒を見ていると、隣から盛大なため息が聞こえてきた。

どうやら諦めるらしい。

旭は昔から、諦めるとすぐに大きなため息をつく癖がある。

諦めの早い困った愚兄だと何度思ったか。


「ちょっと、もうちょい頑張ってよ」

「は?無理、面倒。そんな嫌なら自分で言ってよ、俺帰るから」

「ちょ、旭待ってよ!」


なんつー俺様!

妹に対してこの対応ってちょっと酷くない!?


「え、マジで彼女なの?」

「しかも俺らに紹介したくないくらいの?」


ていうか自分らもなんでそういうふうに捉えんの!?

旭、肯定してないからね!?


「私は、」


旭が何も言わないから否定しようと言葉を発した時だった。

後ろから手で口を塞がれてしまった。

それと同時にふわりと制汗剤のにおいがした。


「言う必要ないから」


いや大有りなんですけど、マイブラザー。

どう見ても目の前のお兄さんたち勘違いしてるから。

私、旭の彼女役とか死んでもごめんなんだけど。


「言わない?」


頷かないと口を塞いでいる手をどけてくれそうにないから、私は仕方なく首を縦に振る。

旭はにっこりと笑ってから、耳元で囁いてから手を離した。


「これは明日から荒れるな」

「旭のファンクラブ、すげぇことなりそう」


なんだ、旭のファンクラブって。


「そういうわけだから黙っといてもらえると助かるんだわ」


どういうわけか全くわかんないけどね、私は。


「あいつらと陽向は関係ないから」


旭はよくわかんないけん制をしてから、呆然とする私の手を引くと駅の外へと向かって歩く。

急に引っ張られた私は前のめりになって旭に思い切りダイブすれば、旭は簡単に受け止めてくれた。


「相変わらず足腰弱いな」

「急に引っ張るからでしょ!」

「陽向大胆」

「ばか、どこ触ってんのよ」


ぺちっと腰に回された手を叩くと、いたずらっ子のような顔をした旭と目が合った。

ああもう、無邪気な子どもみたい。

どこ行ったよ、少し前までのクールで冷たい俺様は。


「さて、もういいかな」


駅から5分くらい手をつないで歩いてきたくらいに旭は言った。

ぱっと手を離されて、今まであった温もりがいっきに消える。

それが少しだけ寂しく感じられた。


「また勘違いさせたままにした」

「いいじゃん、陽向に支障出ないんだし」

「…私今度、部活の合同練習、日暮高校となんだけど」

「マジ?ご愁傷様」

「支障出まくりなんですけど」


どうしてくれるんですか、マイブラザー。

取り返しのつかないことになってるんですけど。


「だって面倒だったんだよ、あいつらに説明するの」

「面倒って…妹だって言えばよかっただけじゃない」

「は?それで済むと思ってんの?俺の彼女じゃないってわかったらあいつら目の色変えて陽向誘ってきてたぞ」

「え、それはやだ」

「だろ?ならこれが最善策だった」

「いやそれもどうかと…」


最善策ではないと思うんだけど。

もっと考えたら良い案とか浮かんだと思うし。


「だって俺、毎日校門とかで出待ちされていらいらしてたんだよ」

「知らないよ、そんなの」

「毎日だぞ、毎日。拷問の何物でもない」

「だったらその辺の女の子横に置いとけばいいじゃない」

「だから陽向横に置いたじゃん」

「私以外!」


ていうか私を視野に入れないでよ!

現在進行形で迷惑被ってるでしょうが!


「あー、それは無理」

「なんで?」

「だってさ、女子ってそういうのあると勘違いするじゃん?」


旭は気まずそうな顔をした後に、真っ暗の空を見上げた。

同じようにして空を見上げると、星は雲に隠れているみたいだった。


「私は特別なんだって。もしかしたら好きなんじゃないかって。そういうの、迷惑なんだよね」

「…っ、」

「好きにならないって約束してもさ、結局どこかで勘違いするんだよ。じゃあどうしてそばに置いたんだって泣いてさ。自分が好きにならないからって言ったくせに」


身勝手だよね、と付け足した旭はどこか遠くを見ているようだった。

ただその言葉は思っていたよりも私にのしかかってくる。


「勘違いさせるようなことするからじゃないの?」

「そりゃあそういうふうを装ってるんだから、勘違いさせるようなことはするよ。そうしなきゃ意味ないでしょ」


惚れさせるだけ惚れさせといて、惚れたらポイなんて酷すぎる。

そんなの、


「許せない?」

「っ、」

「でもさ、最初の条件を飲んだのは向こうなんだよ。そんなのルール違反だ」

「…ルール違反、」

「好きになる可能性があったなら、俺だって横に置かないよ」


ね?と笑った旭の顔はどうしてか、私に微笑む桐生の笑顔とだぶった。







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