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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
46/145

45:

部活を終えた夕方。

6時をとうに超えた空は、思っていたよりも暗くなっている。

親に遅くなることを連絡してから弓道場を出ると、弓道場の扉の前で瑛太が待っていた。


「ごめん、待たせたね」

「いいえ、女子ほうが時間がかかるのは当たり前ですから」


にっこりと笑ってそう言った彼は、からからと扉を閉めて鍵をかける。

本当に、こういう紳士的なところは好感なのに。

どうしてこうも腹黒いんだろう、もったいない。


「さて、なにかリクエストはありますか?」

「リクエスト、ねぇ‥」

「何か食べたいものは?」


校門の方へと歩いて行く中で、瑛太とそんな会話をする。

本当によくできた男だと思う。

高校生でここまで女子を完璧にエスコートできる男子がいったい何人いるだろうか。

‥行く末が恐ろしい。


「とりあえずお腹空いた」

「はいはい。女子じゃないコメントどうも」

「あのねー‥まぁいいや。瑛太は何食べたいの?」

「そうですねー‥気分的にあっさりがいいですね」

「あっさりか‥あ、じゃあ回転ずしは?」


少し前に駅の近くにオープンしたはず。

回転ずしを言えば、瑛太は考える素振りを見せてから「ああでも」と口にした。


「陽向さんの家と真逆ですよね、方向」

「そうだね」

「僕に送れと」

「言ってませんー!旭の時間に合わせて帰るよ」

「お兄さんですか」

「うん。旭、居残り練して帰るみたいだから、帰りけっこう遅くなるんだってさ」


さっきメールしたら、了解っていうすっごい素っ気ない返事があった。

いいじゃんね、どうせ自分電車で帰ってくるんだから。

何の問題もないのにね。


「じゃあそこにしましょうか」

「けってーい」


私と瑛太は駅の方へと歩いて行き、10分くらいで目的地までたどり着いて中に入った。

店員に案内されて席に着いた私達は個々に食べたいものを頼んでいく。


「瑛太とこうやってご飯食べに来るのって久しぶりだね」

「そういえばですね。中学の頃は大会があるたびにご飯に来てましたけどね」


懐かしいー、なんて言いながら、届いた注文のものを口に入れていく。

久しぶりのお寿司にちょっとだけ喜んでみたり。


「んー、美味しい」

「陽向さんって本当に美味しそうにご飯食べますよね。前々から思ってましたけど」


瑛太はくすくすと笑いながら、瑛太が頼んだんだろういくらをぱくりと口に放り込んだ。


「さて、本題に入りましょうか」

「まだそんなに食べてないんだけどね」

「喋りながらでも話せますから」


うん、そうなんだけどね。

なんていうか、ご飯がのど通らなくなりそうじゃん。


「で、何があったんですか?」

「あんたは千里からなにを聞いたの?」

「たいしたことは聞いてませんよ。ただ、陽向さんを怒らせたかもしれないって、酷いことをしたって、僕に泣きついてきただけです」


瑛太の言葉に思わずため息がこぼれた。


「詳しいことは泣いていて何も聞けなかったんです」

「あーそう」

「で?なにがあったんです?」

「別に‥ほんっとに何もないんだよね」


人に言わなきゃいけないようなことでもないし、第一、言うような大きなことじゃない。

あまりに些細で、あまりにしょうもないのだ。


「陽向さんも嫉妬はするんですね」

「……あんたってほんっとにいい性格してる」


なにが泣いてて何も聞けなかったよ。

きっちりしっかり千里から話聞いてるじゃないの。


「大筋は聞きましたけど、全部が本当かはわかりませんから。それに、本当ならこれは陽向さんと千里さんが直接話すようなことでしょう」

「千里が敵前逃亡するからじゃない」

「そうですね、千里さんの悪いところです」


ふぅっとため息をついた瑛太はそばにあったガリをお皿に乗せて口に運んでいく。

箸休め、ということだろうか。

それとも、話を切るためだろうか。


「まぁ陽向さんが桐生君と別れようが僕には関係ないんですけど」

「うん、まぁ‥言うと思った」

「部活に支障を出されるのは困るんですよね」

「それ、私じゃなくて千里に言ってくれない?」


私はちゃんと部活に出てるし、ちゃんと部活動をしてるし。


「…まぁ桐生君とのことが片付いてもらわないとこっちも困るんですけどね」

「へ?」

「陽向さん気付いてます?最近ぼーっとしてること多いんですよ。全然集中できてないし、ブレブレだし。上の空な日多いですよ」


瑛太は鯛とはまちとマグロを頼んで言った。

相変わらず、痩せてるくせによく食べる。


「合同練習会も組みたいんで、そのままでいてもらっては困るんです、非常に」

「非常にって‥なんで?」

「合同練習の相手が日暮高校だからです」

「げ、」


日暮高校。

弓道問わず、いろんなスポーツに長けた名門校。

もうプロでもなるんじゃないかっていうような怪物の卵たちがうようよいる学校で、私の目の前に座る瑛太のライバルが在籍する学校だ。

そして、私の愚兄、旭の通う高校でもある。

つまり男子校。

弓道部ももちろん男子ばかり。


「無様な姿を見せるつもりですか?」

「…はいはい、頑張りますよ」


あんたのそのむき出しの敵対心と闘争心のために。

言ってて空しいけど。






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