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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
33/145

32:

高層マンションの一室。

それが桐生の家らしい。

ホテルのようなエントランスを通って、突き進むと、何かの機械が置いてあった。

それはあまり見ないけれど、たまに、ごくまれに見る、指紋認知の機械。

…ハイスペックだね、この建物。

こいつ実は金持ちだったんだね。


「どうぞ」


桐生の家の前に着いて、扉を開けた桐生はそう言って私と赤縁メガネ君を中へと促した。


「お、お邪魔しまーす‥」


入っていいものかと戸惑ったけれど、赤縁メガネ君に背中を押されたら入らざる得なくなった。

初めては入った桐生の家は意外と綺麗にされていた。

旭の部屋とは大違いだ。


「テキトーに座っといて」

「はいはーい」


そう返事をした赤縁メガネ君は本当にテキトーに腰を下ろした。

どうしたものかと戸惑っていると、ひょいひょいと手招きをされたので、隣に腰を下ろす。


「‥警戒心とか、そういうのないの」

「え、」

「知らない男にこっちおいでって言われたくらいで、そんな近くまで来ちゃだめだよ。もう少し危機感持たないと」


ね?とにこやかに言った彼は、私の頬に手を沿える。


「何してんだよ」

「いたっ。ちょ、澪乱暴だよ」

「くだらねぇことしてっからだろ。神崎こっち来い。首出せ」

「出頭しろみたいな言い方しないでくれる?」


首出せって。

悪態をつきながら、私は桐生の元へと歩いて行き、隣に座り込む。

そんな私を見ていた赤縁メガネ君からはため息が聞こえてきた。


「神崎さん、俺が今さっき言ったこと忘れちゃったの?」

「それなら私はここに来るべきじゃないよね」


男の家に来るってだけでも問題なのに、そこにいるのが男子高校生2人って。

そこから否定しないとね。


「そうきたか」

「やめとけ、伊織。こいつ口は達者だぜ?」


救急箱から傷薬を取り出してコットンにかける桐生は薄ら笑いを浮かべながら言う。

その顔はどこか愉しそうだ。


「つーかお前今日部活短いな、珍しい」

「どっかのバカが先生と大揉めしてな。中止にした」


赤縁メガネ君は思い出したのか、顔を顰めて鼻を鳴らした。

その様子に桐生は苦笑して、私の首筋に湿らせたコットンをあてる。


「ん、」


ピリリとした痛みが走って、思わず声が出てしまう。


「えっろい声」

「そう思うあんたがえろいんでしょうが」

「はいはい、男はみんなそんなもんですよーっと。ほら、上向け。絆創膏はれねぇだろうが」

「絆創膏くらい自分でも貼れるし」

「傷口見えねぇくせに何ってんの、お前」


桐生は上を向いていた私の顎にでこピンをしたあとに、傷口に絆創膏を貼ってくれた。

やだ、なんかこれ、


「キスマークみてぇ」

「なんであんたの思考ってピンク色なの」


確かに私も思っちゃったけど。

人のこと言えないかもしれないけど。


「男の脳内なんてそんなもんだっての」

「うわー、知りたくなかったなー」


いや知ってたけども。

女に興味ないとか言ってた旭ですら、なんだかんだいって女の子と後腐れない付き合いしてたくらいだもん。


「でさ、ずっと思ってたんだけど」

「うん?」

「お兄さん、名前なんていうの?」


ずっと気になってたんだけど。

さっきから桐生が「伊織」って呼んでるからそれが名前なのはわかるんだけど。

ごめんね、人の名前とか顔って全く覚えられないの。


「まぁそうだよね。同じクラスになったことないもんね」

「俺的には別に今のままでいいんだけどな」


救急箱を仕舞いながら、桐生はポロリと言葉をこぼす。


「4組の百目鬼伊織だよ。伊織でいいよ。神崎陽向さん、だよね?」

「え、あー‥はい」


百目鬼伊織君、ね。

顔に似合わない苗字してんなー。

苗字だけ見たらなんかすっげぇいかついのに。


「こいつ、こんなんだけど吹奏楽部の部長」

「え!?」

「え、そんな驚くくらい意外?」


いや、吹奏楽って。

いいのか、それで。

こんなチャラい人が部長で。


「……女の子漁りに?」

「ぶっ、」

「ちょ、神崎さーん?なんでそうなんのー?」


桐生は私の言葉に噴き出して、お腹を抑えながらヒーヒー言いながら笑う。

なんか、意外だよね、桐生ってこんな風に笑わないと思ってたし。


「俺、音楽に対してはすっげぇ真面目だよ?」

「……うん、偏見はよくなかったね」

「その納得するまでの間、なに」

「いや消化不良起こしそう」

「それ全く納得してないよね?」


だってチャラいこのお兄さんが、規律のそこそこに厳しい吹奏楽部の部長って。

いやいやいや、ありえないでしょ。

我が校の吹奏楽部と言えば、泣く子も黙る風紀委員の鬼がいる部活じゃないか。


「よく新島さんがそれ許してるよね?」


新島舞(にいじままい)

現風紀委員長であり、確か吹奏楽部の副部長。

けっこうな堅物で、髪型とか制服の着方とか、もうお手本って言いたくなる。

そして、聞いた話じゃ隠れ王子様信者。

伝聞で聞いてるあたり、ちっとも隠れてないけどね。


とにかく、彼女は風紀を乱す人が大が付くほど嫌いらしい。

これは彼女が風紀委員長に就任したときに、全校生徒の前で豪語した。

そんな彼女が、だ。


染めたであろう、こげ茶色の髪。

耳につけられた、隠してはいるだろうけどたまにのぞく、シルバーのピアス。

カッターシャツは第2ボタンまで開けられており、カーディガンは校則違反も甚だしいくすんだ緑色。

ネクタイはかなり緩く結ばれていて、どっからどう見ても、チャラ男。


そりゃあ‥ねぇ?

信じられないよねぇ、普通。






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