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「さぁさぁみなさんお待ちかね!今年もやります学園名物☆借り人競争!」
学園名物☆借り人競争。
もうその名の通り、借り人。
人を、借りる。
人って借りるって言わないんじゃね?とかそういう質問は受け付けない。
とりあえず、借りるのだ、人を。
お題にそった人をゴールまで連れて行く。
手をつないで。
はい、ここ大事。
手をつないで、行くんです、ゴールまで。
重要なことなんで2回言いました。
「さぁ、今年はいったい何人がゴールまでランデブーするんでしょうか!」
実況席のお兄さんはテンションをあげてそんなことを言う。
なんて楽しくないランデブーだ。
「好きな人がいる人は告白する大チャンス!相手がいる人は恋人との仲を深めるチャンス!いや、もしかしたら浮気の大チャンスか!」
「…公開処刑ってこういうの言うんだよねー」
聞こえる実況にため息をこぼして呟いてしまう。
この競技が学園名物なんて言われているのは、この人を連れて来るお題がそっち系が多いからだ。
"あなたの好きな人"とか。
"彼氏(彼女)にしたい人"とか。
"憧れの人"とか。
どんだけ学園祭マジック起こしたいんだよ。
まぁとにかくその類が多い。
おそろしく多い。
そして私の隣にいる美人は、まぁ借り出されるわけだ。
「綿貫さん、ごめん、借りられてくれないかな」
「あ、はい!ごめん、陽向私行ってくるね」
さっそくだ。
聖は私の返事を聞かずに、現れた先輩の手を掴んでゴールまで走っていく。
まさしくランデブー。
‥ていうか、話し相手いなくなちゃった。
「綿貫がいなくなって寂しいか?」
「‥出たよ」
1組のお調子者かっち。
相変わらず体操服がよく似合うやつだ。
かっちはさっきまで聖が立っていた場所、つまり私の隣に並んで、グラウンドの方を見た。
「桐生は誰連れていくんだろうな」
「知らないよ、そんなの」
ていうか、なんでそんなことを私に言うの。
「私に決まってるくらい言えよ」
「ワタシニキマッテルヨ」
「棒読み!感情がこもってなさすぎ!」
「だってねー‥」
五十嵐君となんか勝負してるみたいだしー?
ていうか、いったいどうしたら勝ちなんだろうね?
「運営委員に聞いたんだけどさ、あの箱の中さ、8割がそっち系らしいよ」
「‥それってどうなの?」
学園祭マジックの裏側見えちゃったよ。
ていうか運営委員楽しんでるだけでしょ。
「だからさ、桐生が誰を連れて行くか気にならない?」
「ならない。だいたい、桐生が一緒に来てって言ったらだいたいの女の子行くでしょ」
「そりゃそうだけどな。でも彼女としては複雑じゃね?」
「桐生だし仕方ないんじゃなーい」
だいたい私と桐生はそんな仲じゃないし。
「神崎って意外と冷めてんのな」
「そうかな?」
「そうだろ。女ってもっとこうさ‥嫉妬深いっていうか、束縛したがりっていうかさ、」
「それあんたの今までの彼女遍歴でしょ」
ああもう、どうでもいいこと知っちゃった。
かっちの恋愛遍歴とかほんとどうでもいい。
「どうでもいいってひどくね!?」
「うるっさいな。耳元で大きな声出さないでよ」
キーンってなるじゃん、もう。
ただでも声でかいんだから気を付けてほしい。
「でさ、神崎、五十嵐のことどうすんの?」
「…なんで知ってんの、ほんと」
「有名な話だぜ?五十嵐が6組に乗り込んだって。他の学年でも知ってるやつけっこういるし」
「五十嵐君ねー‥可愛い顔してるよね」
あれでサッカーがうまいなんて。
ほんっと、神様は何物与えんのかね。
「お、乗り換えんの?」
「バカ言わないでよ。私もともとイケメンには興味ないの」
「ほえー、学校1のイケメンと付き合っといてよく言うよ」
「うっさいな。あれは成り行きでああなったんだから放っといてよ」
「ふぅん?じゃあ五十嵐のことはフるの?」
「‥そう、なるんじゃない?もし今桐生とこうなってなかったとしても、多分ふってたと思うし」
それが結論だと、やっぱり思う。
どれだけ悩んだところで、きっと私はその答えしか出さなかったと思う。
「もったいねぇ。五十嵐だって優良物件なのに」
「なに、欲しいならあげるわよ」
「いらねーよ。俺男には興味ないし」
「あるって言ったら私あんたの隣いない」
「えぇ!?それはひどくね!?差別だよ、神崎」
「日本人ってそういうアブノーマルなもの好まないから」
「ちょ、人類みんな友達だろ!?」
「やだ、やめてよ。私とあんたが友達みたいじゃない」
「友達じゃん!」
「一方通行だって知らなかったの」
「ちょ、リアルに傷付く!」
かっちは「ブロークンハートだぁ!」と言って、1人で楽しそうだ。
それを見ながら、ヒートアップしてる実況に耳を傾ける。
次の走者の名前が呼ばれる。
「さぁー、みなさんお待たせしました!次の走者はこの学校が誇る難攻不落の王子様、桐生君!そしてそしてそのお隣には!」
学校の実況中継ってこんなんだったけ?
あれか?
桐生が出るから特別仕様になってんのか?
「サッカー界のサラブレッド!甘いマスクでお姉さま方をメロメロにしてる五十嵐君だー!」
そこまで言い切ったあと、周りから女子の黄色い声が聞こえてきた。
そして応援席の前を女子が陣取っている。
「あの2人、一緒に走るんだ」
「こりゃあ今年の借り人も荒れそうだな」
全くだ。
ほんとにもう、なんで今日雨降らなかったんだろ。




