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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
25/145

24:

「ありえない」

「なにがよ」

「この天気」

「ありえなくないわよ。体育祭日和ってこういう日のこというのね」


とうとうやってきてしまった、待ちにも待ってない体育祭。

空は青空広がる快晴。

ここまで天気がいいと、暑さに苛立ちすら感じる。

体が少しだけ汗ばんでいる。


「焼ける」

「色白なんだから焼けたくらいがちょうどいいじゃない」

「シミが出来る」

「それ、運動部の前でも言ってみなさい」

「やだよ、殺される」


ていうか、私も一応運動部なんですけどね。

活動場所が中ってだけで。


「陽向ってなに出るんだっけ」

「スウェーデンリレー」

「だけ?」

「だけ」

「よくそれ許してくれたわね」

「1種目しか出なくていいならスウェーデンリレー出てもいいよっていう交換条件」

「…せこい」

「なんとでも」


こっちだって、300m好きで走らないんだからさ。

それくらいしてもバチ当たらないんじゃない。

だいたい、1人1種目以上っていうルールは守ってるわけだし。


「旭君と日和さん来るの?」

「さぁ?日和はともかく旭は来ないんじゃない?あいつふつうに授業だし」

「あ、そっか。残念」


聖は本気で残念がっているのか、肩を落としていた。


「別に来なくていいじゃん。あの2人が来ると女子が集まるから毎回大変なんだって」

「確かに中学の時の日和さんすごかったけどさー‥」

「でしょ?イケメンに年齢って関係ないんだって思い知らされたね」


中2の時だから、あの時の日和って大学1回生でしょ?

そんな人に女子が群がるんだもん。

イケメンパワー恐るべしって感じだよね。


「日和であれだったんだもん。旭が来たらそれこそ暴動が起きる」

「日和さんの時、別になにも起こってないじゃん」

「日和は裏と表を使い分けるような人だからね」


どこぞの王子様みたいにね。


「旭はいい意味で裏表のない人。もう少しあの興味ないってところなんとかならないのかな」


ほんと、無駄にモテるのに、なんであんな性格になっちゃったんだろうね。

あれで日和みたいに温和な雰囲気があったら、今よりモテたのに。


「そのクールな感じがいいんじゃん。なんでわかんないかな」

「冷たいだけじゃん。ていうか、あいつそんなクールでもないし」


見た目がクールそうに見えるだけで、実際そうでもないって。

私と口喧嘩してヒートアップして親に怒られるくらいだし。


「そんなこと言うの、陽向くらいだよ。やっぱいいなー、陽向。旭君といつも一緒にいれるじゃん」

「あんなのと四六時中一緒にいるとか苦痛でしかないね」


私の片割れではあるんだけど。

考えてることが手に取るようにわかっちゃうような仲だけど。


「あ、話変わるんだけどさ」


聖は何かを思い出すようにそう言うと、ちらちらっと周りに人がいないかを確かめた。


「五十嵐君から告白されたんだって?」

「……は?え、ちょ、は?」

「何で知ってんのって顔だね」

「いや、なんで知ってんの」


私、誰にも言ってないんだけど。

え、マジでなんなの。


「五十嵐君がどうも宣戦布告したみたいよ?」

「誰に?」

「王子様に?」

「…は?」


五十嵐君が王子様に宣戦布告?

え、あの子何考えてんの。

なに、おつむ足りてないの?


「すごかったみたいだよ?昼休みにさ、6組に乗り込んで教室で、しかもみんなのいる前で、王子様に宣戦布告したんだって」


なんかもう、頭痛い、抱えたい。

あの子何考えてんの。


「その日、王子様ご機嫌ななめだったみたいだよ」

「あー‥あの日か」


昨日か一昨日か忘れたけど、いつも待ち合わせてる校門の前にいた王子様が、王子様らしからぬ顔をして立ってたんだよね。

いや、顔はさ、すっごい笑顔だったんだよ。

なんならいつもより笑顔だったんじゃないだろうかってくらい。

たださ、その笑顔がもうなんていうか…超怖い。

一種のホラーかと思った。


「で?どうすんの?」

「どうするも…ねぇ?」


ため息まじりに言って、グラウンドに引かれた白線の向こうを見る。

どうやらもうすぐ競技が始まるらしく、何人かの生徒がスタンバっていた。

その中にひときわ目立つ存在が2つ。

王子様と五十嵐君だ。

女子が取り囲んでるから捜さなくても居場所がわかる。


「モテ子も大変だね」

「‥全然代わってあげるけど」

「いらない。王子様なんて厄介なタイプ、ごめんだわ」


…私が思うに、王子様と旭って、けっこう似てると思うんだけどなぁ。

まぁブラック王子と旭の素がって話だけど。


「何の種目だろうね」

「あんた放送聞いてなかったの?」

「え、むしろ聖は聞いてたの?」


私達、アナウンスとか応援とかそっちのけで話してたよね?

あんたどんな耳してんの。


「次はねー‥学園名物☆借り人競争なのです」

「ほし、別にいらないんじゃない?」

「ばっかねー、そこはほら、ノリじゃない」

「はいはい、ノリね」


てーことは。

あの2人は借り人競争に出るのか。


「あの2人、出場者だけど完全にこっち側の人間だよね」


こっち側、というは、もちろん借りられる側の人間のこと。

どう考えてもこっちだよね、2人とも。


「なんでも五十嵐君が王子様に果たし状を送ったとか」

「嘘つけ」

「嘘だけど。でもあんたを賭けて勝負を申し込んだのは本当らしいよ」

「はぁ!?私それ知らない!」

「そりゃあ五十嵐君が6組に殴り込みに来たのも知らなかったんだもん。当たり前でしょ」

「なんなのよ‥」


ほんと、もう。

なんなのよ――――!









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