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「ありえない」
「なにがよ」
「この天気」
「ありえなくないわよ。体育祭日和ってこういう日のこというのね」
とうとうやってきてしまった、待ちにも待ってない体育祭。
空は青空広がる快晴。
ここまで天気がいいと、暑さに苛立ちすら感じる。
体が少しだけ汗ばんでいる。
「焼ける」
「色白なんだから焼けたくらいがちょうどいいじゃない」
「シミが出来る」
「それ、運動部の前でも言ってみなさい」
「やだよ、殺される」
ていうか、私も一応運動部なんですけどね。
活動場所が中ってだけで。
「陽向ってなに出るんだっけ」
「スウェーデンリレー」
「だけ?」
「だけ」
「よくそれ許してくれたわね」
「1種目しか出なくていいならスウェーデンリレー出てもいいよっていう交換条件」
「…せこい」
「なんとでも」
こっちだって、300m好きで走らないんだからさ。
それくらいしてもバチ当たらないんじゃない。
だいたい、1人1種目以上っていうルールは守ってるわけだし。
「旭君と日和さん来るの?」
「さぁ?日和はともかく旭は来ないんじゃない?あいつふつうに授業だし」
「あ、そっか。残念」
聖は本気で残念がっているのか、肩を落としていた。
「別に来なくていいじゃん。あの2人が来ると女子が集まるから毎回大変なんだって」
「確かに中学の時の日和さんすごかったけどさー‥」
「でしょ?イケメンに年齢って関係ないんだって思い知らされたね」
中2の時だから、あの時の日和って大学1回生でしょ?
そんな人に女子が群がるんだもん。
イケメンパワー恐るべしって感じだよね。
「日和であれだったんだもん。旭が来たらそれこそ暴動が起きる」
「日和さんの時、別になにも起こってないじゃん」
「日和は裏と表を使い分けるような人だからね」
どこぞの王子様みたいにね。
「旭はいい意味で裏表のない人。もう少しあの興味ないってところなんとかならないのかな」
ほんと、無駄にモテるのに、なんであんな性格になっちゃったんだろうね。
あれで日和みたいに温和な雰囲気があったら、今よりモテたのに。
「そのクールな感じがいいんじゃん。なんでわかんないかな」
「冷たいだけじゃん。ていうか、あいつそんなクールでもないし」
見た目がクールそうに見えるだけで、実際そうでもないって。
私と口喧嘩してヒートアップして親に怒られるくらいだし。
「そんなこと言うの、陽向くらいだよ。やっぱいいなー、陽向。旭君といつも一緒にいれるじゃん」
「あんなのと四六時中一緒にいるとか苦痛でしかないね」
私の片割れではあるんだけど。
考えてることが手に取るようにわかっちゃうような仲だけど。
「あ、話変わるんだけどさ」
聖は何かを思い出すようにそう言うと、ちらちらっと周りに人がいないかを確かめた。
「五十嵐君から告白されたんだって?」
「……は?え、ちょ、は?」
「何で知ってんのって顔だね」
「いや、なんで知ってんの」
私、誰にも言ってないんだけど。
え、マジでなんなの。
「五十嵐君がどうも宣戦布告したみたいよ?」
「誰に?」
「王子様に?」
「…は?」
五十嵐君が王子様に宣戦布告?
え、あの子何考えてんの。
なに、おつむ足りてないの?
「すごかったみたいだよ?昼休みにさ、6組に乗り込んで教室で、しかもみんなのいる前で、王子様に宣戦布告したんだって」
なんかもう、頭痛い、抱えたい。
あの子何考えてんの。
「その日、王子様ご機嫌ななめだったみたいだよ」
「あー‥あの日か」
昨日か一昨日か忘れたけど、いつも待ち合わせてる校門の前にいた王子様が、王子様らしからぬ顔をして立ってたんだよね。
いや、顔はさ、すっごい笑顔だったんだよ。
なんならいつもより笑顔だったんじゃないだろうかってくらい。
たださ、その笑顔がもうなんていうか…超怖い。
一種のホラーかと思った。
「で?どうすんの?」
「どうするも…ねぇ?」
ため息まじりに言って、グラウンドに引かれた白線の向こうを見る。
どうやらもうすぐ競技が始まるらしく、何人かの生徒がスタンバっていた。
その中にひときわ目立つ存在が2つ。
王子様と五十嵐君だ。
女子が取り囲んでるから捜さなくても居場所がわかる。
「モテ子も大変だね」
「‥全然代わってあげるけど」
「いらない。王子様なんて厄介なタイプ、ごめんだわ」
…私が思うに、王子様と旭って、けっこう似てると思うんだけどなぁ。
まぁブラック王子と旭の素がって話だけど。
「何の種目だろうね」
「あんた放送聞いてなかったの?」
「え、むしろ聖は聞いてたの?」
私達、アナウンスとか応援とかそっちのけで話してたよね?
あんたどんな耳してんの。
「次はねー‥学園名物☆借り人競争なのです」
「ほし、別にいらないんじゃない?」
「ばっかねー、そこはほら、ノリじゃない」
「はいはい、ノリね」
てーことは。
あの2人は借り人競争に出るのか。
「あの2人、出場者だけど完全にこっち側の人間だよね」
こっち側、というは、もちろん借りられる側の人間のこと。
どう考えてもこっちだよね、2人とも。
「なんでも五十嵐君が王子様に果たし状を送ったとか」
「嘘つけ」
「嘘だけど。でもあんたを賭けて勝負を申し込んだのは本当らしいよ」
「はぁ!?私それ知らない!」
「そりゃあ五十嵐君が6組に殴り込みに来たのも知らなかったんだもん。当たり前でしょ」
「なんなのよ‥」
ほんと、もう。
なんなのよ――――!




