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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
18/145

17:

トボトボと。

夕日もとっくに沈んだこの時間。

あたりはもう真っ暗で、綺麗な月が空に浮かんでいる。

すでに影も見えないくらいの時間帯に、並んで歩くのは私と王子様こと桐生君。

別に先に帰っててくれてよかったのにね。

とは口が裂けても言えないんだけど。

とりあえず、なんでもいいんだけど喋ってほしい。

無言ほどつらいものってない。


「昨日さ、」

「うん?」


何かを話し出した桐生の目は、少しばかり鋭かった。

王子様のキャラがシフトチェンジする瞬間だったり。

えっと…昨日、私何かした?


「見てたよな?」


…見てた?

なにを?と聞きかけて口を噤む。

あー、うん、見た。

なんていうか、もうがっつり。

何をって、そりゃあ…人前で言えないもの?


「覗き見はよくないんじゃねぇの?」

「えーっと‥」


すいーっと桐生から目をそらせば、それを追うようにして私の目を見る。

真っ直ぐな純粋な目じゃないのが惜しい。


「不可抗力じゃないですか、」

「不可抗力、ねぇ?」


いや、そんな意味深みたいな顔と言い方されても困る。

こっちだってあれは見たいものじゃなかったんだよ?

それを旭のバカが野次馬根性で見ちゃったから、仕方なく見たんだよ。

ほら、不可抗力じゃん。

ね!?


「見ないって選択肢もあったわけだろ」

「あんな人がまだ歩く時間に、見渡しのいい公園なんかで喧嘩してるあんたが悪いんでしょ」

「だからわざわざフードで顔隠してただろ」

「フードとれちゃってたら意味ないでしょうが」


なら帽子を目深にかぶるとか覆面するとか、そういう選択肢あるじゃないの。

…覆面はちょっとまずいか。

夜歩いてたら、100%警察行きだな、うん。


「横にいた男だれ?」

「男?あー‥あれ、私の兄。っていっても双子だけど」


あいつさえいなきゃ、見て見ぬふりして帰ってたよ、私も。


「兄妹か、」

「そうだけど?それがどうかした?」

「‥いや、なんでも」

「そう?」


なんか変なの。

ちらりと見た桐生はどこか気まずそうな顔をしていた。


「心配しなくても旭、言わないと思うよ?ていうかこの学校に来てるあいつの友達っていないし」


聖くらいじゃない?

まぁ聖を友達っていう枠にいれていいのか知らないけどさ。

友達って枠に入れたら聖に怒られそうだし。


「‥双子って言った?全然似てなかったじゃん」

「それよく言われる。旭はあんなにイケメンに生まれてきたのに、なんで私平々凡々な顔に生まれたんだろ」


いや、平々凡々も好きだけどさ。

ちょっと悲しくなるじゃん、兄が驚くくらいイケメンなのにさ。


「え、お前それ本気で言ってんの」

「なにが」


兄がイケメンだってか?

言ってるよ、ひいき目無しにしてもイケメンだもん、旭。

逆にあれをブサイクだなんて言ったら、世の中の女子に怒られる。

…あ、世の中の男性にだったかも。


「お前の顔が平々凡々?」

「え、もっとひどいとか言う?」


それはさすがに傷付くんですけど。

もう今から鏡見れないじゃないか。


「‥お前の思う美人って誰」

「えー‥聖かなぁ」

「…なるほど。なるほどね」

「いや何がなるほどなのか微塵も伝わってこなかったんだけど」


なんていう私の言葉をサラッと無視して、桐生はひとり頷いている。

え、なんか私置いてけぼり?


「心配すんな。お前自分が思ってるより顔はいい方だから」

「そんな励まし方ってある?」


なんか少し貶されてるように思えちゃうのは私だけ?

なんか気に食わないし、話題変えたれ。


「そういえばさ、桐生、今日2回も告白されてたんだって?」


うんそうだ、この話題だな、と自分の中では1番しっくりくる話題を出したつもりだったけど、ちらりと見た桐生の眉間にはしわが寄っていた。

そりゃあもうふっかく刻み込まれてましたとも。

え、やだ、私地雷踏んじゃった?

ちゃんと「ここ地雷ありますよ」って言っといてくれないから!


「‥だれから聞いた?」

「えっと‥瑛太、」

「瑛太?……朝倉か」


さっきの声より2割増しで低くなった桐生の声は、もはや王子様の面影はない。

ていうか、王子様スタイルでいるとき、声、意識的に上げてんじゃないの。


「おしゃべりめ」

「瑛太、言っちゃいけないことと言っていいことの区切りは知ってるよ。まぁ、面白いことは誰にでも言っちゃうところがあるけど」

「それをおしゃべりって言うんだろ」

「聞いちゃいけなかった?」

「別に」


別にって。

じゃあそのあと残るんじゃないかってくらい深く刻み込まれたような眉間のしわはなんだ。

怖いぞ、その顔。

小学生が見たら泣くよ、その悪人面。


「あと残っても知らないよー」

「は?」

「ここ。イケメンがそんな顔すると迫力あるんだからやめなよー」


私の言葉に、桐生はやっと眉間のしわをなくした。

うん、やっぱりイケメンの顔にしわは寄ってない方がいい。

旭を見てると日々思うんだよ、これ。

あいつ実は眉間にもうあとついてるんじゃないかって思うもん。


「で?今回のお相手は誰かなー?」

「片岡先輩」

「と?」

「片岡先輩」


…はて。

この学校に片岡が苗字の先輩って2人もいただろうか。

うーん。

……あ、私考えるほど先輩の名前知らなかったんだ。







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