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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
14/145

13:

「んー…疲れたー」


コキコキと首を鳴らして背伸びをする。

ノートの上に手から離したシャーペンを転がして、ノートに書かれた英文を見た。

…あとは翻訳するだけか。


「だけって言ってもそれが1番厄介か」


でもまぁそれをしないと明日の英語の授業が辛いのは目に見えてるしな。

明日の自分のためと言い聞かせて、私は電子辞書を開いて予習を再開する。


「陽向ー、古語辞典貸してー」

「…あんたノックぐらいして入ってきてくれない?」

「古語辞典貸して」


…無視かい。

人に物借りに来た態度か、それが。

ふてぶてしいな、おい。


「自分のあるでしょ」

「学校」

「辞書、学校においてんの?あんたそんな真面目だった?」

「うっせぇな。持ってねぇと先生がうっさいんだよ」


旭はそう言って、勝手に私の本棚を物色しだす。

私貸すって一言も言ってないんだけどね。

別にもう慣れっこだからいいけどね。

旭は本棚から目当てのものを取り出すと、ベッドの上に座ってペラペラと辞書を引きだした。


「なんて単語だったかな‥」

「持ってけば?」

「面倒。ちょっと待ってて」


そう言って旭は私の部屋から出ていってしまった。

待っててって…何を待つんだ。

呆れている私の前に現れた旭の手には、古文の教科書とノートがあった。

ローテーブルにそれらをひろげた旭は、あろうことか私の部屋で勉強の続きを再開したようだ。

…慣れっこだけどね、これも。


「陽向、これ意味わかんねぇ」

「どれ?」

「これ」


立ち上がった旭はノートを私の英語のノートの上にひろげる。

旭のノートは相変わらず男子にしては綺麗な字が並んでいる。


「あ、これこの前授業でやったよ。待って、ノートあると思うよ」


ガサガサと鞄の中を探って、私は持って帰ってきた古文のノートを開けて旭に見せる。


「これ借りていい?」

「明日古文あるから今だけなら」

「サンキュ」


爽やかな笑顔を向けてくれた旭は、お礼を言ってさっきまで座っていた位置に戻った。

中学の時からそうだけど、旭は国語が苦手らしい。

とくに古典にはめっぽう弱い。

チートにも弱点はあったわけだ。


「陽向ー?入るぞー」


ノックが聞こえてきて、部屋の扉が開いたと思ったら日和が顔を出した。

日和は、私の部屋に旭もいたことに驚いたのか、目を丸くしていた。


「どしたの?」

「いや…お前らほんと仲良いな」

「そうでもないと思うけど‥で?どしたの?」

「父さんが酒のつまみ買ってきてだと」


日和の言葉に、旭の方から「げっ」という言葉が聞こえていた。


「自分で行きなよ」

「悪いんだけど俺酒飲んでるんだよね」

「コンビニなら目と鼻の先にあるだろ」


日和の言葉に旭が反論する。

私もうんうんと、旭の言葉にうなずく。


「俺の代わりに父さんの相手してくれるなら俺が行くけど?」


その言葉に、また旭の方から「げっ」という声が聞こえてきた。

お父さんは酒が入ると厄介だ。

なんていうか‥ちょっとばかし熱くなっちゃうのね。

笑い上戸だし、別にいいんだけどさ。

話がそりゃあもう長いの。


「母さんは?」

「今日は綿貫さんとことご飯食べに行ってる」

「「まじか」」


なんて日だ‥!

だからお父さんお酒なんて飲んでるのか!


「つーわけで頼むわ。これお金」


ぽんっと、そばにある棚にお金を置いた日和は部屋から出ていってしまった。

閉まった扉をぽかーんとしながら見ていると、旭が大きなため息をついた。


「マジかよ」

「どーする?買い出し行く?」

「行かなきゃ父さんの相手させられるだろ。陽向どーする?」

「旭行くなら行こうかな」

「じゃあ着替えてくるし、先下いってて」


旭はそう言うと、私の部屋から出ていった。

言われた通り玄関まで先に行って靴を履いていると、旭がコートを羽織って階段をおりてきた。


「行くか」

「うん」


財布と携帯だけを持って、旭と一緒に外に出た。

もう秋も終わりに近づいてきただけあって、夜はすごく冷えた。

吐きだす息は、若干ではあるが白がかっている。

冬は近そうだ。


「コンビニっつっても、歩きなら15分くらいかかるんだけどな」

「自転車でこればよかったね」

「‥俺がこがなきゃなんねぇだろ」

「女子にニケツさせてこがすの?」


それ、たまに見かけるけど、なかなかにシュールだよ?

女子がすっごい形相でチャリ必死でこいでるのに、後ろにまたがってる男子は涼しい顔しているって。


「陽向を女子っていう分類に入れたくねぇ」

「それ私に対する侮辱?」


私は女じゃないとでも言いたいのか、この愚兄は。

そりゃあ女の色気もへったくれもないけど。


「貧相な胸しといてよく言うよ」

「見たことないくせに言わないでくれない?」

「見たって同じだろ」

「着痩せするんですー!」


ていうか、女子に向かって貧相な胸とか面と向かって言うか、普通。

しかもちょっと気にしてること。

いや、ないわけじゃないんだよ、胸。

ちゃんとCカップはあるから。


「ま、自分の妹の胸とか興味ねぇけど」

「あったらあったで全力で引くけどね」


妹をそういう対象に見るとか論外だからね。


「そういう対象に見ちゃうくらい色気ついたら兄として嬉しいんだけどな」

「悪かったわね、あんたのほうが色気があって」


気にしてんだよ、こっちだって。

わざわざ人の傷に塩塗るようなマネするんじゃねぇ。









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