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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
13/145

12:

「神崎、王子のお迎えだぞー」

「神崎は帰りましたー」

「いやいるだろ!」


かっちの言葉に返事をしたら、かっちからツッコミが返ってきた。

内心でそのことに舌打ちをして廊下の方を見ると、昼休みにも見た顔があった。

ちらっとそっちを見ただけなのに、王子様と目が合ってしまった。

……っち。


「陽向、顔。顔すごいことなってる」

「無意識だわ」

「今にも呪いそうな顔してたよ」


あながち間違ってないよね、それ。

いっそのこと呪詛とか唱えられたらいいのに。


「なんで今日に限って部活ないんだろ」

「今日に限ってないけどね。弓道部は火、木休みだから」

「‥なんで今日火曜日なんだろ」

「なんでもいいけど、とっとと廊下行ってくれない?いい加減あれうざい」


あれ、と言って聖は廊下に集まる女子の群れを指さした。

キャーキャーと騒ぐ女子の声はなかなかに騒音じみている。


「なおさら行きたくない」

「いいから行け」


背中を聖にぐいぐいと押されて、私はリュックを背負わずして廊下に押し出された。


「あ、出てきた」


廊下に飛び出した私の耳に聞こえてきたのは、耳障りのいい低めの声。

女子の声がうるさいくらいなのに、その声だけどうしてか異様によく聞こえた。

ていうか出てきたじゃない。

女子の視線が刺さって仕方ないんですけど。


「帰ろっか、神崎」

「却下」

「却下を却下します」

「は?」

「一緒に帰るって約束したでしょ」


いやそんな約束いつしたよ。

そもそも一緒に帰る仲じゃないでしょうが、私達。

と、反論をする前に王子様に手首を掴まれて、私は半ば教室の前から逃げるように下駄箱まで連れてこられた。

といっても、王子様の人気っぷりとか目立ちっぷりってのは半端ないわけで。

どこにいたって女子からの目はある。

で、それは下駄箱に来ても同じなわけで。

そりゃあもう背中に刺さる、刺さる。

いつか視線で人刺し殺せるんじゃないだろうかってくらいに睨んでくる。


「ストレスで痩せそう」

「それ以上痩せたら抱き心地悪くなるからやめたほうがいいよ?」

「さらっと勘違いさせるような言葉言わないでくれる?」


ていうか誰のせいでストレス感じてると思ってんだ、コノヤロウ。

床にローファーを叩きつけるように落として、かわりにスリッパを下駄箱にしまう。


「じゃ、帰ろうっか」


とか何とか言って、サッと差し出された王子様の右手。

その右手を私はじっと見た後に、無視してローファーをはいた。

周りから私のそんな態度を非難する声が聞こえてくる。


「つれないなぁ」

「あんたに優しくする理由がない」

「…そうだね」


儚げに笑ったように見えた王子様の笑顔には、何とも言えない意地の悪そうな顔が見え隠れしていた。

本性、出てますけど。


「…って。あんたいつまで隣歩いてるつもり?」


校門を出て、10分くらい歩いたところで、いまだに隣を歩く王子様に問いかける。

別に王子様の家がどの辺にあるとか知らないけど、今まで王子様をこの通学路で見たことはない。

……あ、訂正。

1回だけある。

抹消したい1回だけど。


「家まで送るつもりだけど?」

「は?」

「え、なにその困るんだけど的な顔」

「いや困るんだけど」


家まで送る?

いやいやまだ5時にもなってないよ?

送られる時間帯でもないし、だいたい送られる間柄でもないし、こんなところ家族に見られたら説明のしようがない。


「だいたいこの辺で同じ高校に通ってる子いないし。王子、家この辺じゃないんでしょ?」

「桐生」

「はい?」

「王子じゃないって言っただろ」


言ったけど…いいじゃん、別に。

みんな王子とか王子様とかって呼んでるんだから。


「はいはい、桐生君ねー」

「忘れんなよ」

「‥わかったわよ」


おう‥桐生は私の返答に満足したのか、それはそれは眩しい笑顔を見せてくれた。

あー、なんか直射日光浴びてるみたい。

キラッキラすぎて疲れる。


「で?あんた家こっちなの?」

「いんや、俺ここから2駅離れたとこだから」

「は?駅ってここから真逆じゃん。いいよ、帰りなよ、私そんなに遠くないし」


なんたって徒歩で学校に通えるくらいには近いんだから。

ていっても、徒歩にしてはけっこう時間かかるんだけど。

商店街とかショッピングモールとかの近くを通るからわざわざ徒歩で来てるようなものだし。


「あのな、女を1人で帰すほど俺できてない人間じゃないし」

「え、そうなの」

「なにその意外って反応。お前俺をなんだと思ってんの」

「なにって…人格破綻者?」

「破綻者って…あ・の・な、ちょっとやんちゃしてたくらいで性格破綻者とかやめろ」

「でも人格者ってのは間違いでしょ」

「‥言うねぇ」


桐生のその言葉に私は自分の口元を両手で隠した。

…言い過ぎた?


「俺にそんなふうにもの言う女、神崎くらいだ」

「そうなの?‥聖もけっこうズバズバ言ってたような気がするけど」


テストの結果が貼りだされた時とかに会ったら、大勢の前だっていうのに宣戦布告とか普通にしてるし。

あれには私も感服したよ。


「聖?」

「えーっと綿貫さん」

「綿貫‥綿貫…ああ、万年2位」

「それ聖に言ったら怒るよ」

「でも事実だろ。確かにそうだな。あそこまで敵対心むき出しでこられるといっそ清々しいよね」


…清々しい、かぁ?

敵対心むき出しにするのが清々しいってなんだ。


「でもしばらくは俺に勝てそうにないんじゃない?入学当初から俺との点数の差って変わってないし」

「運よく風邪でも引かないかって言ってたよ」

「ハハ、そんなふうに言われると、意地でもテスト受けたくなるよね」


………聖、ごめん。

高校卒業するまで旭と付き合えないかもしれない。

もう1回言っとく。



ごめんね、聖。









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