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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
102/145

101:

「噂になってるな」


桐生が新聞部に乗り込んだ次の日。

朝のHRが始まるであろう5分前にやってきた私を目敏くも見つけたかっちは、楽しそうな顔をして言った。

かっちの言葉に「なにが」と聞く気にもなれず、冷ややかな目でかっちを見る。

かっちはそれを知ってか知らずか、自分の席まで行く私の後ろを追いかけてきた。


「で?あの記事の真相は?」

「…あんたも桐生の逆鱗に触れたいわけ?」


とんだ物好きもいたものだ、と、かっちを見ながら言うと、かっちは笑いながら「まさか」と言った。


「ただの興味本位だよ」

「なら首を突っ込まないのがベターだよ」

「へー?それってなんで?」

「桐生が怒ってるから」


昨日の絶対零度はすごかった。

私に浴びせられてるわけじゃないのに、なんかすっごく居た堪れなかった。

あれを目の前から向けれていたんだから、あの2人にはかなり堪えただろう。


「俺桐生が怒ってる理由が今一つわかんないんだよね」

「は?」

「だってさ、お前らもともと付き合ってたわけじゃん。一緒に登校なんかしたら周りが何て言いだすかわかりきってるじゃん」


かっちはそうだろ?と確認するように言うから思わずうなずいてしまった。


「そりゃあまぁ家から一緒に来た云々は知らないけどさ。何にそんなに怒ってんの?根も葉もない話ってわけじゃないだろ?」


そうなんです。

根も葉もない話ならよかったんですけど、事実桐生の家に不本意ながらも泊まって学校に来たから問題なんです。

この事実をどうにかして消し去りたいんです。

それに必死なんですよ。


「どこまでが本当かわかんねぇし?あの写真見る限りじゃ、お前ら駅から一緒だったんだろ?」

「さぁ。私あの記事の内容しっかりと読んだわけじゃないから」


詳しい内容は知らないのだ。

いろんな人から聞いたのを要約しただけだ。


「神崎って電車通学じゃないだろ」

「なんでそう思うのよ」

「いつも見ないし。ていうか、いつも電車通学のやつらと時間被らないように来てんじゃん」


ああ、いつもの行動がここまで裏目に出るとは。

電車通学のピークを避けるために、8時より先かだいぶ後かに登校してた自分が恨めしい。


「で、そんなお前が電車に乗ってきたと。それもかの有名な王子様と」

「…何が言いたいのよ」

「こりゃあなにかないわけないよな」


かっちは鼻をひくひくとさせて私を見る。

もうすぐチャイムが鳴るけれど、トイレに逃げ込もうかと考えていたら、かっちに腕を掴まれた。

どうやら思考はバレバレらしい。

なんだか舌打ちをつきたくなった。


「おまけに、聞いた話じゃ、お前一緒に登校した日の前の日、桐生の家にお見舞いに行かされたそうじゃん」

「…あんたの情報網なんなの」


なんでそんなことまで知ってるの。


「この前6組の奴が嬉々として教えてくれた」

「なんなのよ、」

「やっぱ行ったんだ?」

「…そりゃあ進路希望の紙まで持たされたら行かざる得ないでしょ」


と、言って、そういえば私進路希望の紙どうしたっけなと考える。

ファイルに挟んで、もしかしてそのままなんじゃないか。

提出期限、いつだっただろう。


「で、そのまま…」

「なわけあるか」


いや、まさにその通りなんだけど。

その通りすぎて、肯定しちゃいそうになるよ。


「だって桐生と一緒に来たってことは、そういうことだろ?」

「どういうことだよ」

「え、神崎、それ言わせちゃうの?」

「あーうん、聞いた私がバカだったね。これだから男子高生は」

「おいおいおい、世の中の男子高校生がみんな同じ思考だと思うな」

「そうだね、世の中の男子高校生に失礼だよね」


あんたと同じ思考回路持ち合わせてるとか。


「でも今この学校のやつ、たいていそう思ってるよ」

「みんな暇なんだね」

「で?事実はどうなの?」


それを聞いてきたかっちの顔はわくわくとしていて、なんだかイキイキしていた。

いるよね、たまにこういうやつ。

人の噂とかすっごい聞きたがるやつ。

別にほかに洩らすとかはしないけど、けっこう鬱陶しいタイプ。

いや、何事にも好奇心旺盛なのはいいんだけどね。

探究心があって…ね。


「俺的には、噂通りであってほしいんだけど?」

「その心は?」

「そっちの方がこの先楽しそうじゃん」

「あんたの娯楽のためか」

「だって最近何もないじゃん。楽しくない」

「最近って…3学期始まったばっかなんですけど」


そう頻繁にいろんなこと起こってたら、学校側としてはたまったもんじゃないでしょうに。

ただでももうすぐ乙女の聖戦という名のバレンタインがやってくるっていうのに。


「噂はあくまで噂ってことじゃないの」

「ほうほう。その心は?」

「‥真似すんな」

「いいじゃん、減るもんじゃないし。でもさ、あの記事の通りじゃなかったら、なんで神崎一緒に来たのってなるよ」


お前、駅と逆でしょ、と、なんでそんなこと知ってるんだということを言ってのけたかっちは、私の次の言葉を待った。

桐生なら、どんな言い訳を思いつくだろうか。

そんなことを考えて、考えて、でまかせもいいとこの言い訳を思いつく。


「‥様子見て帰って、次の日の朝に桐生を見に行って一緒に学校行っただけだよ」


まるでそれが本当のように。

だけどその内容は少し嘘っぽさを孕んでて。


…桐生なら、もっとこましな嘘をついたんだろうかと、チャイムが鳴り響く中で考えてしまった。





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