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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
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99:

号外の流れた日の昼休み。

なぜだかわからないけれど、学校中がそわそわとして落ち着きがなかった。

その理由は主に2つだと、かっちが教えてくれた。


まず1つ目。

これは言わずもがな、号外の内容だ。

私と桐生がよりを戻したことと、家から一緒に登校したことが背ひれ尾ひれがついて噂になっている。


で、2つ目。

この号外の記事により、難攻不落の王子様の逆鱗に触れたことだ。

今6組の雰囲気は最悪と言っていいらしい。

普段、温和で誰にでも優しい風を装っている王子様から常に黒いものがだだ漏れてるんだとか。


とくに2つ目の理由はすごーく影響があるみたいで、さっきから先生たちも気が気じゃないらしい。

聞いた話じゃ泣いて逃げる先生もいたとか。


「ということなんで何とかしてください」


6組の悲惨的状況を説明した瑛太は、びしっと6組の教室の方を指さして言った。


「どういうわけかもわかんないし、何で私が何とかしなきゃなんないの?」


だいたい、元はといえば、自分たちが私を桐生の家に行かせたのが悪いんじゃないか。

そういう意味を込めて、6組から逃れて私たちのクラスで昼ご飯を食べている瑛太を見る。

瑛太は卵焼きに箸をさして、いやいやと首を横に振った。


「陽向さんが行かないで誰が行くんですか」

「新聞部」

「それはごもっともですけど、」

「新聞部は桐生に頭こすりつけるくらいに土下座でもしたら許すんじゃないの?」


まぁ許すかはわかんないけど。

今朝の伊織君の言葉だけを鵜呑みにすると、新聞部潰しそうな勢いだったし。

…さすがに王子様でもそんな権限ない、よね?


「だいたい桐生を敵に回したらどうなるか、2年と3年は知ってたでしょ」

「‥このゴシップを記事にしたのは1年生みたいですよ」

「はー‥新聞部は教育がいきわたってないね」

「そういう問題じゃない気がするんですけどね」


そう言った瑛太はため息をついて、ソーセージをぱくりと口に運んだ。


「じゃああれって勝手に貼り付けた感じ?」

「部長の話じゃそうみたいですよ。彼も参ってましたから」

「‥新聞部の部長って6組の子?」

「いえ、5組の子ですよ。どうしたらいいって泣きつかれましたよ」

「…自分たちで蒔いた種でしょ」

「でも彼が蒔いたわけじゃないですからね」

「後輩の尻拭いをするのも先輩の仕事でしょ」


その部長さんには悪いけど、桐生の逆鱗をしっかり受け止めてもらわないと。


「で、あんたが私に6組に行けっていうことは、そのゴシップ記事を書いた無知な後輩君は未だに謝りに来てないわけね?」

「部長がいろいろ言ってるみたいですけど」

「まぁそりゃあ怒られるのわかってて行くようなバカはいないよね」


私だって行かないし、雲隠れしたくなる。

休み時間のたびにトイレに逃げ込むくらいはするんじゃない。


「でもまぁそれが桐生の機嫌を余計に損ねてるわけだ」

「まぁ‥そういうことになりますね」

「なら尚更行きたくないね」


なんで機嫌の悪い桐生に声をかけに行かなきゃならないんだ。

だいたい今行けば余計に噂に背ひれ尾ひれつけちゃうじゃないか。


「6限目が終わるまでに後輩君が謝りにでもいかないと、部室に乱入しちゃうんじゃない?」


笑いながら言うと、瑛太はそれも考えていたのか、深いため息をついた。

その顔には笑い事じゃないと書かれていた。

どうやら、午前中で6組で授業を受けるのが限界になったみたいだ。


「伊織君に宥めてもらえば?」

「百目鬼君は2限目が終わって教室に来ましたけど、桐生君を見ただけで目そらしましたよ」


瑛太は思い出したのか、綺麗な顔の眉間にしわをよせた。


「はっはー、伊織君らしい」

「らしいじゃないですよ。これじゃあ授業になりませんよ」

「そんなこと言われても、ねぇ?私も被害者なわけで」


私はどちらかというと、桐生サイドだから、桐生を落ち着かせるなんておかしな話だ。

私も怒っていい立場にいるわけだし。


「私もどういう気持ちでああいうネタを書いたのか、ぜひ聞いてみたいし?」


私この記事のせいで生徒指導室に呼び出されて、こってり絞られたんだから。

高校生がゴシップ記事とはどういうことだ!?って。

私も私で、けっこう怒ってたりするんだよね。


「陽向さん、もしかしなくてもけっこう怒ってます?」

「うーん、腹に据えかねてはいるかなぁ」


少しだけ猫なで声で言えば、瑛太は顔を顰めてしまった。


「え、ひどい。そんな顔しないでよ」


けっこうマジで傷付くんだけど。


「気持ち悪いです」

「敬語で言われると余計傷付くんですけど」

「だから言ってるんです」

「いやいやいや、傷付ける気満々で言うのやめてもらえません?」


そういう私の意見も無視して、瑛太は食べ終えたお弁当を片付けて手をあわせた。


「どうしたものですかね」

「どうにもなんないんじゃない?悪いけど、私は今回は桐生の肩を持つよ」

「別に新聞部の味方をするわけじゃないですよ」


むぅっと顔を膨らますようにして言った瑛太は、少しだけ可愛らしく見えた。


「まぁ放っとけばいいんじゃない?障らぬ神にって言うじゃない」


ね?と笑いかければ、瑛太は不満ながらも渋々頷くと、お弁当箱を持って教室から出ていった。









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