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王子様のからくり  作者: ゆきうさぎ
<第1部>
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00:

どうも、ゆきうさぎです(^^)

同い年の恋愛ものって、これでいくつめかなー‥

作者、就活生のためかなり亀更新になると思いますが

読んでいただけると嬉しいです(*^_^*)

感想等々、なんでもいただけるとありがたいです(^^♪




何の変哲もない学校の帰りだった。

部活の仲間と他愛無い会話をしながら帰って、一人になったら耳にイヤホンをさして、通いなれた道を歩いていた。

本当に、何も変わらなかった。


そう、今日、この日、この瞬間まで。


なにがどう狂ったのか、と問われれば、困る。

いつもと違うものが、私の目に入っただけだなのだから。

だけどその違うものは、いつもこの道を歩いている私からしたら、かなりの異なるもので。


見なきゃよかったとか、この道を通らなければよかったとか。

思うことは多々ある。


…いやしかし、だ。


「‥なんでこのタイミングなのよ」


そうだ。

すべてにおいてタイミングが悪い。

というか悪すぎる。

どうしてこの場所でなければならない。

もっとこう…人気のない廃屋だとか廃ビルだとか、暗い路地だとか、いくらでも場所はあったでしょう。


そして、どうして、まだ人が通るかもしれない時間帯なんだ。

もっとこう…人が通りそうにない時間帯ってあったじゃないか。

深夜とか深夜とか深夜とか…。


と・に・か・く・だ。

どうしてこの時間、この場所で、こんな光景がひろげられているんだ。


「どうすんのよ、」


独り言をぽつりとこぼした私こと神崎陽向(かんざきひなた)は、目の前の空き地の光景を呆然と見つめた。

ただの、住宅に埋もれた空き地。

野放しにされて誰も手入れしていなかったせいで、草は恐ろしいほどに生長している。

ここに土管でも置いてドラえもん的要素があれば、子供たちが遊ぶのかもしれないが、あいにくそんな代物は私が子供の時からない。

そんな、人が寄り付きそうにない、空き地。

そんな空き地には、今、少なくとも5人の人がいる。

もちろん、私を含めずに、だ。


それが慈善事業の一環で草刈ってるんですとかならまだしも、空き地にいる彼らは地面に汚れも厭わずに伏せていた。

10人が見たら、10人中10人は彼らがけんかをしていたと想像するだろう。

いや中には1人くらい、地面に落ちたコンタクトを探しているんじゃないか、とか思うかもしれないけど。

そんな人は、まぁ‥まれだ。


そんな一目瞭然の場面に出くわしてしまった私。

なんつー運の悪い。

運の悪いついでに言うと、今日の私はどうやら相当ツイてないらしい。


空き地で唯一立っている、おそらくこのけんかの勝者である彼を―――――知っている。


いや、これで彼がたまたま駅で見かける他校のお兄さんだとか、駅で見る不良集団の誰かとかだったら、それはそれでよかったんだ。

私、面識ないし。

素知らぬふりをしてれば過ぎることだし。

だが、今日の私はとことんツイてない。

彼は、私と同じ学校指定のネクタイをつけていた。

今私がつけている黒とエメラルドグリーンのストライプのネクタイと全く同じネクタイ。


余談だけど、私の学校はネクタイも上履きも、すべて学年カラーになっている。


つまり、彼は私と同じ学年、という結論になる。


これで彼が地味男君なら、私もあんな人いたっけ?くらいの反応で済んだのに。

神様はどこまでも私に優しくも甘くもないらしい。


面識は全くないと言っていいが、私の願いもむなしく、彼は学校1と言っていいほどの有名人だ。

大事なことだからもう1度言おう。

彼は学校1の有名人だ。

学年1ではない。

学校1、有名なのだ。

今、空き地で立っている彼は。


成績優秀で品行方正、イケメンという分類に入る顔立ちで運動もできて人格者。

先生からの信頼も厚く、彼を慕う生徒も少なくない。

彼の信者である友は依然彼のことをこう言っていた。


『誰にでも優しくて、物腰は柔らか。いつも温厚で紳士的。笑顔は可憐な花が綻んだように綺麗で見るものを魅了する。まさに絵に描いたような王子様』


ちなみに今私が彼を見る限りでは、彼女が言っていた言葉は何一つ当てはまらない。

いや、まぁ顔は一緒だから絵に描いたような王子様っていう容姿は当てはまるけど。

それだけだ。

もういっそ、双子の兄です、とか夢落ちとか、そういう展開を期待する。

ていうかそうであれ。

でなきゃ私が不憫すぎるだろうが。


「ふっざけんな、」


呆然としている私の耳にも聞こえてきた声に、思考を奪われる。

どうやら、倒れていたうちのひとりが意識を取り戻したらしく、ふらふらと立ち上がった。

いや、意識をなくしていたのかすら知らないけど。


「あ?」


ゾクリとした。

地を這うような心地悪いとすら感じる、低い低い声。

それとともに向けられる、おぞましいまでの狂気を帯びた眼光。

体が委縮するのがわかった。

そして直感で感じた、ここにいてはいけない、見てはいけないという危険信号。

私はもつれそうになる足を動かして、空き地から離れた。


まさか彼が、そんな私を見ているとは全く知らずに。


そして、この時に知らずに起こしていた失態が、私のこれからを変えるとは知らずに。










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