木の芽どきな午後
春っぽいお話に挑戦してみました。よろしければ読んでいってください。
これは木の芽どきなある午後のお話。
「くしゅん……風邪かなぁ?」
突然のくしゃみで跳ね起きた吹野季玖はだるそうに呟く。季玖が体温計を探しに部屋を出ると、既に弟の薊が食卓に着いていた。
「姉ちゃん、もう十二時だよ。お昼ご飯だからね」
「うん。ありがとう薊。その前に体温計知らない? ちょっとだるいんだ」
「大丈夫? えーっと、あった。はい」
「……ありがと」
ピピピ。三十六・七度。どうやら風邪というわけではないようだ。
「くしゅん……なんだろうね、このくしゃみ」
「そういえば昨日の夜もくしゃみしてたよね。花粉症じゃないの?」
「えーヤダぁ。花粉症なんてかっちょわるいじゃないの」
ヤダと言われても困る薊。体温が平熱な以上、季節的に花粉症だろうと推測しただけだ。
「まあ、ご飯食べて病院でも行ってくれば?」
「……分かった。薊が車で送ってくれるなら病院いく」
病院の帰り……とはいっても、今日は午後は休診だったようで、診察なんてしてもらっていないのだが、帰り道であることには変わりない。
「姉ちゃん。なんか元気になってない?」
「くしゅん……久しぶりにどっか遊びに行こうよ」
「はいはい。その前にマスクね」
風邪引いてるみたいで嫌だと喚く季玖を車に残し、ドラッグストアにマスクを買いに行く薊。ついでに鼻炎薬を買って車に戻ってきた。
「遅いよ薊。くしゅん……なに、薬?」
「一応鼻炎薬。飲んだら眠くなるかもだけど」
素直にマスクをつけつつ、季玖はパッケージの裏面を見ていく。商品名、成分、用法、用量、エトセトラ。一通り読み上げて満足したのか、箱を放り出すと眠ってしまうのだった。
「ほら姉ちゃん。帰ってきたよ」
「……遊びに行くって言ったじゃん」
「だって、寝ちゃったじゃん」
「それは……くしゅん。まあいいや」
そんな木の芽どきなある午後のお話。
ちゃんと春っぽいでしょうか? お読みいただきありがとうございます。




