光と影②
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夜刀と守りの者のお陰で、大晦日も年明けも何事も無く私も家族も過ごしていた。
守りの者の名前を聞いたけど…真澄さん以外には、教えないと言われてしまったので(ナナシ)と私は勝手に呼んでいる。
ナナシは、もともと修行僧だと夜刀が教えてくれたけど、どうして真澄さんに使えているのかは教えてくれなかった。
年が明けて……4日目になって、またあの声が近くで聞こえるようになった。
声は、日に日にどんどん近づいて来るような気がしていた。
「光様。貴方の身に危険が迫っているようです。私だけでは、お守り出来るか心配なので念の為に龍安さまの所へすぐに参りましょう」
ナナシが危険を察して、私はすぐに師匠に連絡をして迎えに来てもらった。
「凄く強い力を感じますね…これは急がないと行けませんね」
異常な事態に気付いた師匠は、車の中で織衣さんにすぐに連絡していた。
屋敷に着くと…すぐに織衣さんが清めの塩を持って待っていた。
「光ちゃん。とにかく身を清めとこ!」
手を引かれて、浴場へ連れて行かれ…私はされるがまま言われるがままに身を清めて屋敷の奥へ連れて行かれた。
「凄い結界を張ってあるんですね」
「これはきっと、影の力を持つ者が光さんの存在に気付いたんです。影の力は光の力を嫌うので、光さんを幽閉するか抹殺するかどちらかだと思います」
師匠は険しい顔付きで、私の知らない影の力のことを話し始めた。
「影の力を持つ者は、その力を悪用してこの世を影で動かしている……生きている人間のことなんです。その邪悪な力で、人を呪って排除して…世の中を自分たちの良いように動かそうとする政治家や権力者の背面下で動いてる輩で……その者にとって光の力を持つ光さんは、邪魔なんです」
不安が私の顔に現れていたんだろうか? 師匠は、私の肩をギュッと抱きしめてくれていた。
「光の力は、影の力を無効化させる唯一の力ですからね」
……黒い影の力という物があって、その力を持った人間がいてしかもその力を私利私欲に使ってる人たちが別にいるなんて……考えたこともなかったので私は、正直不安だった。
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でも、強い結界の中にいて…しかも、夜刀もナナシも姿を現してずっと側にいてくれているから……私は、全然怖くなんて無かった。
「その影の力を持った人が、近づいて来てるってことなんですよね?」
「母が放った使者からの報告では、明日にはここへ来るであろうと言われています。だから、真澄にもこちらへ戻って来るように連絡をしているのですが……明日戻れるかどうかわからないそうなんですよ」
師匠が、織衣さんを見て頷くと……今度は織衣さんが、話を続けた。
「最悪の場合は、光ちゃんの力を解放するしか無いわ…影の力は、光の力で抑え込むしか方法が無いからね。前に教えたやろ? 躊躇せずにやるんやで! 後のことは、私と龍安とでなんとかするから!」
そう言って織衣さんは、笑いながら私の背中を叩いた。
私のこの力を解放したら……影の力は押さえ込めても、この世にいる無数の浮遊霊や地縛霊が一気に集まって来るはずだ。
だから、それも大変なことでこのままどうなるのかは、私にも想像が出来ないけど……今は、師匠や織衣さんのことを信じるしかなかった。
「僕も全力で光を守るからね」
夜刀が、尻尾をクルンと私の右腕に絡ませて言った。ナナシも、私のすぐ側で姿を現して待機していた。
そして、影の力を持つ者は…すぐ側まで近づいて来ていた。
「光…やっと……見つけた」