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婚約宣言②

*****


 食事の後……織衣さんと話し込んでいたら、夜の10時を過ぎてしまっていた。


 明日も仕事だったので……帰る支度をしていると、織衣さんが私に可愛くラッピングされた小さな箱を手渡した。


「最近……光ちゃんが、また…地縛霊に関わることが多くなってるって龍安から聞いてたから、これを持っておいて欲しいねん」


 箱を開けてみると…中には、新しい数珠が入っていた。凄く綺麗な水晶と翡翠の数珠だった。私は、織衣さんにお礼を言ってから、織衣さんに用意していたプレゼントの包みを手渡した。


 包みを開けて、出てきたカシミヤの薄紫色のストールを羽織って織衣さんは、凄く喜んでくれていた。


「ありがとう~嬉しいわ~♪」


そして、嬉しそうに笑って…後ろから抱きついてハグして来た。


「凄く良くお似合いですね。母上様♪」


 私のすぐ横で……聞き覚えのある声がしたので、声の方へ振り返ると…両手を広げて真澄さんが立っていて、後ろから織衣さんが私の背中を押したので……私は、真澄さんにしっかり抱きしめられてしまった。


久しぶりだったせいか…真澄さんは、私を抱きしめたままなかなか離してくれなかった。


「そろそろ離してあげてもらえる? 光ちゃんに嫌われてしまうと困るでしょ?」

「そうですね~嫌われるのは嫌なので……名残惜しいですけど」


真澄さんは、クスクスと笑ってやっと開放してくれた。


「私は別に部屋を取ってあるから、ここでゆっくり二人で過ごして頂戴ね。邪魔者は退散するわ~(笑)」


織衣さんは、楽しそうに笑いながら…自分の部屋へ帰ってしまった。


「うちの母は、早く私たちの赤ん坊の顔が見たいようですね」


真澄さんは、意地の悪い顔をして私に言った。


こんな日に…こんな場所で、男と女が二人っきりですることは、一つしか無いでしょ…織衣さんも無茶なことをしてくれる。


この間のことで、鈍くなってしまったのだろうか? 真澄さんを目の前にして、私は逃げ出そうとは考えていなかった。


いっそこのままなるようになってしまった方が、気持ちの整理もつくのかもしれないなんて覚悟を決めていると真澄さんが意外にも紳士的な行動に出た。


*****


 真澄さんは、私の前に跪いて私の手を握っていた。


「こういうことは……やはり順序を守らなくては、紳士ではありませんからね。まずは光さんの気持ちを確認しておかないと…」

「……私の気持ち?」


 真澄さんの問いに…私が、戸惑っていると…真澄さんは、私に顔を近付けて私の気持ちを確かめていた。


「私と婚約して頂けますか? 本当は、すぐにでも結婚したい所なんですが…」


本当に…真面目な顔をして真剣に聞いている。


「……私なんかで本当に良いんでしょうか? 真澄さんは、本当に私と結婚したいんですか? 本当に?」

「勿論です。本当に結婚したいと思っています。私は、初めて光さんに会ったあの日から…私の相手は光さんしかいないと思っていました。光さんも私と同じ気持ちでいてくれていると……確信していましたしね」


 やっぱり、真澄さんは私の気持ちをずっと前から知っていたんだ。


私と真澄さんが、初めて出会ったのは…私が14歳で真澄さんは20歳だった。


あの日……私は、真澄さんに一目惚れしてしまったんだ。


でも、歳の差もあるし…叶うはずのない恋だと諦めてその気持ちは心の奥に仕舞ってしまった。


「あの時……私も光さんに一目惚れしていたんです」


真澄さんは嬉しそうに言った。


「もう……良いですよね。私は十分待ったと思うんですよ」


真澄さんは、そう言って私を抱き寄せていた。抱き締められた私は、嬉しくて涙が止まらなくなっていた。


「参りました。そうです……出会った日から、真澄さんをずっと好きでした」


私は、真澄さんの背中をギュッと抱きしめ返して自分の思いを告げていた。


「やっと…光さんを捕まえました。……それでは、最後の仕上げに行かなくては」


私は、そのまま真澄さんに連れられて車に乗ってホテルを後にした。


 自宅まで、送ってくれているのかと思っていたら…そのままマンションを通りすぎて私の実家の前で車を止めた。


「ご両親には、先に私から連絡しているので行きましょう」


真澄さんは、私を連れて車を降りて玄関のインターホンを押していた。


*****


 家の中から、すぐに美郷ちゃんとお母さんが青い顔をして出て来て…小声で訴えて来た。


「どうしても…我慢しきれんようになったみたいで……徹哉が、帰って来てしまってん。ごめんね光ちゃん!」


「真澄~~!! 貴様~~~!!」


徹兄をどう対処するかを考えている暇などなく……勢い良く叫びながら徹兄が家の中から、飛び出してきて…真澄さんに殴り掛かって来た。


その瞬間、後から追いかけて来たお父さんが、徹兄をしっかりと羽交い締めにしていた。


「こんな遅くに玄関先で大声を出すな! お前は中に入れ!」


お父さんは、徹兄をそのままずるずると引きずって家の中に入った。


「夜分遅くに申し訳ありませんでした。少しでも早く…ご両親にご報告をしたいと思ったので、無理を言ってしまいました。今日…やっと光さんの同意が得られて改めて婚約させて頂きました」


 真澄さんは、両親に深く頭を下げて挨拶をしていた。お母さんもお父さんも微笑んで祝福してくれていた。


「わかっています。私たちも…どれだけこの日を待っていたか……」


お母さんは、瞳に少し涙を浮かべて喜んでくれていた。


しかし…徹兄は…諦めきれずにまだ暴れている。


「俺がそんなこと許さん! お前なんかに光はやらん! 絶対やらん!」


お父さんに羽交い締めにされたまま…徹兄は頑張って抵抗していた。


「離せ! この! クソオヤジ!!」


お父さんに向かって徹兄が叫んだのと同時に…美郷ちゃんが、徹兄の右頬を思いきり張り倒していた。


「もういい加減目を覚まし! みっともないで徹哉!」


さすが……元ヤンなだけに怒ったら怖い…


「私のことを大切に思ってくれてるんやったら、徹兄も許して欲しい」


 私が徹兄の手を取って説得していると…真澄さんが、徹兄の前に立って顔を突き出して言った。


「そうですね…一発くらいは殴らせてあげても良いですよ…あなたの大事な姫君を頂くのですからね」


ククククッと笑うと…真澄さんはゆっくりと目を閉じていた。


徹兄は真澄さんを前にして、凄く悔しそうに握りしめた拳を震わせていた。


「絶対……絶対に幸せにするって約束出来るんやな! 光を不幸にしたり泣かせたら俺は絶対許さへんからな!」


徹兄はそう叫ぶと…真澄さんの胸ぐらを掴んだまま泣き崩れてしまった。


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