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プロローグ

****


 何時もより…早い時間に帰宅して、寝床についたはずなのに…何故か眠りが浅くて目が覚めてしまった。


私は、仕方なく起き上がって時計を見た。


嫌な時間。……午前二時を少し過ぎたところだった。


 喉が渇いていたので、台所でコップに水を汲んで飲み干し部屋へ戻ろうとした時……。


【カタカタカタカタ】

【カタカタカタカタカタカタ】



背後にある…食器棚の中の茶椀やお皿が音を立てている。


地震だろうか?……いや、違う。揺れは感じない。


背筋に悪寒が走る……。


私はいけないと思いつつも後ろを振り返った。


「うわっ!」



思わず声が出た。


そこにはぼんやり黒い影が人の形をして見えたからだ。



「また…やってしまったのかな?」


これも声に出して自分に問いかけていた。


あれだな……昨日の帰りあれを持っていなかったのにあの公園を通ってしまったからか?


しかしハッキリ人の姿で無いということはかなり長く人では無いお方のようで話が通じればいいのだけれど……。



【パキーーン!カタカタカタカタ】



さらにラップ音が酷く鳴りだした。


多分私の心の声が聞こえたんだろう……。


いつもの如く自分の部屋へ行きカバンの中から、数珠を取り出し手を合わせて黒い影に語りかけてみた。



「あなたはどうしたいんですか?」


しかし返事は無い。


やはりかなり面倒なお方のようだ…


 ため息をつきつつ仕方なくカバンの中から、あの人からもらった清めの塩を取り出して黒い影の周りを囲むようにして撒いてからもう一度語りかけた。


「聞こえますか?」

「…………」

「あなたはどうして私に付いて来たんですか?」


黒い影は少し人の姿に戻り男の姿をして現れた。


「助けてくれ……苦しい……熱い」


やっぱりな……。


あの噂は本当だったのだと私は確信していた。


この黒い影は十数年前にあの公園で焼身自殺をした男だと……。



「あなたは生きてる時に何かどうしようもないことがあってあの公園で焼身自殺をしたようですね」


(多分もう憶えてないでしょうけどね)


男は更に姿がハッキリして記憶を取り戻したようで目を大きく見開き答えた。


「同仕様もなかった……騙されて借金まみれになって同仕様もなかったんだ!」


そんな悲惨な話を聞いても私は同情なんてしなかった。


****

 

 私は少し冷たい口調で男に言った。



「自殺は駄目ですよ!自殺は一番長く苦しい状態が現世に魂が留められて続くんですから」


私の話を聞いて男は少し涙声で訴えて来た。


「死んだら楽になれると思っていたんだ……でも、違ったずっと苦しいままだった……熱くて苦しくてあの場所から離れられなくて」


十数年も苦しむなんて考えるだけでゾッとする話だ。


出来る事なら今から自殺をしようとしてる人に生の声を聞かせてやりたい。


「突然、白い光が見えたんだ。そうしたら動けるようになって、あの場所から離れる事が出来て白い光に付いて来たらここにいたんだ」


やっぱりか……。


 何故か動けないはずの地縛霊が、白い光が見えたら動けるようになってその光に付いて来たら私の家にいる。



「あなたは、自分で死んでしまったことを悔いてますか?」


私は男に問いかける。


「もちろんです。悔いてます、すごく悔いてます!」


男は悲壮感を漂わせながら私の問いに素直に答えた。


そして私は紙と筆を取り出して男に差し出した。


「私に憑依してこの経文を悔いる思いを込めて書き写して下さい。…そうしたら、私がある御方にお願いしてお焚き上げをして頂きます。それが済んだらあなたは向こう側へ渡れます。但し、思いが中途半端だと渡れません。良いですか?書きますか?どうしますか?」


もちろん男は私の目の前でお願いしますと土下座していた。


****


 私は神宮光じんぐうひかり24歳。普段は普通のOLなんだけど、物心ついた頃から生きてる人では無い物が付いて来て私に助けを求める。


子供の頃はどうする事も出来ず死にかけた事もある。


困り果てた両親がある日偶然出会った龍安りょうあんという霊能者とその母の織衣さんのお陰で生き延びる事が出来た。


そして今も私を助けてくれている。


清めの塩をくれたり、お焚き上げをしてくれるのがこの龍安師匠だ。最近では「自分の身は自分で守れるように」という事で色々やらされている。


しかし、いつも無防備でいたら何体もこんな物が付いて来て普通の生活が出来なくなるので師匠に頂いた『お守り』を身につけて出来るだけ関わらないようにしている。


しかし、昨日は新しいカバンを持って出たので『お守り』を家に忘れてこうなったという訳なのでした。

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